前回に続き、九条の大罪の紹介と書評になります。
エピソードの簡単なあらすじ、登場人物の紹介、そして結末を読んだうえでの筆者の感想になります。
このブログは、裁判員経験者の筆者が、法廷や金融ドラマについて語っていく記事を紹介しています。よろしければほかの記事もお読みください。
九条の大罪 1巻 書評 片足の値段・弱者の一分 法律は人の権利は守れるが、命は守れない
元裁判員経験者として裁判員をやるメリットとデメリットを含めた感想 なぜ辞退率が7割でやってよかったと思う人は9割なのか?
裁判員経験者として、東京新聞より取材を受けて考える 18歳から裁判員になる危険性はあるのか?
九条の大罪 家族の距離 九条の師匠といえる2人の弁護士
とある理由で、主人公九条は、前巻で関係のあった金本の犬を引き取ることになりました。名前はブラックサンダー(笑)
九条は離婚した元嫁の性で、もとは鞍馬(京都の地下鉄で鞍馬口があります)という名前で、父と絶縁して、元嫁の性を名乗り続けています。
九条には2人の師匠となる弁護士がいます。
流木信輝(ながらぎのぶてる)
人権派の弁護士で、依頼人の話をしっかりきくことを信条にしており、すべての被告人は平等にして、最良の弁護を受ける資格があると考えています。
山城祐蔵
九条が見習いの時に世話になった弁護士。民事よりも(離婚など)スピードがはやく、相手が困って言い値になりやすい刑事事件を複数扱っています。
表では虚勢をはっており、昔は人望も厚く、九条も含め同業者に尊敬されていましたが、投資などに手を広げ、失敗した損金を反社に穴埋めしてもらったことで、ずぶずぶの関係になり・・・
昔は信念をもった弁護士でしたが、金を稼ぐことを目的として方向転換。本心は孤独で、九条を子供のようにかわいがりますが・・・・
九条の大罪 九条の家族 絶縁した父と息子のように慕う山城
九条は会えない息子の誕生日を個人的に祝い、父の命日だったので、勘当された父の墓前に花を供えます。
そこに現れた、兄の鞍馬蔵人(検事)と偶然出会います。九条間人(たいざ)が司法試験に5回落ちたことや、裏社会の弁護を引き受けていることを激しく非難します。
銀座のクラブで、山城に呼ばれた九条は、介護施設を経営している菅原遼馬を紹介されます。
九条は山城と2人きりで飲むようになり、山城に弁護士とは?と問いかけられこう答えます
「法律の勉強は富士山のように綺麗な思想。だが実際は富士の麓は自〇の名所。青木々原。暗いくらい森の中」
これは、山城の受け売りみたいです。
家族の距離 師匠との決別 依頼人の利益
九条事務所のもとに、コンサルティング会社を経営している家守という女性から依頼が入る。
家守の父は資産家で、介護施設にはいっていましたが、認知症を患っており、社会法人に4億遺贈しますと遺言を書かされたと、家守は訴えます。
家守の父が入居していた介護施設の代表は菅原、弁護士は山城で、山城が遺言状を書かせたとさらに訴えます。
九条は山城の名前を聞いた途端、すぐに依頼を断ります。
弁護士は顔が見える村社会のため、同業者を訴えたがらない。顔が利く山城と争うことを回避する弁護士は、家守の依頼を断り、たらい回しにされます。
九条も山城と親交があり、利益相反のおそれがあり、即断りました。
しかし、九条は尊敬していた山城が堕ちている状況を許せない気持ちがありました。流木に相談をし、改めて弁護士は法律をしらない依頼人の利益のために、尽くすべきだろうと考え、山城と直接対峙することになります。
九条の大罪 介護ビジネスの未来 崩壊する高齢社会
場面は変わり、菅原の介護ビジネスの話に。
菅原は介護サービスをビジネスと割り切っており、入居者を施設に囲い込むことで、在宅移動のコストカット、入居者が死ぬまで利益が得られます。
しかし、サービスは劣悪で、作り置きの冷めたカップ麺、レトルトカレーを1500円で食べさせる、暴利と虐待。
