青木雄二先生による、金融、借金を題材とした漫画の金字塔「ナニワ金融道」をamazonアンリミテッドで全話読んだので、後世に残したいナニワ金融道全エピソードのあらすじと解説を行いたいと思います。
すべてのエピソードをまとめると、1つの記事におさまらないので、分割してお伝えしています。気になるエピソードがありましたら、下のリンクから飛んでください。
※ナニワ金融道は90年代前半の社会情勢と法律をもとに製作されています。物語の中には、犯罪、違法行為が描かれております。このブログはあらすじとしてまとめているだけで、劇中の行為を推奨するものではありません。
11巻 起死回生の秘策
- 債務者 肉欲棒太郎
- 借金額 100万(灰原個人の貸付で利子なし)
- 返済額 105万円(5万は肉欲の誠意)
あらすじ
灰原の案で帝国金融からビルを乗っ取られ、ノミ屋の回収に甘んじている肉欲棒太郎は、神戸で再起をはかっていた。
名案を思い付いた肉欲は、灰原から個人的に100万円を借りる。
回収先の映画館のオーナーを抱え込み、使用期限の切れた映画の前売り券を大量に回収し、現金にかえるという方法だった。
人気の映画でも、建設会社の下請けが、大量にかわされている。
映画のプロデューサーが、映画のことをしらない会社の社長をまるめこんで、出資金を出させる。配給会社は前売り券を発行して、出資の会社に協力してくれと大量に押し付ける。
しかし、現実には映画がヒットすることは難しく、大量の前売り券を抱え込んだ出資会社は、下請けや取引先に押し売りする。
映画の入場券の売り上げは、映画館と映画配給会社で折半する。前売り券の場合は、配給会社は映画館に前売り券の半額を払い戻すため、鑑賞したと偽って、金銭を回収する。
映画館社長は、肉欲の作戦を独り占めするため、肉欲の取引先の会社に向かい、自分はさらに前売り券を高く買い取ると契約する。
映画会社に前売り券を大量に売却しようとするが、不人気映画館にいきなり3000人も駆け込んだことを不審に思われ、肉欲の策は1回で終わる。
飛行機の回数券のチケット転売を思いつく
映画館は一つだけではないので、肉欲は広島に飛び、事業を細かくわけながら、取引先を増やそうとする。
広島で、夜逃げ前に部下だった学と再会する。
肉欲は、広島で、新しく飛行機の回数券転売事業を思いつく。
肉欲は山奥でプレハブを借りて、新事業を立ち上げようとする。そのためにノミ屋の胴元であるヤクザにやめることをつげ、犬の糞をなめるという壮絶なけじめを終えて、縁を切って、広島に帰還する。
肉欲は旅行会社と取引して、大量の回数券を購入する。
広告のための印刷代に苦労するが、学校の恩師の温情で、学内の印刷機を使わせてもらうことに成功。
肉欲チケットを立ち上げた肉欲は、回数券を格安で客に売り、利益をあげることに成功する。
解説
ナニワ金融道では珍しく、泥沼の返済の話ではなく、過去に登場したキャラが、事業を立ち上げ、立派に生きていくという話。
事業を成功させるための準備段階が、かなり丁寧に描かれているため、他のエピソードに比べるとインパクトは弱め。
ただ、この2020年において転売を軸に副業している人が増えていることを考えると、肉欲編は、非常に先見の明があったエピソードとも言えます。
12巻 吉村の大失策
- 債務者 軽薄
- 借金額 1000万+500万
- 返済額 1000万1000万(十日で1割のトイチ契約)+600万(6か月で月100万)
あらすじ
街金とトイチの恐怖
軽薄は、ビルを貸していた猫馬場に飛ばれ、猫馬場の借金を回収しにきた債務者たちに、保証金を借金のあてにするように強要される。その額1000万。
従業員の給与で300万ためていたが、残りを帝国金融から借りようとする。帝国金融に残っていた吉村から「上のものに相談しないと無理です」と断られ、銭田というヤクザからトイチ(10日で1割)で600万借りることになる。
不況のあおりをうけ、求人広告業が伸び悩まむ軽薄。仕事で借金を取り返そうとするが、稼ぎ頭に退職されて、さらにピンチになる。
軽薄は短期貸借権を条件に帝国から融資を受けそうになるが、銭田に「2階か3階の空き部屋にテナントをいれて、契約してもらえたら保証金1000万はいるがな」と提案される。
軽薄は、銭田から不動産屋を紹介される。しかしその不動産屋は銭田と裏で手を引いており、不動産の紹介先も、適当にスカウトした人間で会社経営などをしていない。
軽薄は持ち逃げされた金も含めて、合計1000万を銭田から融資される。
