今回はフランスのゲーム会社によって作られた時間を巻き戻すアドベンチャーゲーム。ライフイズストレンジの感想、レビュー、評価になります。ネタバレ無しとなりますが、ゲームのシステムなどを深く考察しています。
今年の9月に本国で続編が発売されることになる、ライフイズストレンジ2・・・
その1作目にあたるライフイズストレンジをプレイすることになったので、クリア後の感想を書きます。
ライフイズストレンジ あらすじと展開
僕、結構アドベンチャーを途中で挫折してしまうことがあるのですが、このゲームは半月ぐらいと結構早いペースでクリアしましたね。
あらすじは
シアトルから故郷のアルカディアベイというオレゴンの田舎町に戻ってきたがマックスが主人公。
彼は、写真が趣味で専門の高校に通うために帰郷しました。そんな彼女がある日、たまたま遭遇した幼馴染クロエのショッキングな死に遭遇したことを
きっかけに、直前の時間を巻き戻すという特殊能力を手に入れます。その特殊能力を手に入れて、クロエを救いますが・・・それと同時に5日後に
故郷を襲う台風の予知夢を見るようになり・・・
過去に戻れる力と、過去の写真を凝視することでその時間帯へタイムワープできるという能力を駆使して、行方不明のレイチェル・アンバーという女性の行方を、クロエとともに突き止めていきます。
ライフイズストレンジ 考察 映画や小説のタイムリープと異なる 自分で選択するという責任と重さ
本作は、全世界で高い評価を受けているアドベンチャーです。ただ、あらすじやストーリーを見る限りは、普通の学園生活にちょっとした危機が入ったという内容です。
まぁ、終盤はなかなかにドロドロしていますが。
実は、全体を俯瞰しても凡庸な内容ですし、タイムリープといえば
時をかける少女
バタフライエフェクト
バックトゥザフューチャ
恋はデ・ジャヴ
といっぱいあります。今更って感じがしますが、それをゲームでアドベンチャーという選択肢をとるスタイルでやることで意味合いががらりと変わります。
タイムリープと違って、主人公のマックスは特定の条件さえ満たせば、自分の意志で過去にいって改編することができます。だからこそ、彼女の選択は、後々重い責任と使命が伴うのです。
優れたアドベンチャーゲームはプレイヤーの選択に納得感がある
面白いアドベンチャーゲームというのは、プレイヤーが取った選択肢が、そのキャラクターの生き死にを決めたり、ゲーム内の世界観を変えるほどダイナミックにあふれるものや、
選択の結果に納得のいくもの。
例えば、恋愛ゲームでいえば、その女の子に会い続けて、優しい選択肢を取り続けたら、告白されたという納得の結果を得られたら、快感となってゲームとして成立します。
ジャンルが違うようで、アクションゲームと同じです。自分のやったことが結果として、納得いく形で応答があること、そしてまたプレイしての繰り返しです。
長時間触れ合うストーリーだからこそ選択からしばらくしても、キャラクターがその内容を覚えていることが大切
ライフイズストレンジも、マックスが劇中で同級生を慰めたり、電話に応答することで、5~10時間後の展開で「そういえば、あの時、電話に出てくれたね」とマックスの忠告を
受け入れてくれたり、マックスの望んだ結果に変化しやすくなります。
この心の動きの表現が絵画のようなグラフィックとともに、非常に優れた表現法だと感心しました。
普通なら、「デトロイト」のように、選択によって印象値がプラスになったり、マイナスになったりするものが多いです。ゲームによっては好感度といってパーセンテージやバロメーター
で見えるようにします。
ライフイズストレンジでは、そういった数値を一切排除しているので、「あぁクロエの好感度が下がったから取り戻さないと」というゲーム内パラメーターのご機嫌をうかがいながらストレスを溜めてプレイする必要がないです。
「ヘヴィレイン」にあった臨場感で、「デトロイド」で損なったものって、実はこれだったりして。
デトロイト ビカムヒューマン 考察 人の代替としてのアンドロイドについて
(数値至上主義なところが強く、映像はリアリティやライヴ感を重視しているので、急にゲームをやらされているという現実に戻されるようなプレイ体験でした)
マイケルが選択した言葉というものも、基本プレイヤーがやり直して、納得のいくまで選択できます。
既存の選択型アドベンチャーゲームは、怠惰になると決定ボタンを連打して、あらぬ選択肢をとって台無しになるってことがままありましたが、ライフイズストレンジは、そういう
ポカがありません。
だからこそ、自分が選んだ選択に「責任」が生まれ、それがどのような結末をもたらすのか気になって仕方なくなります。
