今年最も注目される邦画の一つであることは間違いないでしょう。
新海誠による最新作
天気の子
前作、口コミとマスメディアにより大ヒット、ロングランを飛ばした「君の名は」から3年の待望の続編。
前作は、「転校生」など昔からあった男女入れ替え物語をベースに、コメディとちょっとしたラブロマンスで終わるんだろうな~と予想してからの、後半の展開・・・これは、本当に唖然とさせられました。
SF要素満載で、一部の人間からは批判でありましたが、逆転させ、ハッピーエンドに強引にひっくり返した意欲は、初期の新海作品では考えられない展開でしたので、この脚本の「ごり押し」ぶりが、「君の名は」のダイナミズムで飽きさせない物語にさせた要因だと思われました。
今回は、まだ公開間もないので
前半で感想・・・いわゆる非ネタバレ
後半は、ストーリーに対して突っ込んでいくネタバレ全開(前半公開後から2週間後にアップ予定)
これら2部構成で語りたいと思います。
(小説を読むと気づかないディティールが判明しそうです・・・いつか読みたい)
絵に関して、前作から3年経過して、3Dグラフィックが積極的に使われるきらびやかな東京と、汚しを徹底的にいれた深夜の汚い東京の対比が素晴らしく表現されていました。
雨が一つのテーマになっているので、降雨の描写に注目していました。
これも6年前の「言の葉の庭」から進化していて、弾力や粘りのあるような雨水や、水たまりの表現が非常に印象に残ります。
キャラクターに関しては、なぜ新海監督は10代後半の女性をあれだけ活き活きと、かわいく、時に妖艶に描けるのだろう・・・と感心するばかりです。
ただ、夏美とか、「君の名は」のラストの大人になった三葉など・・・大人の女性を描くとなると、すごく大人しく、キャラとしての魅力が激減するんですよね・・・
宮崎駿 幼女のダイナミズムは別格
細田守 ヒロインに魅力がない・・・異性を魅力的に描くことにあまり特化していない
新海誠 初期は女性は神秘的な存在としてリアリティがなかったが、「君の名は」から10代中盤から後半の女性が魅力的で、美しく描かれる・・・・
どちらが良い悪いではなく、単なる感想です。
「君の名は」でも三葉が正装するシーンが、ぐっと大人っぽくなってドキっとさせられるのですが、今回のヒロインである陽菜にもそんなシーンが実際あります!!こうご期待(笑)
さて、ちょっと変な方向に話がよってしまいました・・・
描写だけでも長時間語れる映画ですね。
会話の間も、かなり自然っぽくなっていますし、序盤は冗談とか、ツッコミなどの応酬もあるため、家族でも恋人でもみやすくなっています。
声優に関しては、ほぼ俳優で構成されています。
うーん・・・抜群に印象に残った声優がいたわけではなかったですね。
公開前は本田翼に批判が集中したのですが・・・小栗旬のキャラが一番複雑で、おいしいポジションで、見ながらずっと
「これ、藤原啓治や平田弘明、山寺宏一ならさらにすごいキャラになっていたな・・・」と思ったり・・・
本田翼はデッドバイデイライトの腕がいかされたシーンがあります・・・クライマックスをお楽しみに。
平泉成にいたっては、ドラマの人情刑事をそのまま引っ張ったもので、これならわざわざ大御所俳優を起用する意味ってないと思います。
市村正親がミュウツーやるから面白いでしょ~
ネタバレにならない程度のストーリー構造の紹介
ただ、完全に真っ白な状態で見に行きたいという人には、作品評も入っているため、回避を推奨します。
ちなみにウィキペディアは強烈なネタバレになるので、回避推奨・・・
また、作品の性質上、「君の名は」との比較が数多く盛り込まれています。
まず、「君の名は」は
SFコメディ展開→SFシリアス展開
物語の男女入れ替えの時点で、フィクション性の強い作品になっています。
一方で、天気の子は
現代劇シリアス展開→SFシリアス展開
となっています。家出少年と、家庭の事情でほぼ孤立している少女が出会って、友情から愛情へと変わっていきます。
天気の子に「退屈」というレビューが散見されますが、これはシリアスな展開からそのままシリアスな展開と、展開のメリハリがあまり感じられないからだと考えられます。
そして、主人公帆高は、正直感情移入できるキャラではないんですよね・・・
また、冒頭は現代劇ではあるんですが、主人公とヒロインが家族を介さない非日常な生活をしています。
「君の名は」は、ある出来事によって喪失された日常を取り戻すという誰もが共感しやすいテーマがあります。
「天気の子」はあくまで、主人公とヒロインの非日常にスポットをあてているため、「他人を犠牲にしてでも手に入れる恋愛」という恋愛の本質を突くようなベースではありますが、共感性が乏しく、「ちょっと置いてきぼりにされた」という感覚を持ってしまいます。
クライマックスの主人公の行動に共感できるかどうか・・・そもそも冒頭の主人公が東京でとった行動にも共感できるかどうか・・・
長編映画における主人公のパーソナリティとバックボーン。そしてそこに共感できるか?これは映画の内容に大きく関与します。
「君の名は」をベタ褒めしているように見えていますが、あの作品もつじつまを強引に突破する神秘的要素を盛り込んでいます。しかし、それがフィクションの力といえるものになっています。
後編では、天気の子のクライマックスから僕が感じたことを中心に語っていきます。冒頭でお伝えした通り、ネタバレ全開になります。