やりのこしたこと、雨穴氏の「変な家2」を呼んでいないことだった。
変な家の続編として登場した本作。変な家の続き物ではなく、独立した作品であり、本書から読んでも問題ない。
そして、変な家から数年かけて出版されているので、ミステリー作品としてのボリューム、クオリティともに素晴らしいものに仕上がっている。
本作は前半のエピソードをまとめており、筆者のリアルタイム考察や予想もはいっているが、ミステリーが好きな人であれば、自室にこもって、本作を読み進めてほしい。
本とは本当にすごいものだ、卓越した表現力を持っている人なら別世界にいざなってくれるのだから。
変な家2 〜11の間取り図〜 後編 ネタバレ含む完全解説と考察 ミステリー作品としての構成力と黒幕はなぜ○○を計画したのか?
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資料1 行先のない廊下 あらすじと要約
2022年6月10日と17日 根岸弥生
富山県高岡市の住宅街にある一軒家
幼少期から弥生は母から過保護かつ辛くあたられていた
「大通りに絶対に出るな」といわれた。
間取りには行き止まりのある廊下があり、廊下は夫婦と弥生の寝室を阻んでいるように作られており、弥生誕生の半年後に設計された。
母は弥生が小学3年になるころに脳梗塞で倒れて、2年の介護生活をへて肺炎で亡くなり、父も介護疲れで後を追うように亡くなる。
家は取り壊される。遺品を整理すると母がためていた68万円と片足、片腕がおられた人形が置かれていた。
弥生は行き先のない廊下についてある仮説をたてる。廊下の先には庭が広がっており、当初は庭へ出るための扉が設置されていたのでは?いや違う、庭はかなり広めのスペースだったので、弥生と同じぐらいの部屋を設計する予定で、取りやめになったのでは?
弥生はもしかして双子としてうまれ、片方が手術が失敗して死んでしまった。
しかし雨穴は気づく、建築中の写真を見たとき道路側に一輪の赤い花が。そして、双子の設置予定だった部屋をたてると両親の部屋に窓がおけない。
雨穴の予感通り、弥生さんの実家は建築中に事故が発生し、春日君という8歳の子供が亡くなった。担当したのは、ハウスメーカー美崎。雨穴氏は、弥生さんとともに当時の社員へ取材する。
あまりにもショッキングな事故だったため、当時の社員も覚えているものがあり、ハウスメーカーから池田という社員が対応する。
当初は「行先のない廊下」が出口になって、庭から大通りにでることになっていたが、事故現場ということもあり、母は娘に意識させないために、別の廊下を出口とするようにハウスメーカーに依頼することで、不自然な廊下が作られた。
弥生の母は弥生のことを想っていたのだ…しかし母はのちに、ハウスメーカーに弥生の部屋を取り壊せないかと相談する。それはなぜか、彼女のためていた68万円の使い道だったのか・・・また新しい謎が発生した。
資料1 行先のない廊下 感想と考察予想
さて、後の資料がこの1に絡んでくることを期待して、読んでみた。分量がなにせ「変な家1」に比べて、2倍ぐらいになっているので、ボリュームがすごい。
同時に雨穴さんの短編ミステリーを11個立て続ける読めるのは、かなり幸せなことだ。
1日1章でも読んでいく楽しみがある・・・寝れなくなるかも(笑)
さて、おそらく最初の資料1ということで、かなり重要な話になるだろう。
ポイントとしては
- 工事中の事故と、部屋を改装した関係性
- なぜ娘の部屋を取り壊そうとしたのか?
なぜ娘の部屋を母は娘が5歳ぐらいになってから取り壊そうとしたのか。
私の推測だが、娘の部屋には窓があり、窓から事故現場を眺めることができる。事故関連だけで言えば、8歳の子供の霊だったり、献花している親と娘が遭遇しないように配慮したのではないか?
また和室などもあったため、そこを娘の部屋にしようとしたのではないだろうか?
