10月31日、雨穴氏待望のミステリー小説の最新作の「変な地図」を読むことになったので、その感想を述べる。
電子書籍で448ページにわたる大ボリュームだ。
発売日に日付が変わると同時に、アマゾンの電子書籍で購入、そこから深夜読み進め、10月31日の15時ぐらいに読み終わった。
仕事が休みだったのが、幸いだった。
とういことで、読み終わった読後感のままに書籍レビューをする。
もちろん、発売日当日なので、ネタバレはしないが、完全に1ミリも話をしりたくないのであれば書店で購入、電子書籍で読んでいただいたほうがいい。
一応ネタバレ記事は別の記事で書きます。
過去の雨穴氏の書籍、動画をまとめた記事はこちらより
「【完全解説】(書籍・動画) 雨穴『変な家(全新録)』あらすじ・黒幕考察|左手供養の真相と片淵家の呪い」
【最後の5分ですべてがひっくりかえる】差出人不明の仕送り 雨穴先生作品レビューと感想 ネタバレあり
雨穴氏 noteで最新作製作に対する苦悩と労力を語る なぜ雨穴氏は作品を描き続けるのか?
【雨穴ホラーミステリー】あの日、彼らは何をした ネタバレ極力なし レビュー ファンが待ち望んだ新作について 今までとどう違う?
「変な地図」の評価 良質な2時間のサスペンスドラマを見た読後感 オカルト、ホラー要素は弱め
変な地図は450ページにおよぶ大作だが、随所に図解がちりばめられており、重要な情報については、太字でまた登場させるなど、物語の本筋から読み手を迷子にさせない配慮がされている。
ということで斜め読みや、本を読むことに抵抗のない人なら3時間ぐらいで読み終わる内容になっている。
3時間無我夢中で読めたと思えば、1500円の出費は完全に元が取れている。だからおすすめだ。
あと、久しぶりに本をがっつり読んだが、自分のスピードで自由に読み進められるコンテンツって、自由だなって思った。
コンテンツの自由度で言うと
本>>>>>>アニメ、映画>>>>>ゲーム
になる。
まだ「変な家2」を現在進行形で読んでいるので、過去の書籍を比較すると
変な絵>>>>変な地図>>>変な家(初代)
だと思う。序章から終章に至るまでのスピード感、完成度、なにより犯人の生きざまがかなり衝撃的である点を含めると、「変な絵」は完成度が高い。なにより動画での冒頭の雨穴さんの説明も読みたいと喚起させられる。
変な地図はウェルメイド(よくできた)作品であるし、ものすごいリサーチや長期間の文献や文章表現など、雨穴さんの努力がにじみ出ているのはわかる。
しかし、読み終わった後はネタバレにならない範囲で言うと「なんかガリレオっぽい」
ちなみに筆者は推理ドラマの中でも、「ガリレオ」は全部見たし、ミステリードラマの中でもトップクラスに好きなので、嫌味ではなく評価が高いからあげている。
いままでの雨穴さんの作品も、オカルトや超常現象が実は合理的、理屈的な理由で生まれていましたって作品が多かったが、でもどこかに「これって本当に音量が絡んでるんじゃない?」って怖さを考える余白があった。
最近で言えば「あの日、彼らは何をした」が見続けてつねに背中がゾクゾクとさせられた。
変な地図は完成度が高いゆえに、欲も悪くもその余白がなかった。「もしかしてあれは○○じゃなかったのでは?」とこちらが恐怖する要素が薄かったのだ。
変な地図では、閉鎖的な田舎…が舞台になっているため、張り詰めた空気、よそよそしい孤独感などはあるのだが、背筋がゾクゾクとするような緊張感が薄かった。
変な絵では「この怖い不気味な絵は何につながっているんだろう…」こっちが勝手に恐怖を膨らませるが、蓋を開けてみるとそんなたいした理由ではなかった。しかし過程は非常に恐ろしい思いをしたので、満足感がある。
一方で、変な地図は、雨穴氏特有のいろんな謎画像が登場するが「なんだこれ、不気味で恐ろしい」って感覚はあまりなかった。
私は30代中盤のおっさんで、深夜になっても怖いホラーとか見るとトイレに行くのが億劫になるのだが、そういう感覚もなかった。
怖ければいいというわけではなく、怖い=現実であるかもしれない鬼気迫るリアリティを出せているという評価だと思っていただければいい。
「【完全解説】(書籍・動画) 雨穴『変な家(全新録)』あらすじ・黒幕考察|左手供養の真相と片淵家の呪い」
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「変な地図」 ミスリードがやや不親切、どんでん返しが弱め
雨穴氏といえば、叙述トリックや大どんでん返しといった、後半に一気に伏線回収だったりを行うテクニックにも優れた作家だ。
