青木雄二先生による、金融、借金を題材とした漫画の金字塔「ナニワ金融道」をamazonアンリミテッドで全話読んだので、後世に残したいナニワ金融道全エピソードのあらすじと解説を行いたいと思います。
すべてのエピソードをまとめると、1つの記事におさまらないので、分割してお伝えしています。気になるエピソードがありましたら、下のリンクから飛んでください。
※ナニワ金融道は90年代前半の社会情勢と法律をもとに製作されています。物語の中には、犯罪、違法行為が描かれております。このブログはあらすじとしてまとめているだけで、劇中の行為を推奨するものではありません。
17巻 海の世界に、金の匂いを嗅いだ灰原
- 債務者 末期,灰原
- 借金額 4000万
- 返済額 4600万
あらすじ
灰原は運転中に、飲食店から放り出された海事法務事務所の落振に遭遇する。
落振は、海の不動産といわれている船舶を専門に仕事している。
落振は浦切というブローカーに仕事をまわしてもらうが、ややこしい仕事ばかりをおしつけられ、口論になり、仕事がなくなる。
事業を立ち上げたいと融資を灰原に申し出るが、保証人も立てらず、ここで灰原と落振の関係は一端終わる。
灰原は帝国金融の取り立てを学びに来た都沢の教育係となっていた。
クルーザーの転売 伸るか反るか?
灰原のもとに末期(まつご)というビルオーナーから連絡が入る。2億のクルーザーを買うために、クルーザー担保に4000万の融資が欲しいと申し入れる。末期は船舶検査証があると主張する。
動産で船について知識のない帝国金融一同、これがのちに灰原にとってピンチを招く結果となる。
灰原と都沢は互いに主導権を取りあうように、マウントの取り合いを行っていた。都沢の挑発的な言動に負けまいと気を使った、灰原は信号無視をしてパトカーに見つかる。
免許停止ではなく、免許取り消しと勘違いした灰原は、都沢に揉み消すように依頼する。都沢は灰原の無知を利用して、取り計らい、主導権を握る。
灰原は都沢とともに、末期の登記簿を見る。末期の自宅の土地建物も抵当権が末梢されていないので、借金が残っている。
末期に案内されて、ラウンジをやっている店子かつ今回のブローカーである浦切と接触する。
話を聞くと、クルージング事業ではなく船の転売と聞かされる。話が違うことで、契約を破棄しようとする灰原だが、なんとしても取り立ての工程を経験したい都沢は、灰原に「話だけはきくべきだ」とたきつける。
浦切は、ノンバンクの大手である錦蛇ファイナンスの善井の買付申込書を見せ、契約が間違いないものであることを灰原に伝える。また売り主も釣具店である栗尾であることが伝えられ、栗尾を紹介される。
クルーザーを視察した灰原一行は、船舶証を確認する。
灰原は船検証を確認するが、その横に穴があることを発見し、壁にかけられたものが、船舶省以外にもあったにではないかと栗尾に詰め寄る。栗尾は自分の写真をかけてあったと反論する。
灰原は疑念を持ちつつも、都沢とともに帰社して、自分の意見を社長に告げる。
金畑社長は、帝国金融のノウハウをすべて都沢に吸収させて、出て行かれることを懸念している。書類はそろっている、だから末期に貸して、都沢の弱みを見つけろと無理難題を灰原にふっかける。
灰原は顧問弁護士の悪徳に立ち合いを願い出る。悪徳は都沢の学歴マウントに負けじと、あれこれ自慢し、船や車の売買契約は行政書士の仕事だが、自分もできると言い張る。
悪徳立ち合いのもと、末期は1億6000万の手形と帝国から借りた4000万で船を購入する。
クルーザーに戻ると、船検証が消え、船舶国籍証明書というものが飾られていた。所有者は金箔という栗尾と別の人間。はかったかのように、金箔があらわれた。
栗尾は、金箔と末期に二重でクルーザーを売りつけていた。
船舶検査証書は、あくまで船の検査済の証であり、所有者を表示するものではない。金箔はあえて書き換え手続きをしなったのだ。船検証のみで名義変更できるのは5トン未満で、それ以上は管轄する窓口が異なるという。
灰原一瞬にして 2300万の借金を背負う
金箔、浦切、栗尾に騙されたことを知る灰原と末期。栗尾は飛んでおり、桑田が駆けつける。
1億6000万のてがたの満期日が2週間後に迫っていた。末期は約束手形無効の広告を新聞から出そうとするが、手形を持ってきた人間が「新聞をみていない」といえば意味がない。
払えなければ不渡りになり、債権者が末期におしかけ、末期は倒産してしまう。
灰原が末期から受け取った手形の受取人欄には、帝国金融ではなく、灰原の名前が記載されていた。灰原の後に裏書人に桑田の名前を記載した。
手形の正規の所持者は桑田になり、末期と灰原は協力して4600万を用立てないといけなくなった。