さらに、いうことを聞かない老人を胃ろうにするなど、完全にアウトな行為も。
スタッフは過去に、家守の態度に怒ってろっ骨をおってしまいましたが、寝たきりになって要介護があがり、報酬があがって会社の利益があがったことで、菅原に褒められたという過去も。
家守をおもちゃのように扱っていたスタッフは、家守への虐待動画をスマホに保存するが、リスクを考えた菅原にキレられ、スマホを処分されます・・・
しかし、一方で介護士の環境も劣悪で、どれだけサービスや仕事量を増やしても、見合った給料が得られないという側面があります。
戦闘開始 工作をする山城と偽造を暴く九条
九条は山城に宣戦布告します。
意思疎通ができなかった家守に遺言を書かせたとして、「有印私文書偽造」で刑事告訴すると。
山城は、遺留分相当額という、遺言状の内容に問わず、近親者に相続財産の2ぶんの1を請求できることを提案。しかしながら、依頼人の娘が全額を要求しているので、九条は山城の提案を拒否します。
しかし、山城は百戦錬磨なので、家守が遺言を書いている状態を動画におさめています。担当医師なども丸め込んでいます。
そのため、九条は裁判で長期的に戦うよりも、示談に従ったほうがいいのでは?と依頼人に提案します。
山城の美学は「戦わずして勝つ」。法廷まで進めば、何かしらアラがでたり、うわさが出てしまうので、示談の時点でけりをつける。
一方で、九条も同じ言葉を引用しつつ、用意周到な工作をするということは、裏があると踏んでおり、山城にたいして「戦う前に負けている」と評価。
自動車整備工場の社長ながら、半グレとして行動している壬生。
壬生の後輩が、菅原がケツ持ちしているクラブに強襲し、落とし前をつけるために、500万円を用意しなければなりません。
場面変わって、菅原に鬼電される山城。菅原から「ニュースを見てくれ」といわれて、目にしたニュースは・・・・(3巻に続く)
九条の大罪 家族の距離
タイトルの通り、家族といっても絶縁したり、離婚したり、死別することによって物理的な距離があり、その距離を考えさせるという内容にもなっています。
さらに、親子同然といってもいい九条と山城の弁護士としてのスタンスの違い(距離感)にも焦点があたっています。
それにしても、師匠と弟子の直接対決なんて、熱い展開を2巻の時点でもっていくなんて、真鍋先生の熟練さがすごいです。
あと、コマ割りのメリハリや、重要なセリフをつぶやくまえの間の使い方がうまく、自然にストーリーに没入することができます。
僕は年齢を重ねて、物語を読むことが面倒になって、漫画もかなり読めなくなってしまったのですが、九条の大罪はすらすらと読めて、楽しいです。
介護ビジネスの裏について
今回のテーマは、介護ビジネスですが、社長をしている菅原が、かなり極悪な人間で、半グレがそのまま介護ビジネスしているという構図になっています。
そんなのありえないって思うかもしれませんが、今後、高齢者がどんどん増え、有権者に高齢者が多く、社会保障にお金を回す以上、国で包括できる内容が薄くなって、民間にどんどん介護が委託されていくのは、予想しやすい未来ですね。
今回の依頼者は、比較的富裕層ですが、富裕層でも介護というのはめったに訪れない困難のため、手にした情報や助け舟をだされた介護施設が、搾取重視の施設であったら、気づくことも難しいでしょう。
日常的ではないにせよ、施設内の暴行などもニュースで報道されることもありますね。
私も親を介護施設に送るとすれば、良質な施設に送れるほどの経済力や、情報を持ち合わせていませんので、身につまされます。
介護施設の虐待に関しては、やや誇張的な表現もありますが、読んでいて「うわーうしじまくんしてるな・・・」と恐怖しましたね。
九条の大罪 1巻 書評 片足の値段・弱者の一分 法律は人の権利は守れるが、命は守れない
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