10年間の名作といわれているアランウェイクが、ダウンロード販売で、PSでも遊べるようになりました。もともとはXBOX360の名作だったため、長年プレイできませんでしたが、ようやく購入してプレイすることができた感想になります。10時間ほどのクリア、エンディング後のネタバレを含む評価、レビューになります。
このブログでは、ゲームのストーリー解説や考察について、力を入れていますので、よろしければほかのレビューもご覧ください。ゲームをクリアした後に見ていただけるとさらに楽しめるものばかりです。
アランウェイク あらすじ
アランウェイクはおよそ10年以上前にリリースされた作品で、マックスペイン、コントロールを世に出した、レメディーエンターテイメントより開発された作品です。
主人公のアランウェイクは、非力な一般人の作家であり、ある田舎町で休養をとる予定でしたが、妻が失踪、スランプだったにもかかわらず、いつの間にか書かれている自分の原稿、そしてその原稿が現実となり、闇をまとった人間が自分を襲ってくるといった数々の謎に見舞われます。
アランウェイクは、ゲームとして実験作なのか完成作なのか?
現在のゲームというのは、遊ばせること、達成感を得られることをメインとしてつくられる傾向にあります。膨大なサウンドトラックや、リッチな映像表現は、あくまで副次的なものにすぎません。
一方で、アランウェイクが発売された2010年というのは、XBOX360やPS3といったゲームのグラフィックが進化し、映像表現をドラマや映画といったリアルなメディアに寄せようと試行錯誤が観られた、時代だったと記憶しています。
アランウェイクの一人語りは、ゲームの進行を大いに助けてくれる
初代マックスペインから、レメディーは試行していますが、ゲームの進行にあわせて主人公のモノローグ(一人語り)がリアルタイムに進んでいきます。
映画や小説におけるモノローグは、受け手に主役の心境や状態をナビゲートする役割になりますが、ゲームであれば次にどこへ進むべきかを直接示唆してくれています。アランウェイクは、常にどこへ進むべきかのナビゲートは、親切に行っております。
特筆すべきは、光のある方向に進めばいいことと、おおまかな道筋は追えるようになっています。映像とセリフで、ナビゲートすることによって、マップに表示するとか、画面で表示するといった没入感を損なう要素をなくしています。
主人公が小説家という設定は、ゲーム×文字に新しい可能性を生み出している
次に劇中で、アランウェイクは、実写映像や、アランが書いた原稿を拾って読むといった小説といった他メディアを意図的に混ぜています。
特に当時人気だった海外ドラマの次回予告の手法「これまでの○○○は・・・」といった導入など、プレイヤーにストーリーのあらすじを追いやすい工夫がされています。
さらに、道中で拾う原稿は、ある意味、アランウェイク本編のミスリードが含まれていたり、これから起こることの予知などが語られていたりします。
同時期に、重松清を起用した「ロストオデッセイ」などゲームと小説をからめた作品は登場しましたが、アランウェイクは当時としては珍しく、読むことでリアルタイムに次のことを察知したり、振り返るといった要素を盛り込んでいます。
文字や活字を読むというのは、ゲームをプレイするうえで進行を妨げる危険性がありますが、アランウェイクは、ホラーテイストで作られているため、小休止としての役割もあります。
以上の点から、アランウェイクは、決してゲームを無理やり映画的に作った作品ではなく、小説や映画などの他メディアの良いところをうまく、ミックスした作品であり、現在プレイしても完成度は高いと感じる作品になっています。
アランウェイクがゲームとして面白味に欠ける理由 敵が記号的で深みがない
では、アランウェイクはゲームとして面白いのか?という疑問について
私はアランウェイクは、つまらないゲームだと感じることが多かったです。
アランウェイクは、最初から最後まで、懐中電灯を敵にあてて、闇をはがして、銃で攻撃するということを繰り返すだけです。
バイオハザードのように銃弾などを管理するサバイバルホラー的な要素はなくはないものの、リソースはステージ開始都度、リセットされます。後半になるほど、弾薬や閃光手りゅう弾などの資源は豊富になります。
さらに言えば、特定のポイントでは敵を無視して、次のライト(チェックポイント)まで走ったり、敵をおびき寄せて、閃光手りゅう弾で一網打尽にしたりできます。難易度ノーマルであれば、プレイヤーの知識が一定まで到達すれば、クリアが容易になるでしょう。