個人的にいくつか雨穴氏の作品を見てきたが、「人間の業」を描いたラストでもあるし、人によっては喜怒哀楽の感情を揺さぶられる内容だったと思うが、自分の想像をはるかに超えるような衝撃はなかった。
また、読者が○○だと思っていたのが実は○○でしたってミスリードもあるけど、正直、ミスリードが全く持って悔しくない。
優れたミスリードというのは、読者が「あの時のこれああだったのか、気づけていたのに」という悔しさがにじみ出るものだ。
しかし、今回の「変な地図」に対しては、確かに伏線的なものや、凝視すれば気づける関係性はあったかもしれないが、本当にわからないように周到に周到に目立たなく書いているもので、「そりゃ気づきませんわ」と白旗をあげるようなものだった。
あと、ミスリードを発見したとしても衝撃的だとは思わなかった。「あぁあのキャラはあのキャラだったのね」という感覚だった。
伏線のはり方についても、最終章で丁寧に回収をしてくれるのだが、伏線をはるための説明描写というのものが多く、これは前述したが「じゃああれはなんだったんだ?」って読者が想像する余地がない。
また、伏線をはりすぎて、最終章は余韻に浸れるところがなく。雨穴さんの作品って、感情を揺さぶりまくる作品が多いけど、それが少なく感じた。
多分動画であれば、雨穴さんが意図的に間をつくることができるが、本になるとこっちが、読みたい情報だけ読んで、どうでもいいと判断する情報は読み飛ばすことができるからだろう。
「変な地図」 栗原の成長物語として雨穴ファンにとってはマストな1冊
変な地図単体の評価としては、「良質なミステリー2時間ドラマ」。
おそらく、変な家に比べると実写映画化はしやすいと思う。変な家の実写映画もかなりヒットしたみたいだから、可能性は高いと思う(2~3年後になると思うけど)
でもそれは雨穴氏に求めているものではなかった。
一方で、今回は雨穴動画常連の設計士の「栗原さん」の就職前の時代ががっつりと描かれる。
変な絵みたいにファンサービス的に出てくるかと思いきや、本当にがっつりでてくるし、本当に主人公だったのだ。ほぼ8割は栗原だ。
相変わらずの推理力ではあるが、あまりにも栗原にとっては困難な事件だったり、栗原と同レベルの頭脳をもった人物の隠したトリックを掘り起こすため、栗原も相当難儀している。
そして、この「変な地図」では栗原が家族のある人物との関係性を見つめ直す…ということに焦点をおいた作品であり、ヒューマンドラマとして栗原の成長をみるという点でも、面白い作品だと思う。
ただ、おそらくその栗原の個人的な成長を入れることで、ドラマ性が増したともいえるし、雨穴氏に対してひたすらトリック、ミステリーを求めている人にとっては蛇足になりかねない内容とも言えてしまう。
というわけで、読んだ感想になる。
「変な家」であれば雨穴さんでなくてもとにかく読んでみてほしい1冊だった。
「変な地図」は駄作ではないが、傑作、何年も記憶に残るというレベルではなく、雨穴さんは動画でかなり素晴らしいミステリーを無料で提供していることで、逆に1500円の書籍と比べられる宿命を背負っているといえる。
ここまで知名度を広げた方で、ミステリー業界に風穴を開けているのは間違いないので(本読まない私も読むぐらいなので)
雨穴という名前だけで、今後も書籍は読まれるけれど、超売れっ子だからこそ、過去のヒット作と比べられるという宿命を背負っているのだ。
今回の変な地図はその宿命を打開するまでに至らなかったと思う。
冒頭で書いたが、とにかく図解など、読者を迷子にさせない配慮が本当に素晴らしい。中学生高校生でも読み進められるぐらいの内容。それはレベルが低いのではなく親切であること。
読み手のことをここまで考えられる作家はいない。情景描写を必要以上に書いて、読み手を困惑させる作家が多いことを考えると、すべて雨穴さん水準の書き方を作家ができれば、読書ブームは再燃すると思う。
でも新作が出れば、2,3000円でも絶対に買う。
「【完全解説】(書籍・動画) 雨穴『変な家(全新録)』あらすじ・黒幕考察|左手供養の真相と片淵家の呪い」
【最後の5分ですべてがひっくりかえる】差出人不明の仕送り 雨穴先生作品レビューと感想 ネタバレあり
雨穴氏 noteで最新作製作に対する苦悩と労力を語る なぜ雨穴氏は作品を描き続けるのか?
【雨穴ホラーミステリー】あの日、彼らは何をした ネタバレ極力なし レビュー ファンが待ち望んだ新作について 今までとどう違う?
