今回は2022年10月28日にAmazonプライムで10話(1話平均42分程度)公開された白石 和彌(かずや)監督による仮面ライダーBLACK SUN(以下ブラックサン)を全話みたので、その感想と、純粋にこの作品がおもしろいかつまらないのかどうかを仮面ライダーファンとして、お伝えしたいと思います。
別に考察記事を上げる可能性がありますが、この記事に関しては、ざっくりとあのシーンがどうだったとか、面白かったのかどうかとか他の類似作との比較に関して、語るつもりです。
※この記事はブラックサンに関するネタバレを大いに含みます
仮面ライダーBLACK SUN(ブラックサン) テーマとストーリーの描き方
仮面ライダーブラックサンは、怪人という存在が当たり前に存在するという設定。
怪人は一見すると人に見えますが、匂いで簡単に判別され、バスにのれなかったり、飲食店を利用できなかったり、不当逮捕されるなど、様々な迫害を受けています。
このようにブラックサンでは、「差別」が1つの大きなテーマになっています。
物語は、2022年の現代と1972年の過去の2つが並行して、描かれています。
主人公の南光太郎と秋月信彦は、怪人として、怪人の主権を訴える一方で、同じゴルゴム党という怪人の主権を訴える集団に所属するゆかりに影響され、怪人が増え続けることが正しいのかという葛藤にさいなまれます。
ブラックサンは怪人が圧倒的少数であり弱者です。怪人たちにはランクがあり、ほとんどの怪人が、人間より若干力が強い程度の下級怪人で、拳銃や暴行を受けると、すぐに死にます。
一部の殺傷能力をもった怪人たちは、自分たちのもつ暴力をもって、人間たちに抗うのか、それとも圧倒的な兵器と数を持つ人間に対して、和平を持ち込まざるを得ないのか。
同じゴルゴム党でも、意見が分かれ、内部分裂などが起こっているという点が、ブラックサンのドラマの面白さであります。
そして、物語はのちに、怪人のルーツでもある創世王を殺す目的の光太郎と、自分が新しい創世王となって、怪人が人間の上位種として君臨するという信彦の主張がぶつかることになります。
仮面ライダーBLACK SUN 現代編と過去編の描きわけが必ずしも成功していない
ブラックサンのドラマについて、前述したように現代と過去を並行して描くという方法をとっています。
この手法は、ニチアサ枠で平成ライダーの「仮面ライダーキバ」と同様の描き方となっています。
視聴者が大人であることを意識しており、最初は丁寧にテロップを入れて、時代がかわったことを表現しつつも、途中からは、なんの前触れもなしに時代が変わっていたり、演出は簡略化されていきます。
物語の謎については
- なぜ主人公2人はゆかりという女性の意志を引き継ごうとしているのか?
- 結束していたゴルゴム党がなぜ分裂してしまったのか?
- 現代編で登場しないキャラがどのように命を奪われたのか?
以上になります。
ただ、この謎は過去編の4分の3程度で、サブリミナルのように映像がうつされるので、視聴者は「あぁそういうことね」と理解したうえで、残りの展開をみることになります。
そうなると過去編はただの消化試合になり、冗長なパートになってしまいます。
逆にキバは最後まで、紅音也という人物を中心に何が起こったのかを小出しにしながら、過去編への関心を損なわせなかったと思います。
仮面ライダーBLACK SUN ネタバレ 怪人の設定と謎について
ここからは、大いにネタバレになります・・・ご注意ください
ブラックサンの1つの謎として、「怪人」ってなに?というところがあります。
怪人は、創世王のエキスや動物のDNAを人間に注入されることによって生まれたもので、戦時中の人体実験によって、人間の手で生み出された存在です。
創世王も光太郎も信彦も人体実験によって生まれた、いわば被害者です。
当初の目的は、戦争兵器であり、脳もコントロールすることで、従順な戦闘兵器にもなります。
さらに、創世王のエキスと死んだ人間を混ぜることによって、怪人たちの活力剤となるヘブンという食料ができます。
ヘブンを摂ると肉体が活性化されます。長期間とることによって、若さを保ち続けることが可能になります。
ヘブンや怪人化の肝である創世王の命がのこりわずかであることと、エキスがとれなくなっているというところで、次期創世王をゴルゴム党と総理は躍起になって探すわけです。
ヘブンやつくられた怪人たちは、政府によって管理され、高値で取引されているというのが、ブラックサン現代編の社会構造であり、怪人は人間と共存といわれながら、結果的に従属しているという状態になっています。
あと、怪人と怪人、怪人と人間で交配した場合、怪人が生まれます。
仮面ライダーBLACK SUN 怪人と人間の違い
前述のように、怪人は改造された人間という解釈であり、ほとんどは姿が違うというだけで、考え方などは変わりません。
そのため、ブラックサンのスタンスは、怪人も人間も人を時にきずつけ、助けることがあるということで、どちらも変わらないという表現を見せています。
類似作でありAmazonプライムで見られるアマゾンズは、改造ではなく、遺伝子操作で最初から怪人を作るというコンセプトで、一部のキャラを除いて、人間と怪人の考え方や行動は違います。
どちらも怪人側が、圧倒的少数という点は変わりません。
仮面ライダーBLACK SUN(ブラックサン)は結局おもしろいのか?つまらないのか?
私が、ブラックサンをみて面白かったのかどうか。
まず10話という長さですが、各人物の心理描写や、立ち位置の変化をしっかり描くには必要だったと思います。
特に原作の特撮仮面ライダーブラックでは、消化不良だった創世王という存在や、シャドウムーンのお膳立ちでいなくなったビルゲニアにスポットライトが当たった点はよかったかと。
ただ、前述のように過去編の関心が途中で薄れてしまったことと、差別をなくすことに対して、同じセリフを結構しつこく使って、それが騒音のように聞こえてしまったこと。
ラストの描写などは差別や抵抗の連鎖という点で、考えさせられる点はあったものの、製作者側のメッセージが強すぎて、受け手の解釈が制限されているなという息苦しさはありました。
特撮アクションでいえば、華美なエフェクトは極力おさえ、生々しい暴力描写が数多くみられます。まさに大人向け仮面ライダー。
しかし、エフェクトなどが全くないために、シャドウムーンとバラオムの戦闘シーンは、ただの取っ組み合い、プロレスみたいに見えたり(それがいいって考え方もあります)、少し物足りなさもあります。
ただ、新しい完全体のブラックサンは文句なしにかっこいいです。
あと、原作が好きな人は、10話冒頭の展開をみたら、間違いなく心をわしづかみにされます(笑)
絶賛されたアマゾンズに比べて、かなり賛否両論の多いブラックサン。
アマゾンズは、平成仮面ライダーファンの中心スタッフが、平成仮面ライダーファンが本当みたい映像やストーリーをかなえてくれたまさに特撮ファン向けにチューニングされた作品。
一方で、ブラックサンは邦画好きとか、仮面ライダーをある程度みていない層でも1から始める作品として意識された作品です。
そして、Amazonプライムで公開されたばかりで、視聴する層というのは間違いなく仮面ライダーファンばかりなので、反対意見がちらほらみられるのは仕方ないです。
ブラックサンという作品は、ある意味、原作ファンに媚びない(オマージュなどはあるにしても)作品だと感じました。
もちろん、語ってきたように失敗している表現や冗長な描写はあるものの、仮面ライダーをみたいと思っている人には、勧められる作品だと思いますし、語りがいのある作品だと思います。