風の谷のナウシカ 感想と考察 少子高齢化とエゴによって緩やかな絶滅を選ぶ宮崎駿の作品 

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1984年にジブリ長編アニメとして公開された「風の谷のナウシカ」。ナウシカには、宮崎駿による漫画版があり、長編アニメは7巻中の2巻程度の内容でした。噂によると宮崎駿最後の長編アニメは、ナウシカ2になるかもしれない?というのがありましたが、結局「君たちはどう生きるか」に決定。ナウシカ2になる可能性がないかも(フェイクの可能性はありますが)しれないので、漫画を読むことにしました。

感想と考察になりますので、ネタバレは容赦なく行いますが、ネタバレしたからと言ってこの作品の質が下がるものではなく、読み込むべき箇所が膨大にある作品なので、3000円ほどはらって読んでみてほしいです。私も不明な箇所ばかりです・・・・

 

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ナウシカの世界は、高度産業文明が発達するも、人々が争うことで世界がリセットされてしまい、大地が汚染され、残された人々が、瘴気という猛毒ガスにおびえて暮らしています。

一方で、南のトルメキア、北の土鬼(ドルク)が領土争いのためにもめており、いよいよ直接戦争を行うというのが、基本のストーリーです。

 

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少子高齢化とナウシカの世界 徐々に減っていく人々

ナウシカの世界は、今の日本、世界に置き換えても全く古くなっていない、普遍的な話です。

3.11を経験した我々にとっては、腐海(ふかい)によって発せられる瘴気は、放射能というのは、理解しやすいかと思います。

ナウシカは風の谷の長ジンの娘で、正当後継者ですが、ナウシカは11人目の子供で、男もいたのですが死んでしまったとのこと。未熟児、死産、流産、不幸な死・・・いろいろ考えられます。

風の谷は、若者よりも老人が中心になって、共同体を維持している状態にあります。

トルメキアもドルクも一見すると、栄えているように見えますが、徐々に人口が減少し、住める場所がなくなっているので、統治を維持するために、侵攻するという背景があります。

ドルクなどは、旧人類による墓所の命令によって、旧人類が新人類にとって代われるように意図的に出生率をコントロールされた可能性はあります。

トルメキアの場合は、発展途上ではなく、産業的には栄えている国のため、農作・稲作中心の風の谷と違って、子供を産む=労働者の確保という図式ではなくなり、子供を産む必要性が薄れている、先進国と同様の状況になっているのでは?と思われます。

 

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ナウシカとクシャナとアダルトチルドレン 母からの愛情の欠乏

次は小さなテーマと比較を拾っていきます。

宮崎駿といえば、戦う女性、社会の上位に上っていく女性をよく描いているクリエイターです。

風の谷のナウシカでは、導き手となるナウシカとトルメキアを統括するクシャナという女性が登場します。

胸が大きい? 女性的な魅力が描かれるナウシカとクシャナ

ナウシカで検索すると「胸が大きい」というトピックが見られます。ナウシカとクシャナのバストは、ジブリアニメの中でも屈指の大きさになっています。

7巻では、ナウシカが全裸になって、身体を洗われるシーンがあったり、クシャナは神聖皇帝の兄ナムリスにひたすら、妃になって「お前と寝たい」と求愛されていました。

2人には共通点があり、母親から愛情を受けた記憶がないということです。

子供を作りすぎて壊れてしまったナウシカの母

ナウシカの母は、10人の子供を失っており、ナウシカに対して悲しみを教えることはできましたが、愛を教えることはできなかったと、ナウシカに評価されています。

昔、海外のドキュメンタリーで富豪の遺言で、「子供をたくさんつくった家庭に遺産を遺す」というのを受けて、一番子供をつくった家庭が同率で10人だったので、10人以上の子供を作るというのは、利益があったとしても相当困難な状態です。

ましてや、瘴気のある状態で、子供を作るというのは、体力、精神、そして体の適正としても困難を極めそうです。

繰り返される出産の苦痛と、それを失う心労によって、ナウシカの母は子供と向き合うことが不可能になるぐらい、精神が病んでしまったのでしょう。おそらく唯一健康に生きたのが女性であることを、ジンや風の谷の重鎮から陰口をいわれた可能性もあるかもです。