(閃光手りゅう弾が大切なゲーム)
景観もほぼ山道だったり、炭鉱がたまに出てくるなど、変化が乏しいのも、マンネリに拍車をかけています。
アランウェイクは、人型の敵が基本登場します。一般市民が闇にとらわれて、アランに襲ってくるということで、犠牲者はでているわけです。
とはいえ、市民の見た目は、ほとんど同じで、たまに劇中で名前付きのキャラが、闇にとらわれてアランに襲いかかってきますが、ボスとしてはなく、一般の敵にまじってでてくるといった流れで、インパクトがありません。
アランウェイクのジャンルは、ホラー・アドベンチャーに位置すると考えていますが、他の名作であるサイレントヒル、バイオハザード、SIRENといった作品は、雑魚敵であっても細かい設定があたったり、後半になると儀式の犠牲者、主人公の本能の投影、凶悪な実験体といった、精神的、物語的に進化した相手がやってきます。
(1作目のリメイク的立ち位置。エピソード形式で販売したり、アランウェイク同様にこれまでのあらすじを導入しています)
つまり、アランウェイクの敵というのは、「単にチェーンソーをもっているおっさん」「こざかしくまわりを徘徊する小男」といった記号的な敵でしかなく、せっかく深みのあるストーリーという下地があるのに、敵の設定は記号的なだけで終わっています。
ネタバレ アランウェイクのストーリーはゲームのストーリーとして素晴らしいものだったのか?
アランウェイクのストーリーは、2010年であることを考えると、考察にいくつもの余地があり、様々な考え方ができて、クリアした後も余韻があって楽しめる作品だと感じました。
エンディングは、アランが妻を救出するも、まだ小説を書き続け、答えを模索しているという消化不良が残るものでした。
多くのホラーゲームが、複数のエンディングを用意するというある種の「逃げ」を行っているのに対して、アランウェイクは、エンディングを1つに固定しています。
また、ゲームのストーリーというのは、AからBへ、心情や情景をすべてキャラのセリフで語るというわかりやすさが主体だったり、あくまでゲームをクリアしたおまけ的な位置づけでした。
アランウェイクは、ストーリーをしっかりと語り、映画のように時系列をあえて乱す技法だったり、ミスリードをふんだんに織り交ぜたりといった手法をふんだんに取り入れています。
特に、ミスリードには力を入れており、夢ではじまる物語や、精神科医につかまっていた流れから、よくある夢落ちや精神疾患ではないか?という物語への不安感をあおりつつ、しっかりオカルトへ着地させたのは、見事だったと思います。
アランウェイクのストーリーは素晴らしいが、ゲームとしてのストーリーは未完性である理由
最後にちゃぶだい返しになるのですが、アランウェイクは、ゲームに様々なメディアを統合させて、新しいストーリーを作るという意欲は見られたのですが、結局、ゲームに難解なストーリーは必要なのか?という別の問題にぶつかります。
そもそもゲームというのは、ドラマや映画と違って、コントローラーを握って操作する必要があることや、ゲームを進めるためには、ゲームのルールやアクションを覚える必要が出てきます。
つまり、プレイヤーは、映画や小説のように物語にすべての神経を集中させることができません。
クリアまでに10時間程度は時間を必要とするため、細かいメタファーなどを追うことが結構難しいです。
さらにいえば、アランウェイクは、単調なゲームですが簡単なゲームではなく、油断すれば敵の攻撃を2~3発受けただけで、ゲームオーバー。チェックポイントも不親切なほど長くはありませんが、運が悪ければ5分前ぐらいのポイントに戻されます。
優れたゲームのストーリーというのはどういうものなのか?
優れたゲームのストーリーというのは、難解で考察のしがいがあるもの・・・だけではなく、結局は操作をして、クリアしたことへの動機付けというのが、絶対必要だと私は考えており、アランウェイクのストーリーは、単体で見れば深いのですが、ゲームのストーリーと考えると発展途上にあります。
欲を言えばカタルシスが欲しかったです。
例えばSIRENなどは、序盤~中盤にかけて、主人公たちが黒幕の良いように動かされたり、主体性のない烏合の衆が集まっている状態です。
ただ、中盤以降は、物語の真相を究明しようとするもの、目の前の化け物に対して、明確に立ち向かうと決意するものといった、キャラの成長や動機づけが明確に与えられていきます。
だから、プレイヤーは、先へとにかく進めたいという欲求にかられます。