ごねる末期に対して、桑田は「この手形をヤクザに渡せばよろこんで回収するぞ」と脅しを入れる。
灰原も助けを求めるが、桑田に胸倉をつかまれ、「ワシらの命の金利をいれて4600万いかれたんやぞ。負担を末期の折半の2300万にしたのが親心やぞ」と脅される。
灰原と末期は立ち会った悪徳にも責任があるとして、借金の折半を要求するが、悪徳は法廷で争うぞと反論する。悪徳と戦えば、悪徳は帝国金融の所業をばらすと脅す。とてもじゃないが回収できそうにない。
灰原は帰社し、社長に謝罪する。栗尾と浦切を捕まえられなければ、2300万を毎月給料から天引きされ、飼殺しとなる。
金畑社長は、手形法の時効が6か月なので、民法の10年に切り替えるために灰原にサインを要求する。さらに灰原にビルの一室を月3万で貸しているが、もとの価格が30~35万で灰原の月給と上乗せされて、年収780万という扱いになり、2300万の借金で、灰原が自己破産することができなくなる。
都沢はこの金畑の所業に「ヤクザ以上やで」と評価する。
末期は知人から金を借りようとするが、うまくいかず。灰原に対して申し訳ないため、不渡りを出した場合、共同責任分の2300万は回収できるように抵当権を自宅につけることを誓う。
灰原は涙ながらに、会社から借金を負うことを朱美に告げる。朱美はその場合、婚約不履行で慰謝料を請求することで、灰原が自己破産できるようにすると灰原を安心させる。
灰原の長い、浦切と栗尾の捜索が始まる
灰原は栗尾の実家にいこうとするが、田舎で栗尾の姓が多くあり、作業員に扮装して取り入ってみるが、見事に失敗。
灰原は回想で、浦切と関係のあった落振を思い出す。落振は母の死後、橋の下でホームレスになっていた。
落振は灰原の弱みにつけこみ、ことあるごとに浦切捜索を引き延ばし、食事代や娯楽代をせびっていた。
灰原も馬鹿ではないので、しびれをきらし、落振に詰め寄る。
落振にふりまわされながらも、浦切が連れ添っていた女性の弟の居場所を突き止める。
弟はヤクザが管理しているラーメン屋でラーメンを売っていた。
新興宗教の教祖である金箔の霊感商法の一環で高い壺をかわされたことが原因。その壺をかうためにニシキヘビファイナンスが金を貸していたのだ。
この霊感商法に浦切も関与していたが、ネズミ講方式で、ツボを買って勧誘する必要がある。
つまり、この詐欺はニシキヘビファイナンスの善井も一枚かんでいた。
奥の手 0号不渡り
犯人を見つけることができないなら、おびき出すための術を考える。万策尽きたと思われたが、落振の偽装工作に灰原は乗る。
不渡りには1号、2号とある
1号は手形振出人の資金不足などによる手形振出人の責任。そのため不渡り報告にのってしまう。
2号は、契約不履行、詐欺などで手形振出人の信用に関係しない理由で手形が不渡りになった場合。この場合、手形振出人に責任がないため、銀行に通知されない。
末期は栗尾に騙されたわけだが、手形の裏書に善井が書かれていると、善井はなにもしらない第三者になるため、2号不渡りが採用されない。また異議申し立てのために手形の額面が必要。
落振が提案したゼロ号不渡りは、裁判所を騙して、支払い停止の仮処分を出させること。
犯罪であるが、この名案と金貸しに付き合い続けて、テンションの高くなった都沢は、灰原に「ぜひやるべきだ」とけしかける。その言動を灰原は録音することで、都沢の弱みを握ることに成功する。
落振の指示で、末期とニシキヘビファイナンスとの架空の念書を偽造する。ニシキヘビファイナンスは末期が振り出した手形を預かり、3日後に謝礼を払う約束をしたが、それを反故にされたというのが、シナリオになる。
このシナリオが成功し、ニシキヘビファイナンスの手形は仮処分によって支払い停止になる。
銀行に事情を聴きに来た善井、栗尾、浦切、金箔を待ち構えていた帝国金融一同。
4人の姿を確保し、ニシキヘビファイナンスの悪行も晒した金畑社長は2億円の迷惑料で、手打ちにさせる。
借金の返済義務がなくなった灰原。そして、都沢の弱点を突き出し、都沢は帝国金融に反抗できなくなる。
解説
作者の青木氏のアイデアや体力に限界が来たため、本来は関西1の金融屋になるという灰原の目的が中途半端に終了します。
正直、灰原には帝国金融へ辞表を叩きつけてほしかったですね。
とはいえ、ラストエピソードの内容は質と量ともにかなり濃い内容になっています。法律関係の知識もかなり披露されています。
ナニワ金融道が、学校の図書館に置かれていたり、法律の専門家などが勧めて蔵書されている背景には、単に法律論が並べられているだけでなく、どのように悪用されるリスクがあるのか、逆に活用するタイミングをキャラクターが実践する点が挙げられます。