平成仮面ライダーアギトから、響鬼をのぞいて、ジオウまでなんと18作品ものスーツアクターを務めた、高岩成二さんの著書
こちらを読了したので、感想とこれを知っていると今後の特撮が楽しめるよというポイントをまとめました。
本書は200ページ未満のないようで電子書籍でも1700円台とそれなりの価格はするのですが、フルカラーで、高岩さんが過去に勤めたスーパー戦隊と仮面ライダーのポージングが見れるのが、感動です。
本書の内容は、高岩さんが物心ついた時から、等身大のヒーローにあこがれ、学生時代にJAC(現JAE)の役者にあこがれ、高校生で門を叩き、多くの困難を乗り越えながらスーツアクターとしての道を切り開いていく内容です。(本人はスーツアクターっていわれても本質は俳優で、中の人のほうがしっくりくるそうです)
もちろん、仮面ライダーや戦隊が好きな人が
「スーツアクターってこんな苦労があるんだ」
という発見につながる内容でもあるんですが、一歩進んでこれからスーツアクターにあこがれて、スタントマンや役者の門を叩こうとする若手に対してのメッセージが多めになっています。
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令和の時代からスーツアクターになるということ
高岩さんは自身の例を用いながら、JAEなどの養成所で基礎体力や能力を身に着け、下積みを経て、ようやくショッカーや怪人役が与えられるといいます。
現実として、スーツアクターで食べていくためには、1号~3号ライダーようにメインとして1年間決まっていないと難しいです。
これは、声優やミュージシャンのような特殊な仕事ならではの難しさです。
スーツアクターとして最も重要なことは2点
- コミュニケーション能力
- 演技力
基礎体力が高くて、養成所を卒業して現場に入ったとしても、最初は雑用から始まり、どのように現場の先輩や監督などに認められていくかというコミュニケーション能力が試されます。
高岩さんがスーツアクターとして働かれた時代は80年代後半から90年代で、わからないことを丁寧に教えてもらえるわけではなく、見て学べ
名前も読んでもらえず、かなり罵声をあびせられることも多かったようです。
現在はコンプライアンス問題などがあるため、逆に上司の方が教え方を注意されるようですが、そのため若手はどのように上司や先輩から仕事について聞き出すかが重要のようです。
次に演技力です。高岩さんは幼いころから身体能力が高く、剣道の心得もあったようですが、スーツアクターとして長く起用されるには、この俳優としての演技力が最も重要であると、何回も記載されていました。
高岩さんの出世作は、電王であり複数のキャラクターをコミカルに長時間演じ続けた技術の高さは、当時テレビでも取り上げられていましたね。
動く演技のみならず、平成ライダーはドラマ性が高まったため、全く動かない演技などもかなり工夫されたそうです。
また若手の登竜門といわれている仮面ライダーでは、役者と密に演技について話し合いをすることを意識されたとのことです。
本文でも佐藤健、竹内涼真といった仮面ライダーをきっかけにブレイクした役者とのエピソードがいくつかあって、非常に読み応えのある内容になっています。
現在は、スーツアクターだった奥様と、ご子息もスーツアクターとしての活動を動画配信されているということで、世間にスーツアクターの面白さやどのように撮られているかというワークショップ活動を中心に、後輩を育てている活動もしつつ、役者としての活動もされているそうです。
気づきと実践 仕事を長く続けるための極意が詰まっている
本書を読んで、もう33歳でスーツアクターになりたいと思ったことがない私ですが、吸収できたことはいくつかあります。
高岩さんといえば、長期にわたってスーツアクターという危険が伴い、ずっと活動し続けることが困難な世界で、活躍され続けたという点が印象的です。
実は、龍騎の時点で膝を故障しており、激しく動かすことができなかったらしいですが、監督との交渉で極力足元を映さないにされ、さらに膝に負担をかけない動き方を習得されたようです。
龍騎といえば、平成ライダー3作目で、高岩さんは2作目です。なんと平成ライダーとしてはキャリアの序盤から大きな怪我をされて、しがみつかれていたんですね。
そして、演技に関してはスーパー戦隊のころから、大げさな動きについて疑問を持っていらっしゃいました。
ヒーローショーでは遠くから眺める子供たちがいるので、動きがオーバーな方がいいのですが、テレビサイズになると、そのオーバーな動きが不自然になってしまいます。
そこで、徐々に動きを減らしながら、監督に認めてもらうように実際の演技で変えていったらしいです。
どちらの例も、高岩さんがスーツアクターを続けるために、先輩や責任者に対して、しっかり交渉されてきて、自分が長く続けるための土台を築かれたことだと感じ、これは仕事を続けるうえで、誰しもが学べることではないでしょうか?
また、本書を読んで印象的だったのが、高岩さんは仕事でかかわった人たちの名前や関係性について、非常に細かく覚えていたということです。
これは、スーツアクターは動きの手順などを覚える瞬発的な記憶力も必要ですし、最初の雑用では、現場のスタッフの名前を台本などを渡されるわけではないので、自力でしっかりと記憶する必要があります。
この記憶力に関しては、技術もあるかもしれませんが、必死にスーツアクターの世界に食らいついたからこそ身に付いたものなんだなと感じました。
スーツアクターの未来と契約についての問題点
現在の特撮は等身大ヒーローも、CGが多用され、コロナをきっかけにCG背景のなかで動くというアクションも多くみられるようになりました。
最近は仮面ライダーギーツを見ているのですが、CGの進化はここ数年で劇的に進化しており、並みの日本映画とそん色ないレベルのCGが1週間に1回確実にみられるのは、すさまじいことです。
一方で、ギーツでもリアルな爆発などがかなり多くあり、CGの技術が上がったと同時に、テレビや撮影器具の解像度も飛躍的に上がったため、CGをすぐ見抜いていしまう視聴者も多いのです。
JAC創世期の千葉真一氏のころから、スタントマンやアクターの安全性については言及がされています。
一般人がその場から倒れる瞬間ですらも、スタントマンがしっかりと起用されているときいて驚きました。
視聴者は、倒れるときは臨場感のある倒れ方が見たいはずですが、倒れる1つとっても受け身を間違えると怪我につながってしまいます。
また契約に関しても、いまだに事務所と折半ですが、その割合というのが不透明とのことです。このあたりも改善の余地はあるでしょう。
近年の特撮、仮面ライダーでは電王のヒットやVシネ、WEB版などTVと異なり、多岐にわたって放送されています。それが俳優やスーツアクターのスケジュールの酷使につながっています。
また、撮影の回数が増えるということは、撮影の費用がかかってしまうので、お菓子や弁当などが減らされたりと予算的に厳しい面もあるみたいです。
特撮は日本の宝ですが、その特撮が継続的にみられるためには、スタッフの安全性などが第一に最優先されるべきですね。
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