世界スーパーバンタム級4団体統一世界王者防衛戦で、井上尚弥チャンピオンが、挑戦者のドヘニー選手を7ラウンドTKO勝利でした
まさに圧倒といえる内容で、憂慮された、ドヘニーの一撃を全くもらわず、ドヘニーは腰?足?だけでなく顔もかなり傷が見られた。
井上尚弥VSドヘニー 試合全体の攻防について
序盤の5ラウンドあたりまでは、井上尚弥選手はあまり攻めることなくドヘニー選手の強打を待っていた。
ドヘニー選手も井上選手の一撃を警戒しながらも、フットワークをからめながら、技巧的な一面を見せた。
1ラウンドは、井上選手が全く手を出していないにも関わらず、さすがモンスター井上のプレッシャーなのか、自然のロープ際に追い詰められていたドヘニー選手だったが、足をからめてなんとかリング中央で戦うように工夫。
攻めていかないと挑戦者は不利なため、強打を交えながら攻撃するが、ドヘニー選手の大振りのストレート、フックに対して、井上選手は抜群の動体視力により完全にガード。
L字ガードなども時折見せており、スタンダード選手の極みとして、階級があがって、ドヘニー選手レベルのパンチ力を持つ選手との対戦を想定して、どのように試合を作っていくかという課題をもって取り組んでいたように見える。
5ラウンド終盤から積極的に井上選手から攻めていくようになる。解説からも井上選手は、ドヘニー選手との距離感を把握したとのこと。
ドヘニー選手はフットワークからの一撃が減り、井上選手のラッシュに対して防戦一方になる。自分から仕掛けるときは強烈な一撃を与えることはできても、井上選手の的確かつ高速な攻撃に対して、カウンターをあわせることは難しい。
6ラウンド終盤は、ありとあらゆる技術をつめあわせたラッシュで、ドヘニー選手のあらゆる箇所を攻撃。これが結果的に7ラウンドのTKOにつながる。
7ラウンドも開始直後に井上選手がチャージして、ラッシュ。
6ラウンド終了時に背中の違和感をみせていたドヘニー選手がそのまま背中を抑え、試合は続行不可能になり、TKO勝利に。
ドヘニー選手はトレーナーに引きずられて、自分で歩行することが困難な状況になっていた。
井上尚弥はなぜ対戦相手にとって恐ろしい存在なのかを知る試合になった
今回の試合、ドヘニー陣営は失うものもなく、キャリア終盤に差し掛かったドヘニー選手が、決死の一撃を食らわせることを期待したのだろう。
しかし、試合序盤でドヘニー選手はすでに井上選手のパンチにおびえ、距離をつめることが困難だった。井上選手も常に自分に有利な距離感を維持しながら「いつでもKOできるぞ」と宣言するような自信に満ち溢れた試合運びだった。
1ラウンドから2ラウンドまでは、牽制のジャブなどをドヘニー選手が打っていたが、井上選手がガードして全く反撃していかないことが逆にドヘニー選手にとって大きなプレッシャーになっていたことだろう。
ここで、ドヘニー選手のジャブに対して反撃したり、カウンターをあわせるそぶりをみせたら、ドヘニー選手からも井上選手の情報が流れていたが、この序盤の静寂は、手を出す以上に相手に恐怖心を植え付けることに成功したといえる。
私たちはしばしば井上尚弥選手と対峙する選手を見るとき、ボクシングでかなりのキャリアや連戦連勝だった選手たちが、おびえていく姿を目にする。
7ラウンドは、何が原因でドヘニー選手を試合続行不可能に追い込んだかはわからない。井上選手のラッシュの中のなにかが背中やろっ骨などにダメージをあたえて、それが足に響いたのか
または序盤で無理なフットワークを使いすぎてしまったのか。しかし30戦ほど試合をこなす選手が、このようなアクシデントに見舞われるとは想定しにくい。
井上選手がデビュー以来にみせてきた、ガードの上から、ボディ一発で相手を吹き飛ばし、衝撃的なKOを披露してきたことを再現したかのように、今回のドヘニーのTKOもおそらく普通のボクシング試合では、見られないようなあまりにも衝撃的な一幕だった。
現在格闘技は例のドーピングの話題で持ちきりなのだが、そんな憂さを吹っ飛ばす(競技そのものが違うが)ような一戦だった。
おそらく年末にも試合が組まれるだろう。井上尚弥選手も31歳となり、さらに選手として実はまだまだ完成していくのではないかという底の見えなさを見せた一戦だった。