偽の不動産屋の紹介先からの引き延ばしによって、無駄に利子を払い続ける軽薄。利子を払いきれない軽薄は、帝国金融に泣き寝入りする。
軽薄は、帝国から満額の500万借りるために、社員の人吉を帝国金融と結託して、だまして保証人にさせる。(手形の裏面に住所と名前をかかせるだけ)
返済のめどがたたない、軽薄はまた銭田にしがみつく。
軽薄 取り込み詐欺に手を染め、債権者を出し抜こうとする
銭田の案で、カラ手形を振り出して借りるだけ借りる。そして不渡りにする。6000万ほどの負債を背負っている軽薄だが、未収金、売掛金、手形を銀行に割るための定期預金が4000万あり、それを債権者で分け合って解決することを提案される。
4000万の財産の割を手にするために、軽薄は架空の負債を銭田から作る。
軽薄は銭田の指示で、自社ビルを盾に高級車を手形で買いまくる。それを銭田に横流しさせる。車検までの間、車は利用できるが、銭田のコネと手数料で、軽薄は危ない橋(取り込み詐欺)を渡りながらも、少量の金額しか手に入れられない。
騙されて保証人になった人吉を心配した灰原は、軽薄に不動産屋と銭田が結託している証拠を示し、関わらないように忠告する。
銭田は公正証書をつくって、軽薄に3億5000万借りたことを偽る。これで財産を分配する際に、銭田は3500万とれることになる。
軽薄は社員を解雇させ、300万を社員にわけさせて、手切れにさせる。
灰原VS銭田 金融屋の意地をみしたれ
軽薄は銭田の指示で、債権者相手に説明会を開くことにする。夜逃げすると刑事事件に発展するため、民事でおさえるための作戦だ。
予定通り、銭田は3億5,000万の公正証書を武器に、軽薄の財産の4000万のうち2800万を手に使用とする。
灰原は、銭田のでまかせであることは見抜いていた。ほかの債権者をあおって、裁判で破産させて、法的に整理するように提案するが、誰も裁判費用を払いたがらない。
灰原は、一般債権者の債権を15%で買い取ることを宣言する。これで帝国は銭田についで大口債権者となって、直接交渉することができるようになる。
銭田は強引に私的整理に持ち込もうとするが、灰原に阻止される。結局、軽薄の小切手帳と手形帳を帝国金融と銭田それぞれでカードキー、鍵をわけて保管することで終了する。
軽薄の未回収取引先を調べ、手分けて債権者たちは回収に向かことになる。
灰原は目を盗んで、銭田の公正証書のコピーを取るさなか、公正証書の原本を処分する。
軽薄の手形が飛んでしまったため、桑田は人吉の実家まで行き、600万を回収する。
銭田は、灰原に未回収取引先にいっていないことを晒され、知人のヤクザに朱美の拉致を指示。
灰原は銭田に公正証書の引き下げを要求する。
灰原は朱美を拉致したヤクザに「ベンツを女に傷つけられたら、白紙委任状にかけ」と脅される。
ヤクザの下っ端は、上の指示で朱美を襲うが、朱美は全身入れ墨なので、意気消沈して、朱美は逃げることに成功する。
白紙委任状に記載した灰原は、委任状を奪回するため、ヤクザの首元にかみつき、出血を負わせる。
ヤクザは、銭田の目論見をすべてばらす。公正証書の偽造は重罪なので、債権を取り下げるよう灰原は、銭田を追い詰める。
一般債権者の債権を大量に買い取っていた灰原は、4000万の取り分を取得する。軽薄は、銭田の後ろ盾をなくして、無一文になる。
ヤクザにかみついたので、灰原は警察に自首するが、マル暴の問い詰めで、ヤクザにも拉致した後ろめたい事実があるため、灰原の行為は不問になった。
解説
これも胸糞エピソード。軽薄は、債務者の中では一番図太く、狡猾です。銭田に騙されたことは多かったが、自分たちさえよければ、自分たちを守った社員も裏切るやつらでした。
ナニワ金融道の中には、借金によって人生を狂わされ、倫理観が崩壊して犯罪に手を染める人間が多いのだが、軽薄はその極致といっていい。人吉が非常に哀れでした。
人吉は軽薄に、資金繰りでこまっているから帝国金融からお金を工面してもらうことにしたということで、帝国へ行って、最終的に保証書と伝えられなかったが、手形の裏面にサインをしてしまいました。
現代なら、相手がどのような金融機関かを調べる手間が必要になりそうです。
今回はさらに灰原が主人公として活躍。ヤクザの首元にかみつき出血させると、行くところまで行ってます。
銭田の手口だが、帝国金融は金利を得るために長期間の手形契約をすることで、不渡り情報もつかみやすくなったり、金利をたくさん得られる契約にしてます。
銭田の場合は、10日に1割ですぐに返金されると旨味がない。そのため相手を窮地に追い込み、利子だけ回収して、元本を減らさせないという手口を活用してます。