青木雄二先生による、金融、借金を題材とした漫画の金字塔「ナニワ金融道」をamazonアンリミテッドで全話読んだので、後世に残したいナニワ金融道全エピソードのあらすじと解説を行いたいと思います。
すべてのエピソードをまとめると、1つの記事におさまらないので、分割してお伝えしています。気になるエピソードがありましたら、下のリンクから飛んでください。
※ナニワ金融道は90年代前半の社会情勢と法律をもとに製作されています。物語の中には、犯罪、違法行為が描かれております。このブログはあらすじとしてまとめているだけで、劇中の行為を推奨するものではありません。
4巻 左遷覚悟でツマム金!!
- 債務者 泥沼亀之助
- 借金額 150万円
- 返済額 18万の10回払い
あらすじ
ご祝儀詐欺を受けたことを借金して揉み消そうとする泥沼
先輩の結婚式の祝儀を管理していた泥沼は、手伝いを申し出た老人に騙されて、祝儀150万円を窃盗される。
保証人はいないが、借金歴がなく、クレジットカード3枚を担保にいれることで、借金する。
クレジットカードは本来担保にならない。本人が盗難、紛失届をだせば無価値になるからだ。
泥沼は労働組合から150万借りようとするが、勤続3年は50万しか借りることができず、計算が狂う。
知人に保証人のあてもなく、泥沼は、灰原に泣き寝入りする。
灰原は、借金額を減らすため、泥沼にクレジットで、特急回数券を買い、金券ショップで売って、返済にあてるように提案する。ショッピングの限度額の方が、キャッシングより多く、信用情報に傷もつきにくい方法として、泥沼は活用する。
電話会社に債権を依頼する妙案を思いつく灰原
一方で、泥沼は、灰原にQ2回線のことを教える。有料回線だが、かかった料金を半返しするサービスがあり、会社でQ2回線をかけて、自分の銀行口座に振りこむという横領をした事例があったという。
Q2回線を聴いた灰原は、社長に直談判し、500万の出資をしてもらう。
帝国金融の債務者で、休眠状態の薄利印刷をQ2回線の会社として仕立てる。飛んでしまった債務者の家の電話から、薄利印刷へのQ2電話をかけ続ける。発生した費用は、電話会社に回収してもらうというのが灰原の案だった。
泥沼は、ボーナスのあてもなくなり、クレジットを大量につくっては、回数券をかって売るという自転車操業で借金を返していた。1回でも支払いが遅れてしまえば、他のクレジット会社に情報がいきわたるので、この方法はたちまち、使えなくなる。
泥沼は、帝国金融への借金を48万までに減らすも、クレジットカードなどがかさみ、合計で200万超えている。
Q2回線作戦は、電話会社から仮払いの状態で「回収できない時は、滞納者の個人情報を教えるから自分たちで取り立ててくれ」という方針で、灰原の思惑は完全に外される。
灰原の事業失敗 クレジットカードで借金をためた泥沼は、取り込み詐欺に走る
一方、泥沼は、クレジットカードの特集記事からカードを映している人たちの情報を抜き取って、通信販売で買い物をするという、窃盗を行っていた。
Q2事業をたたむことになり、電話会社に詐欺がばれてしまえば、帝国金融も危うくなるため、薄利印刷の社長に金を掴ませ、夜逃げを依頼する。灰原は、自分の考えで迷惑をかけてしまったが、汗水流して働くことを捨て、安易な道に走ろうとした自分にも非があると、薄利印刷社長は、灰原をなぐさめる。
泥沼は、クレジットカード窃盗を本格的に開始。通販会社にクレジット番号を伝え、通販会社が折り返し連絡するのは、泥沼の電話番号ではなく、電話秘書センターという代行業。送り先も電話秘書センターになっている。個人情報がばれないようにする。泥沼は、取り込み詐欺にのめり込んでいくのだが・・・