これって、10~20時間以上人の関心を拘束するテレビゲームというメディアにおいて、もっとも大切な要素ですよね。
スマホゲームであれば、ある程度プレイヤーが起こした努力や行動に対して「ここまでの報酬を出せますよ」と半歩先の結果を見せることで、プレイの動機を上げています。
一方で、テレビゲームは、ある種完成された状態で、「とりあえずクリアまで10~20時間遊んでください」という状態でプレイヤーに渡します。
当然、プレイヤーはネットの情報でネタバレを見たうえで、遊ぶこともできますが、ことアドベンチャーに対しては、エンディングや選択の細かい結果はRPGやアクションほど可視化されていません。
ライフイズストレンジの場合、序盤にオタク少女のマックスと関係ない、チアリーダーやヒエラルキー上位の恋愛沙汰に無理やり付き合わされます。
ただ、過去に戻れる力を駆使して、解決して友達になった、有益な情報をもらったという報酬をもらうことで、「全く興味のないいろんな学生と付き合うことでゲームが進めやすくなる」という道筋が立てられます。
過去に戻れる力を使って、瞬間移動的な芸当で先へ進んだり、人間関係を修復することで、このゲームを遊びやすくするためにどうすればいいのかという先導がとてもうまいです。
さらに関心したのは、物語の中心はプレイヤーから徐々にマックスへ移行していくストーリーテリングです。
マックスの決意が、終盤に進むにつれて固まっていく
序盤は、あらゆる選択に対して、マックスが「これでよかったんだろうか?」と疑問を投げかけます。どんな選択でもこういう灰色の答えになりますが、物語が進むにつれて、マックスが
クロエを助けたいという方向性が定まり「今のは、これでよかったんだ」と彼女の決断が固まっていきます。
嫌いから離れられない クロエのキャラクター設定が非常に素晴らしい
クロエの見せ方もうまく、序盤は奔放でマックスをトラブルに巻き込みまくり、ちょっとでもそっけない顔をすると「みんな私を裏切るんだ」とヒステリックになって、正直好きになれないキャラです。
それが、マックスのタイムスリップによって、あらゆるクロエと遭遇することで、彼女の境遇に共感したり、同情したりして、最後は「彼女を助けなければ」という気持ちが喚起されます。
これもヒーローや超能力を題材とした映画の代表的な作劇で、最初は自分のために、自分の都合の良いように力を使っていくけど、あらゆるトラブルに巻き込まれ、最後は人のため、街のために
自己犠牲で、困難に立ち向かうという共感しやすい見せ方になっています。
総括するとライフイズストレンジがなぜ評価されているかというと
・些細な選択肢や行動がのちの結果にしっかり影響すると感じられる
・誤った選択肢を巻き戻せるので、後の結果が自分の責任によるものと実感できる
・他キャラからのマックスへの印象は存在するが、パラメーターなどの数値化されていないため、物語に没頭できる
・序盤の導入で、いろんな人に声をかけたり、力を利用してトラブルを解決する道筋をチュートリアルを少なく導入されている
あと、単なる選択型アドベンチャーですけど、道中にステルスアクションが求められたり、逆転検事のようにロジックをつなげていくような推理パートがあったりと細かいジャンルを盛り込んで、飽きさせない作りが多いです。
奇抜なストーリー、魅力的なキャラで攻めるのも一つの手法ですが、ライフイズストレンジは、「428」「ヘヴィレイン」のように、ストーリーとしては際立った要素が薄くても、ゲームのシステムによって、プレイヤーが選択した結果を知りたくて、プレイをすすめてしまう仕組みがしっかり用意されています。
つまり、アドベンチャーゲームというジャンルは、まだまだ映画や小説で語りつくされたジャンルや展開に新しい味付けと娯楽性を付加させることができる余地があるということです。
ということで、2000年以降に発売されたアドベンチャーゲームであなたが遊ぶべき3選として
群像劇により、一つのストーリーを完成させる、快感なパズル性が売りの428
残酷な体験、プレイヤーが介入してしまったというラストへの衝撃が忘れられない
ヘヴィレイン 心の軋むとき
人生のあらゆる「選択」と「干渉」について考えさせるライフイズストレンジ
次点でフェイシャルモーションが新しいアドベンチャー体験を生むLAノワールを推したいところです。
ちなみにFate、クラナド、シュタインズ・ゲートが入っていませんが、ストーリーが優れている、分岐が膨大というのではなく、新しいアドベンチャーゲームの体験ができる、ストーリーに斬新さがなくてもゲームというメディアで新しい驚きや体験を提供したということを重視すると、この3選になります。