変な家2 〜11の間取り図〜 後編 ネタバレ含む完全解説と考察 ミステリー作品としての構成力と黒幕はなぜ○○を計画したのか?

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変な家2の後編になる。後編なのでいままでの物語の重要なネタバレを含んでいる。

そのネタバレを受けたうえで、ミステリー作品としての構成力だったり、黒幕はいったいどのような考えで計画に至ったのかという私なりの考察を交えている。

今回の考察では、類似する作品として、東野圭吾の「白夜行」のネタバレも含んでいる。

かなりボリューミーな作品だから、ネタバレだけを読みたいって人は多いかもしれないが、正直それはもったいない。未読であればいま引き返して、本書を購入して読んだうえでまた来訪していただけると幸いだ。

 

変な家2 〜11の間取り図〜 前編 あらすじと考察解説 微ネタバレ含む 11個の話を読むごとに推理する面白さ

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資料7 おじさんの家 あらすじと要約

少年は母から半分ネグレクトを受けていた。

少年が「おじさん」と記載しているから、母の新しい恋人だろうか。

少年の名前はナルキ。おそらく資料6で聖母につっかかった男が亡くなったといった少年だ。

読み返すとおじさんはナルキの実父の可能性が高い。養育費を払う話をしていた。

父はなぜか廊下の遠くにある部屋に茶色い人形をたてまつっていた。「家の心臓だよ」といって鍵をかけさせなかった。

母が新しい恋人一緒にナルキを連れて行く。新し恋人はナルキを虐待し、母はネグレクトを続けた。

 

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資料7 おじさんの家 振り返りと考察予想

コメントが難しい…

ドラマなどではよく聞く話だが。

父は財力がありながら、ナルキを守り切れなかったようだ。

 

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資料8 部屋をつなぐ糸電話 あらすじと要約

2022年 笠原千恵(岐阜県)

千恵は孤独が苦手で、ある日父の提案で父と自分の部屋をつなぐ糸電話を提案され、4~5回ほどおしゃべりする機会があったという。

ある日、隣の松江家が火事となり、松江家の母が灯油をかぶって自〇したのではないかといわれている。

クローン住宅でこの周囲は同じような間取りらしい。

笠原の父はなぜかその火事いこうそっけなくなり、手切れ金と住宅を笠原の母に手渡した。

笠原は父の部屋にあった糸電話回収したが、なんと自分の部屋と父の部屋だと糸が余り過ぎて会話できない。つまり父は外から会話してたのではないか?と仮説を立てる。

そしてそれは松江の家のまさに現場であり、父は〇人をして、アリバイとして糸電話をしたのではないかと。

父は失踪してから2年後に謎の人形とともに〇体で発見された。自分で自分の命を奪ったのだろう。そして、亡くなる前まで改築、減築をしていた。資料1につながりそうだ…

笠原の父はナルキがオムライスを食べている写真を残していた。

 

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資料9 殺人現場へ向かう足跡 あらすじと要約

2022年 松江弘樹

資料8の被害者松江の息子であり、弘樹も母が焼身自〇ではないと思っており、父ではないかと疑っていた。

松江は当時の状況を思い出し、父が不仲の母のもとにいき、押し入れにいれて家を燃やしたのではないかと。

灯油をかぶって押し入れに入って家を燃やす○○なんて聞いたことがない。

 

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資料8,9 振り返り考察予想

資料8,9はいわば連作になっている。1つの火災にまつわる謎だ。

それは計画的な犯行だったのか、本当に事故だったのか。

謎として、松江の父であっても笠原の父であってもなぜ放火を選んだのかということだ。

家そのものを焼き払わなければならない理由があったのだろうか。

1つ間違えれば、松江家の放火は笠原家の放火につながるんじゃないか?そう感じた。

この時点で私の推理は、笠原の父と松江の父はつながっていた。

双方の家を燃やすか松江の家だけを燃やす計画を立てていて、笠原は松江の父に協力していた。

笠原が家に火をつけたとき、松江とひと悶着あり、松江は笠原を階段から落として、事故死に見せかけた。

笠原父が娘との糸電話でこわばっていたのは、松江が本当に押し入れに自分の妻を入れていた事実を知ったからか、いざ計画を実行に移すとなると怖気ついた可能性がある。

 