解説
祝儀詐欺の被害者だった泥沼が、灰原の知恵によって、クレジットカードを結果的に換金化することで、名前の通り泥沼にはまって、借金を膨らまし、犯罪に手を染めるという物語になってます。
同時並行でQ2回線を悪用した債権回収をもくろむが、失敗する。灰原は迷惑をかけた薄利印刷に何度も謝るが、読み返してみると、泥沼にクレジットカードの危険性を刷り込んだのも灰原だったという物語。
泥沼はその後、改めてある形で、登場する・・・
彼が、祝儀詐欺を受けて、世間体を気にせずそのまま警察などに通報していれば、全く違った結末を迎えていたでしょう。
このように、ナニワ金融道では、些細なことで人生転落し、借金を膨らませ、犯罪行為に手を染めるという債務者が多く描かれています。
また、灰原が事業を立ち上げようとする、主人公らしい行動力を示すエピソードになっています。
時代といえば、それまでだがクレジットカード特集の雑誌に記者のクレジットカードが、修正もされずそのまま番号で表示されるのは、現代人からすると、かなりギャップを感じます。
ただ、クレジットカードを現金化したり、フリマアプリサイトに現金が売られていたり(現在は禁止されています)、とクレジットカードによる金利地獄、不幸は今もなお続いているといえます。とりあえずリボ払いには、気を付けましょう。
5巻 バブルな人がケツを拭く
- 債務者 肉欲棒太郎
- 借金額 2500万円
- 返済額 550万の手形5枚
あらすじ
バブルがはじけて、マンションがまったく売れなくなった時代
新入社員の吉村が加入する。
第1章 地上げ屋肉欲の土地買収計画と帝国金融のビル乗っ取り作戦
とある自社ビルの建設でいざこざがおこっていることを灰原は目にする。
自社ビル建設をもくろむのは、肉欲企画の肉欲。工事が遅れたことで5000万必要らしい
地上げ屋の肉欲は、周辺の土地を買収することで、超高層ビルを建てることを考えている。そうなれば、元の土地の何倍もの収益が見込める。
しかし、肉欲の地上げは、他の地主の抵抗にあい、ビルが歪が形になっているため、夜の店しか受け入れ先がなく、地元住民の猛反発にあっている。
肉欲の考えは夜の店をあけることで、反対する地主を困らせ、撤退させて残りの土地を自分のものにするという目的があった。
灰原は吉村との飲みの席で、夜の産業でビルの近くに病院(ベット一つでも入院できる施設があって、保健所に届ければ病院として認められる)をたてれば、営業は完全に廃止という話を聞く。
同じ席で聴いた桑田は、その話を利用することで、肉欲を夜逃げに追い込み、ビルを乗っ取ることができると考え、社長に提案する。
灰原から2000万しか融資できないとつげられた肉欲は、灰原と連れて、20億融資してもらっているアカ信ファイナンスの次長へ、5000万の融資を申し込みに行く。
バブルがはじけ、次長の稟議書だけでは、通らなくなってしまったため、断られてしまう。
肉欲は灰原と交渉の末、2500万を借りることになるが、ビルの各フロアの貸借権と代物弁済予約(借金が滞ったら、即座に不動産の現物を引き渡す)
一方で、灰原は、ビル建設反対派の住民を抱き込み、警察の係長を説得して、医者の名義貸しに協力してもらうことに成功する。
分院を作ることに成功
肉欲は、夜の店のオーナーから営業できなくなったので、保証金と前家賃、営業を始めるための投資額を返すように要求される。
第2章 肉欲の夜逃げ 自社ビル争奪戦開幕
肉欲は、即座に夜逃げする。夜逃げに立ち会った灰原は、肉欲のビルに入って、住むことで、占有の既成事実を作ることになる。
