突如、無料でKONAMIからリリースされたSILENT HILL: The Short Message をやろうやろうと思っていたが、ゲームを全く遊ぶ気持ちになれなくて
しかし、これはサイレントヒル2のストーリーに心惹かれていた自分は、どうしてもこのゲームを遊ばなければと思い、プレイした。
リリースから時間が経過しているので、ストーリーのネタバレと個人的にアレはなんだったのか?という考察を含めてやっていく。
1周しただけなので、おぼつかない点や、私個人の体験を過分に含む点はあるが、一人の個人的な感想だと思って許容していただきたい。
SILENT HILL: The Short Message 登場人物の関係性 ネタバレあり
舞台 ケッテンシュタット
ドイツある都市で、2度にわたる中国、日本の再開発計画があったが、リーマンショック、コロナショックによりとん挫
その結果、町の企業は多く倒産し、多くの失業者と社会不安が起こる。
児童虐待発生率が欧州先進国平均と比較して、2倍
また10代の若者の自殺が相次ぐ廃墟マンションも存在し、本作の主人公が迷い込む場所ともなっている。
アニタ
おそらく18歳
本作の主人公であり、プレイヤーは彼女の視点を通して物語を読み解く。
長髪の黒髪にメガネで、肌は荒れており、地味な見た目と引っ込み思案な性格をしている。
高校ではマヤ、アメリという友達がおり、マヤに呼ばれて、廃墟マンションに迷い込む。
廃墟マンションの中で絶望し、命を落ちしても何度も同じ場所に連れ戻され、脱出することもできなければ、命を落とすこともできない状態になっている。
幼少期に母親から虐待を受けており、兄が冷蔵庫に閉じ込められそのまま死亡。近隣にかけつけ、母は逮捕、自分は保護してもらうことになったが、その幼少期のトラウマがいまだに彼女の精神をむしばんでいる。
物語後半で実はマヤとはあまり深い関係ではなく、絵の才能があり、自分の唯一の信用のアメリを奪おうとするマヤに嫉妬を抱き、彼女の自殺のきっかけを作ってしまう。
アメリ
容姿端麗で、大学に通うだけの学力もあり、大学の進学をきっかけにケッテンシュタットを出る。
アニタとは頻繁にメッセージアプリでやりとりしている。
誰にでも分け隔てなく優しい性格で、マヤにも信頼されていた。
アメリのトラウマ、問題について露骨に描写はされていなかったものの、マヤがグラフィティの腕の部分に桜を描いている点。
アニタはリストカットしている手首に桜を描いていたが、アメリもまた腕の部分に大きな謎が隠されている可能性がある。
マヤ
本作のもう1人の主人公
日本人(日系人?)でアニタの回想に実写として登場するが、その口パクは明らかに日本語を話している。
CB(チェリーブロッサムの略)で、廃墟マンションにアートグラフィティを描いており、SNSでもかなり人気がある。
人物画を描き、身体の一部に桜の花と枝を描く。描きたいのは「女の子たちがうちに秘めた衝動や欲求」
愛する彼氏と別れてしまったことや、激しいいじめも要因となって、自〇を選択する。
アニタの母
夫を失ってから、家族を守り、家族を守るために新しい男性を探そうとするが、2人の子供を持つシングルマザーということが、理由となって、新しい相手を探せずにいた。
(正常と思われた時点でも、薬を服用していたことから、精神的にやんでしまう片鱗がこの時から見られる)
そのフラストレーションや責任の矛先は、やがてアニタと兄妹に向けられる。
アニタの精神世界の中で、彼女の部屋はみるみると汚くなり、ゴミは放置され、ゴキブリは徘徊し、母の服薬する薬の量も増えていった。
SILENT HILL: The Short Message 桜のクリーチャーの正体について
ショートメッセージはプレイ時間およそ2時間程度ながら、描き切っていない箇所が多々見られるため、かなり考察の余地がある。
その中でもやはり気になるのが、アニタがみている裏世界の存在と、そこでアニタを〇しにくるクリーチャーの存在だ。
この桜のクリーチャーの見た目は、上半身から下半身にかけて桜が咲き乱れており、表情を見ることはできない。全身に鉄線でまかれたような姿になっており、生足を出している。
これはマヤ自身の怨念であったり、マヤのいじめの遠因となったアニタの自責の念が生み出したクリーチャーなのでは?という考察が一般的なものと思われる。
一方で、アニタは2周目の時点ですでにマヤに対する後悔、謝罪を発しており、3週目では母との虐待を正面から向き合ったうえで出現しているので
サイレントヒル2のレッドピラミッドのように、アニタが畏怖するものを集合したものが、桜のクリーチャーという考察もできる。
劇中で語られていたように、東洋の魔女が生み出した神秘的なクリーチャーなのかもしれないが
個人的に、人を自〇に追い込む、責任やトラウマの象徴というように感じられた。
その詳細について次章であらためて語る。
廃墟マンションの正体とアニタの深層心理について
アニタが閉じ込めていた深層心理が把握できる箇所がある。
ゴミだめのなかに捨てられたメモ書きに、マヤへの心情を吐露したものが見つかる。
ここでアニタは、マヤに対して自分にはない絵の才能について罵倒して、周りと同じ「よそもの」と呼称し、アメリを奪った(アニタの思い込み)ことを罵っている。
この廃墟マンションは、アニタが自分が生きるために、心の奥、深層心理に閉じ込めておいた不都合な事実やトラウマを詰め込んだ世界であるということがわかる。
しかし、サイレントヒルの世界なので、マヤにとっても不都合な事実、アメリにとっても不都合な事実が描かれている可能性がある。ほかのサイトで、マヤは妊娠していたかもしれない、アメリも家族間で問題があったことを指摘するものも見られた。
我々も長い人生を生きるための処世術として、自分にとって都合の悪い事実やトラウマをふさごうとすることもある。
しかしながらアニタのように、友人の死というショックに遭遇することによって、押しとどめていたトラウマや事実が一気に噴き出し、自分の感情をコントロールできないということもある。
アニタの身体がそのまま廃墟マンションに導かれた可能性もあるが、アニタの脳内でもマヤの死を責め続ける自分と、自分は関係がないという自分とせめぎあっているのかもしれない。
桜のクリーチャーは直接、アニタの命を奪っているわけではなく、アニタを生涯、トラウマや不都合な事実の世界にとどめようとしている。
SILENT HILL: The Short Messageが描く現代の裏世界について
サイレントヒルのキーアイテムとしてクリーチャーの登場を告げる「ラジオ」というアイテムがあったが
ショートメッセージでは、ラジオの役割はスマホに置き換えられている。
裏世界に到達すると、スマホから激しいノイズがあらわれ、スマホの画面からマヤやアニタの母?らしき人物が映し出される。
スマートフォンというのは、自分の見たいものだけを見れる欲望の装置であると同時に、自分そのものでもあり、現代人にとって第三者に自分のスマホの情報を見られることは、社会的な死につながる場合もある。
廃墟マンションでは、アニタの見たくない事実、トラウマが描かれていたが、スマホでは対照的にアニタの欲求などが反映されていたのでは?と考えられる。
SNSで自分の絵や、自分の自撮りさえも公開していたアニタ。
果たして、マヤやアメリのやりとりも本当なのだろうか
1つを疑うと1つがまた怪しくなるまさにプレイヤーさえもサイレントヒルの濃霧に引きずり込まれるような作品だ。
少なくとも、今後のサイレントヒルにおいて、スマホはより重要なアイテムとしてかかわってくることは間違いないだろう。