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資料10 逃げられないアパート あらすじと要約

2023年 西春明美

80歳の名物女将

息子の満と昔逃げられないアパートに住んでいた。

クラブで働いてた明美は、客との子供(満)を身ごもり、客に騙されて、自分で店を持ち独立を考えていたが、店が失敗し、反社会勢力に「置棟」という違法な売〇アパートに入れられた。

アパートの住人同士で密告することで借金が半額になり、見張りも置いているので逃げることは不可能だった。

明美にはヤエコという左腕のない隣人が心の支えだった。彼女も人生で苦労している。

明美はヤエコに子供を預けて外出させていた(そういう制度を反社会勢力が作っていた)その際に事故にあい、満をヤエコが守り、足をなくした。そうあの神としてまつられていたのがヤエコだ。

そして、ヒクラという男が大金を払って、ヤエコと娘を連れて行った。

筆者は謎に感じていた。いくら性産業とはいえ50年前のレートで10万円はあまりにも高い。

さらにアパートは4つだけ、監視役を置くことも考えると効率が悪い。なぜか?

 

 

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資料10 逃げられないアパート 振り返り考察予想

ヒクラは金持ちの御曹司で果たして本当にヤエコにベタぼれだったのだろうか?

もちろん、ヤエコがハンディキャップを持ちながら、ものすごく性的に魅力的だった可能性は否定しないが。

10万円、少数精鋭というのはもしかして児童〇春だったのではないだろうか?

ヒクラが惚れたのはヤエコではなく、ヤエコの娘だった。そのヤエコの娘はもしかして劇中に登場していたかもしれないし、何かしらの形でヒクラに復讐でも考えていたのではないだろうか?

少なくともヒクラが幼女を虐待、虐待というのは性的なものという疑惑はただの疑惑ではないということが推察される。

そして、同様のロジックから明美ではなく、明美の息子の満が、「商品」だったのではないだろうか。

母親がそばにいる、母親の指示がある。年端も行かない子供には決定権がない。

 

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資料11 一度だけ現れた部屋 あらすじと要約

2022年7月 入間蓮

入間は幼少期に実家で不思議な部屋をみつけ、その中に人形を見つけた

筆者とともに実家へ再訪し、部屋の秘密を解き明かし、その中に女性の人形があることを見つけた。女性は聖母と同様の形をしており、入間の家の間取りもまさに聖母と同じだった・・・

 

 

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栗原の推理 ※物語における重要なネタバレを含みます

キターーーーーー栗原さんの推理だ(笑)

ということで11の間取りという壮大な伏線を貼り、最後は栗原さんの推理。

ネタバレ入りいます。

再生の館は聖母の姿をかたどっており、聖母の子宮にあたる場所で信者が寝ることで、罪を贖う(あがなう)という役割があった。

 

入間家は長男が生まれるときに大規模な改築を行い、心臓部分に聖母の人形を、子宮部分に子供の寝室を置いた。

この強引で不可思議な改築を請け負っていたのが、「ヒクラハウス」だった。

7~9の松江、笠原の事件を栗原はこうまとめる。

 

松江父は敬虔なクリスチャンで、松江母と笠原父が不倫し、子供を身ごもっていた。笠原父が娘と糸電話していたのは、糸電話しながら、松江の母と…

松江母は妊娠し逃げ場がなく自分で命をたち、その事実を知った松江父は母と胎児ごと燃やす。笠原父は2人の命を間接的に奪ったと後悔する。

そして、再生のつどいは、不倫によって子供を作ってしまった人々の再生のつどいだった・・・というのが栗原氏の推理。

 