ビルを占有した灰原に対して、金を回収できていないビルの業者たちは、全力で回収に向かう。
内装工事をしたにもかかわらず、灰原に占有されて激怒する業者たち。灰原は、貸借権を登記したと主張する。
灰原と吉村は桑田に応援を頼むが、桑田のベンツと勘違いして近寄ったベンツが、業者たちのヤクザで、拉致されてしまう。
気弱な吉村に目を付けたヤクザたちは、暴言と暴力で、念書に記載するよう脅す。強引に母音を押された吉村。灰原からビルの鍵を強奪しようとするが、灰原が鍵を飲み込んでしまう。
ヤクザたちは実力行使で、ビルに侵入しようとするが、桑田が立ちはだかり、桑田が警察に通報する。しかし、警察は桑田とヤクザを勘違いし、桑田をしょっぴく。
ヤクザの下っ端がビルのガラスを壊して、警察沙汰になったことで、場所を貸したヤクザの大元が、灰原を解放する。
ヤクザの下っ端に対して、灰原は帝国金融で話しかけることを提案する。
吉村が母音を押した念書は、筆跡鑑定すればヤクザが書いたことがわかるから意味がない。貸借契約書は、すでに肉欲と業者は解約したので、貸借権を主張するのはずうずうしい。
社長が警察の話を持ち出したことで、ビビッて業者たちは逃げていく。
最終章 アカ信ファイナンスVS帝国金融 抵当権の行方
アカ信ファイナンスの駒津田は、肉欲が夜逃げしたことを知る。いきなり肉欲が倒産したことをしられると、管理責任が問われてしまう。
帝国金融に手形を買い取らせてくれと、交渉するが断られ「自腹で、肉欲の口座に545万入金しろ」といわれる。
駒津田は、激怒し、肉欲ビルの1番抵当者であることを主張する。
肉欲のビルは、帝国にとって登記をふたつにしている。1つは、貸借権登記で権利者は灰原。もうひとつは、停止条件付、代物弁済予約でこれは帝国金融の名義。
持ち主が変わっても、抵当権は残る。貸借権の目的が借金の担保と裁判所が認定すると、アカ信の貸借権が無効という訴えが通ってしまう。
そこで、肉欲の手形が飛んでから、灰原が転貸しして、権利関係をごちゃごちゃにする。帝国が営業をはじめれば、競売にかけても誰も手を出さなくなり、アカ信は泣き寝入りすることになる。
駒津田は、アカ信の社長とともに、赤外信託銀行のプロジェクト推進部に呼び出さる。大蔵省が各銀行に系列ノンバンクの融資について親の銀行が全部面倒をみろと指示されたことにより、融資を禁止され、回収のみを命じられる。
肉欲の不渡りが決定し、帝国金融は、アカ信に対して、抵当権を滌除(てきじょ)(抵当権を所有者が適当と思う金額で買い取る)することを内容証明で送る。10億の抵当権を1億で買い取りたいという申し出がおくられる。
駒津田にできる対抗策は、1億1千万の保証金をつんで競売にかけることだが、金のない駒津田にできるわけがない。信託銀行に保証金を頼むが、不釣り合いな10億の抵当権をいさめられる。
これで灰原は、新しい住居を手にし、帝国金融は自社ビルを手にすることになる。
解説
1巻以上に及ぶ長丁場の話。肉欲棒太郎はのちに登場する重要人物となります。
今回の灰原は、二重スパイのような立ち位置を演じたり、またもやヤクザから拉致されたり、暴行されたりと災難に遭います。
土地の所有権だったり、風営法だったり、抵当権、貸借権と専門用語が飛び交い、なかなか難解な話になっています。
帝国金融は、ただ貸付金に対する金利を払うだけでは満足せず、返済額よりも利益が出る方法があれば、相手を騙す形となっても行う。あくまで営利企業の1つなわけです。
今後も法律を知らないとついていけないエピソードが登場していく(特に最後のエピソードなど)が、そのきっかけとなったエピソード。