おそらく、日常生活をするうえでは、あまり活用されることはないかもしれないが、表に出ないからこそ気になる「ヤクザ」の社会や実体。刑務所に3回入り、ヤクザ歴20年以上で、人気のYOUTUBER、懲役太郎氏が宝島社より、書籍を出されました。それが「ヤクザの裏知識」。非常に面白い内容だったので、レビューします。
過去にYOUTUBERで有名になった人を取り上げている記事を書いています。よろしければ参考にしてください。
書評 金学トップYOUTUBER 両学長 本当にお金の自由を手にいれるお金の大学
YOUTUBEをビジネスとしてやる気があるなら俺に聞け!! 1GAMEてつ氏の渾身の一冊を読んだ感想
私も、底辺YOUTUBERとして細々と活動しています。よろしければ動画みてください。
素朴なヤクザへの疑問を解決 ヤクザはどのような組織で成り立っていて、どのように稼いでいるかが体系的にわかる
ヤクザの裏知識は、ヤクザがどのように収益を得ているのか、下っ端のヤクザがどのような雑務を日ごろこなしているのか、というヤクザの日常を懲役太郎さんの話のうまさで、解説されています。
シノギに関しては、飲食店の場合、ヤクザそのものが商売するわけではなく、金を出したり、貸したりすることで、毎月回収していくってのが、シノギの基本みたいです。
かき氷やたこ焼きがもともとヤクザのシノギで、確かに子供ながらに氷にシロップをかけたものを200円、ひどいときは300円で売るのは、不条理だな・・・って思ってました。
また、稼げるヤクザは組の中ではなく、組を辞めさせて表向き関係のない状況を使って、シノギを入れさせるという方法をしないと安定的に稼げないみたいです。
いくつもエピソードがあるのですが、YOUTUBEで公開されているものから、未公開のネタまで、綺麗に起承転結まとまって、最後にはちゃんとオチまでついています。
ヤクザが使用する専門用語だったり、寺銭の語源や由来といった、ちょっとした歴史、トリビアが学べるのもよい体験でした。
後先考えない上司を持つと苦労して、辞めたくなるのは、会社員もヤクザも一緒
普通の仕事やヤクザの稼業で似ている部分を発見するのが、面白かったです。
兄貴分が、銃を持って待機していろという指示にちゃんとした理屈や理由や、後始末の説明も何もなかったりして振り回されるエピソードがありました。
現実でも、面倒見が悪かったり、仕事の理由についての解説が欠けていて、迷惑をかける上司が多いし、そういう時に「仕事辞めたいな~」ってため息をよくつきます。
ただ、ヤクザの場合は親や兄貴分の命令が絶対なわけで、それが命のかかった交渉である可能性もあります。無理難題とわかって、指示する親がいても逆らえないというのは、理不尽や不条理に敏感な若者が、入りたがらない一つの要因ですよね。
指詰めのルーツ なぜ偉い人ほど指詰めしている人が多いのか?
ヤクザといえば、一般人が気になる項目の1つとして「指詰め」がありますが、本書ではその解説もしっかり起源から、やる理由、そして現在での扱いに至るまで、解説されています。
現代では、親や兄貴の命令で指詰めになった、若者が警察に駆け込むと使用者責任で、組織は壊滅状態になります。
ちなみに、若者に限らず、組織の幹部でも指詰めしている人が多い理由として、頭を下げないかわりとして、指でどうだと相手に了承をもらうためだそうです。
そして、懲役太郎さんは、指詰めの状況になったとき、なぜそのような状況になったかをしっかり説明したため、指を詰めた経験がないとのことです。
なるほど・・・話術はYOUTUBERを始める前から磨かれていたのですね。
ヤクザ情報発信者として、転換された懲役太郎さんのクレバーさ
現在の懲役太郎さんは、ヤクザ関連の話をメインとして話されていますが、名前や動画のことを「面会時間」と表現していたことから、当初は、刑務所の人間関係、エピソードがメインでした。
ただ、刑務所の話というのは、書籍に出すとしてもホリエモンという先駆者がおり、歴としては圧倒的にヤクザの方が長い。
そして、ヤクザの仕組みとニュースとの親和性が高いため、現在ではヤクザ社会の解説者の方に重きを置いている印象です。
トップシークレットだった、ヤクザ内部事情の話も今は、ほぼ9割以上本当の話がネットで流れているようです。
2020年ヤクザがオワコンになって起こる問題について 法律と経済という本当の暴力
懲役太郎さんは、最後の章で「ヤクザのオワコン」について書かれています。
暴力団対策法などが、ありますが、特定の場所に4~5人集まることを規制するだけで、組織を壊滅させているわけではありません。
では、なにが一番か?それは普通の民間企業と同じように経済力と締めくくられています。
殺人による懲役刑も長くなり、細かいことで使用者責任が問われるようになり、そもそも抗争して儲けられるわけでもなく、シノギの種類も非常に狭まったということです。
それによる影響として、ヤクザを追い出された50代の元ヤクザの人たちは仕事を探すことが非常に難しくなります。
特に懲役太郎さんと同じ50代でヤクザを続ている人は、うまく時代の流れに乗って稼業を継続しているか、社会のこぼれ者となって、罪を繰り返したり、凶暴化したりする可能性もあるといいます。
若い人間がヤクザをやる時代は終焉を迎えようとしており、ヤクザの高齢化と経済悪化による自然消滅という末路が待っているわけです。
ただ、懲役太郎さんが懸念されるように、中高年でまだ貯えを持たなければならない、元ヤクザの方々の社会復帰を考えなければ、行く行くは社会保障費に大きく影響を及ぼします。
日本だけの問題ではありませんが、法律というのは、厳罰化だけでなく、厳罰後のフォローアップ、例えば、ヤクザをとりしまる代わりに、ヤクザをしている人の社会進出を支援する政策というのが、一体になっていなんですよね。
人の命令に実直だったり、いい意味でレールから外れることができる度量というのは、社会でも役立つ場合があるでしょう。
非常に素晴らしい本でした。「へぇ~」「すご~い」と小学生並みに参考になる話ばかりでした。実社会と照らし合わせながら、読むと楽しめると思います。
あと、YOUTUBERの本って、「YOUTUBEってすげぇプラットホームなんだぜ」「私はYOTUUBEで救われました」というYOUTUBEとのなれそめに容量割いている人が多いんですよ。もちろん懲役太郎さんも、YOUTUBEに感謝されたんですが、本書の内容は、懲役太郎さんの考えや経験が9割9分なので、YOUTUBE本の中で、一番密度が濃いといえます。