笠原父はさらに別の女性と不倫し、ナルキという子供をつくったが、ナルキが死んでしまったので、聖母にやつあたりした。

資料1でなぜ根岸の母は根岸に過保護になっていたのか?その要因として、事故にあい輸血が必要となれば、根岸娘が母と血がつながっていないことが判明するからだ。

話は昔話にさかのぼり、清親とお絹に子供ができた。水車は不倫と赤ん坊がばれないための秘密の小屋だったが、お絹はなくなり、子供を隠して死んだが、子供は隠し扉を閉める際に腕が圧迫され、腕を切ることになった。彼女がヤエコだった。

 

ヒクラがヤエコに目を付けたのは、彼が幼女虐待の疑惑をかけられて、カルト宗教を立ち上げて、一発逆転を狙っていたからだ。

ヒクラのライバル、ハウスメーカー美崎は作業中に事故を起こし、ヒクラの売り上げは回復し、世間のカルト教団への目が厳しくなり、ヤエコを隠居させていたが、厄介に感じ、ヤエコは間接的に〇された。

 

そして、一連の教団などを企てていたのは、ヤエコの娘だったのではないか?

私の予想通り、満は児童〇春させられており、当然ヤエコの娘もその犠牲者だった。ヤエコはヒクラに拾われるが、自分を児童〇春をしていたヒクラの弱みを握り、会社の金を使ってカルト教団を作った。

その目的は、母のヤエコへの復讐でさらしものにするため。

一方で、ヤエコは育ての親の叔父たちに憎悪をたぎらせていたのは、自分の母のお絹を〇したのは、叔父たちだった。娘をめぐって奪い合うさなか、お絹もそしてヤエコも腕を失った。

全ての因縁の場所の水車でヤエコは一生を終えるつもりだったが、ヒクラ家のなかでひっそりと暗○されてしまった。

 

ラストは筆者が真相を確かめるべく、ヤエコの孫で、ヤエコを間接的に〇したミツコに真相を聴く。我々が思い描いた通りのシナリオだった…

 

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変な家2 書評 間違いなく変な絵と双璧をなす雨穴さんの最高傑作の1冊

「変な地図」同様、440ページにわたる大長編だったが、資料1を呼んで、次の休みに一気に全話を4時間ぐらいかけて読んだ…なかなかの大作だった。

 

変な絵の続編ということもあり、ミステリー作家として「読ませる」技巧やミステリーの中に人間の闇だったり、情念を盛り込むスキルが素晴らしく

 

書籍で言えば

変な絵=変な家2>>変な地図>>変な家

こんなランキングができた。

 

純粋に11の資料、11の謎が提示され、1つの資料を読み終わって、「これはこうつながるんじゃないか?」「いやでもこれはこうだしな~」と雨穴さんが我々の上を行く展開を用意しているとわかっても、それにあらがおうとしていた。でもこの行程こそが読書体験だと思う。

また、短編集も1つ1つがラストへの単なる導線ではなく、ちゃんと1つの物語として起承転結がまとまっており、そのうえで、ラストどうやって収束していくか?なんて楽しみがある。本当に1つぶで12度おいしいという小説だ。

一冊の小説を通して、作者と対話するような感覚。

 

ということで、いわば11本の動画を見ているような満足感がものすごく、1500円ぐらいだったとしてもものすごくお得に感じられた。

結末に関しては、間取りの部分的な構造に着目した「変な家」を利用して、間取り全体の形を最大に謎にしたという点もうまかった。

変な家2を書籍で購入されている人は、高い確率で変な家も読んでいるだろうという雨穴さんの読者への信頼がうかがえる。

 

また間取りだけでなく、インタビュワーがどの家に住んでいたのか?時代背景?、登場人物の名前すべてにおいて、謎が隠されている仕組みだったので、白紙を用紙いて、人物相関図を書くだけでかなり楽しめる作品であることは間違いない。

 

カルト宗教と不倫して生まれた子への罪悪感というものだが、筆者にはその経験がないため、オウム真理教と同時期にできたというタイミングや、一流企業がノウハウを活かして行ったという点でリアリティを見出すしかない。

ある意味、親が子供を守りたいという気持ちが暴走しているという点は、「変な絵」の次作だと考えさせられるし、雨穴さんがそのような性質は自分にもあるかもしれないと対談で語っている。

 

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変な家2の黒幕A子についての人物像について深く迫る なぜ娘を間接的に虐待したのか?