後継者争いによって精神を壊されたクシャナの母

クシャナも後継者争いの被害によって、母親が毒を盛られ(直接か比喩か不明ですが)、精神を病んでしまい、手元の人形をクシャナと思うぐらいの病を患いました。

クシャナもナウシカも若くして、里と国のリーダーを期待されるも、親からまともな愛情を受けていないアダルトチルドレンな描かれ方をしています。

 

私がナウシカの素晴らしいポイントは、人口が減少していることが深刻な問題としながらも、「では子供を産みまくればいいんだ」という安直なゴールを設定していない点です。

それどころか、出産によって不幸をたどるキャラをところどころ配置しているのです。

 

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神聖皇帝 ミラルパとナムリス 生き方は違うが後継者を作る思想はなかった

映画では全く描かれていないドルクという国の内情。

ドルクでは、神聖皇帝という2人の兄弟が統治しているのですが、実質は弟のミラルパによって統治されています。

ミラルパは老体なのですが、人の心を読むなどを超能力を持っており、僧正を側近に入れています。

一方でナムリスは、ミラルパのような力も、根底にある慈愛もない権力欲だけの人物ですが、権力のためなら、自分をヒドラ(不老不死の怪物)にしてでも、生きながらえる道を選択する男です。

描かれていないだけかもしれませんが、ミラルパもナムリスも長寿ですが、子供と思しき描写がありません。2人には父がいて、ヒドラになろうとしましたが、死にました。

(ナウシカの正当後継的作品?)

 

ヒドラになろうとしたということは、自分の後継者として息子を選ぼうとするのではなく、自分だけで、長期政権を築こうとした意思表示だと思われます。

ミラルパは父の死をみたトラウマがあり、ヒドラになりませんでしたが、堕落的なドルクの民をみて、跡継ぎをつくって任せることのリスクもあったのか、自分一人でできる限り、支配体制を継続させようとしています。

ナムリスもクシャナとの子を欲しがったと思いますが、跡継ぎのため、平和のためというより、単にクシャナと関係を持ちたかったからという色欲のウェイトが重いと思われます。

 

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ナウシカの最後の選択とその後のジブリについて

ナウシカは、旧人類と新人類がとってかわることを拒否し、旧人類を絶滅させます。

・・・といっても、最終的にナウシカの世界は新人類が住むことができない状況になることは、確定しています。

冒頭のテーマとあわせると、やがてゆるやかに絶滅する少子高齢化状態です。

ラスト7巻は、1994年に書かれたようですが、現在のジブリを差すような描写ですね。

周知のように、ジブリは「ハウルの動く城」で、細田守監督にバトンタッチを考えていたのですが、最終的に宮崎駿が監督になりました。

それまでも、庵野秀明監督が、ナウシカ2を手掛ける噂もあったりしました。

「耳をすませば」「借りぐらしのアリエッティ」など別監督による作品はあったり、息子の宮崎吾郎が監督になったりなど、ありましたが、最終的にジブリ=宮崎駿、高畑勲の図式を変えることができず、ジブリは緩やかに衰退していってます。

ただ、それはジブリのバッドエンドだったのか?といわれると疑問で、宮崎駿が我を通して、作品を作り続けるから、名作を見続けることができるともいえるわけです。

ナウシカのラストだって、ナウシカが旧人類へのバトンタッチを受けて、旧人類にバトンタッチされたら、また戦争して逆戻りになる可能性もありますからね。

細田守監督は素晴らしいクリエイターですが、ジブリ作品のような心に響くようなメッセージ性のある作品を投入しつづけることができたかどうか?

 

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緩やかな絶滅を選ぶエゴと宮崎駿のパーソナリティ

  • 周りを生かし続けるということを考えると、緩やかに人間性や作品性がダメになっていく可能性
  • 周りはやがて絶滅するけど、いまできる最高の作品を投入して世に投じることができる可能性

宮崎駿はおそらく後者を選択し続ける人なんだなぁとナウシカの時点で、確認させられました。

もともと左よりの考えの人といわれ、「風立ちぬ」では妻さえも巻き込んでも自分のやりたいことをやり通すを公言していましたが、いやいやナウシカの時点で、パーソナリティはそこにあったことがわかりました。

社会とか世界とか平和とか外のテーマで読んでもナウシカは面白いんですけど、間違いなく宮崎駿の純度100%の作品をみれるのは、漫画のナウシカぐらいではないでしょうか。

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