さて、あらゆる人間の善悪がごちゃごちゃに入り乱れているのが、変な家2なのだが、その中で「黒幕は誰か?」唯一小説に出ていない人物が

ヤエコの娘、ミツコの母、ヒクラの妻になる。

 

劇中で名前が出ていたかもしれないが、忘れているのでA子にしておこう。黒幕っぽいし。

A子は言ってしまえば、東野圭吾の代表作「白夜行」のヒロインに似ている。

被害者がその憎悪を用いて、加害者に転化してしまったというケースだ。

 

変な家2はショッキングな心理描写が数多く続いているが、結局不倫相手の子供であっても、自分たちの子供には変わりなく愛情を持っていたという「救い」がある。

もちろん、子供を通して不倫がばれたくないという「保身」があるのだが、お金をかけて、人生をかけてでも、自分と子供を守りたいという気持ちは本物だろう。

 

そして、不倫相手の子供であってもお互い愛しあって生まれた子供だ。

しかしA子は違う。自分が生き残るために好きでもない男の性の慰みになり、気に入られ妻にさせられたのだ。

小説では記載されていないが、ヒクラがヤエコの母子を買い取った後は、毎日のようにヒクラに歪んだ愛情を注がれる地獄のような日々だっただろう。

 

ヤエコが他人の子供のために身体をはってまた身体を欠損させたことも、美談ではない。ヤエコの社会復帰が事実上ほぼ不可能となって、A子が一生2人をいかすために身体を売り続けないといけないかもしれないという呪いであり、絶望なのだ。

 

カルト教団もヤエコと同じように不純な愛情で恋愛した人間たちへのA子なりの復讐だったのだろう。「私の幸せのために金を払え」という。

 

ヤエコに復讐をもっていたのは当たり前かもしれないが、A子は自分の子供のミツコをひどく冷遇した。一方で優秀な息子は溺愛した。

これは推測でしかないが、息子は自分が生まれてから心の底から愛せる(もちろん精神的に)はじめての異性だったのだろう。

一方で、ミツコは地獄のような幼少期を過ごしたA子と異なり、ヒクラの家で何不自由なく過ごしている。

 

ミツコを冷遇させ、ミツコが本当に欲しい家族愛にまつわる嘘をいわせ、生殺しのように料理に細工する。それは間接的に「お前は私と同じ苦痛を味わえ」というA子の意思表示でもある。

過去にドキュメンタリーで、親から性的被害を受けた女性が、自分の子供を産み大切に育てていたが

「私は幼少期苦しい思いをしたのに、この子は大切に育てられている。それがうやましくて苦しい」

というような発言をされていたのが、今でも記憶に残っている。

 

そして、A子の復讐は、ミツコを使ってヤエコを間接的に〇すことで完結を迎える。

結果的にヤエコが水車小屋に戻って死ぬことはかなわなかったし、この一件がミツコにあまりにも深すぎるトラウマを植え付けた。

 

しかし、それを繰り返したことでA子の気持ちは本当におさまったのだろうか?解決したのだろうか?

おそらく、溺愛する息子が社長として優秀な跡取りとなって盤石になれば、今度は自分を不純な理由で愛した夫のヒクラに手をかけるかもしれない。

 

ということで、雨穴氏の作品は語りすぎるといわれているが、A子についてはブラックボックスに包まれている。それを解き明かす、推測する深さはあると思う。

ネタバレをしたうえでも、もう1回読み直したいと思わせるそれだけの本だった。素晴らしかった。

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