変な家1のやや非現実的なオカルトな内容から一変して、変な家2では、人の感情、意図などが重要になっている。
このような人物描写の細かさとはっと気づかされる人間の業やえぐさ、闇の深さなどは雨穴さんの得意とするところだ。
この変な家2は、変な家から2年後の作品だが、その間に私の好きな「変な絵」を世に出している。つまり出世作にあやかって、すぐに続編を出したわけではなく、十分に作家としてのミステリーの手腕、ミスリードの巧みさを学習したうえで、出されている。
しかし、無機質に見える間取りの画像も、人間の意図やその背景などを考えると、ぞっとしてしまう。
たぶん雨穴さんの変な家を見たことで、間取りの図を見ることに軽いトラウマやアレルギーを覚えるようになった人もいるかも…
早くも資料2を読みたいところだが、明日仕事なので(諸事情)楽しみは取っておこう。
資料2 闇をはぐくむ家 あらすじと要約
2020年11月6日 飯村達之
10年近く特殊清掃員として働いてた飯村
飯村曰く「特殊清掃員は人を家から解放してやる仕事」
津原一家の清掃について取材される
2020年静か御燗で、16歳の津原少年が家族を○○するという事件を起こす。間取りに問題があるとニュースがあり、筆者は飯村に接触した。
間取りは台所周辺に水回りが集中し、臭気が漂うひどいものだった。リビングに扉がないから、臭気を防げない。
2階も部屋を多く作りすぎて、廊下を作れずプライバシーが存在しない。
台所のそばは姑の部屋で、母はつねにストレスをためていたのではないか?
このような家が日本は100件ほどあり、ヒクラハウスという悪徳ハウスメーカー?が担当している。
建売物件というあらかじめ間取りをつくり、土地を買って、その土地に間取りをあてこむ。その間取りが悪かった。
ヒクラは1980年代後半に社長が幼女虐待をしたというデマをながされ、ハウスメーカー美崎にシェアを拡大された過去がある
死者の状況から、筆者は回想し、果たして津原少年が3人を立て続けに○○できたのだろうか?もしや事件はもう少し違う展開だったのではないか?
資料2 闇をはぐくむ家 感想と考察予想
全編通して、ヒクラハウスとハウスメーカー美崎は出てきそうだな…
資料1とはあまり関係のない話のように見える。ただ同じ静岡県が舞台だということ。
疑問点としては津原少年がなぜ3人の○○について、黙認しているような態度を見せているかだ。あくまで劇中の主人公の想像だから、母が祖母へ襲うところを目撃して止めたとは限らない。
確かに津原少年以上に、姑を介護しながら、2人の育ち盛りの子供を育てる母というのは、気苦労の連続だったと思う。
核家族化が進んでいるといわれている現代であっても、嫁いで見ず知らずの他者の家にいきなり移り住んで、相手の親に対して、肩身の狭い思いを強いられている人はいるだろうし、実際にそういう話を聞いたこともある。
資料3 水の中の水車小屋 あらすじと要約
製鉄業の一角をになった財閥の娘、水無宇季が叔父の家で謎の水車小屋を見つけたときの話。(1940年に出版)
上記動画は、実際に精米のために水車の動力をつかってついている動画だ。
不思議なことに、宇季のみた水車の周辺には水がない。
横にはほこらがあり、歯車の反対側には入り口があった。中には変な壁のへこみがあった。そして中は3分の2ぐらいのスペースしかなく左半分は壁にさえぎられ、どうやったら入れるかわからなかった。デッドスペースなのか?
宇季が歯車を動かすと、謎の空間につながる入り口が開く。そこにはシラサギの死体が横たわっていた。
動く部屋、そして右におかれた小さなスペース。宇季はその因果関係から、罪人が罪をわびる部屋なのでは?と考察する。
資料3 水の中の水車小屋 感想と考察予想
いきなり時系列が変わって、話の内容も古風なものに。
最新作の「変な地図」でもみせたように図解が細かく挿入されて、やや小難しい話もすっと入るシンプルな話に変化されている。やっぱり雨穴さんはすごい。要約力もすごい。
それで、話に関してはこの資料だけでいえば、これといった大きなオチはない。どのように回収してくれるのか、楽しみで仕方ない。
振り返ってみると1つの資料当たりさくっと読むことができ、寝る前の30分とかに最適。(寝る前にホラー小説を読むのは賛否両論だが…)
なぜいきなり1940年の話がやってきたのだろうか。そしてシラサギに手をかけたのは叔父なのか?しかもなぜあえてシラサギなのだろうか?
何かの儀式的な理由があったのか?それとも叔父の赤ん坊がシラサギに襲われていたという危機的状況だったのだろうか。
祠がたてられているのだから、儀式的な因果関係があるに違いない。しかしなぜシラサギなのかだろうか・・・と脳内がループしている。
資料4 ネズミ捕りの家 あらすじと要約
2022年 早坂詩織33歳の会社経営者
早坂は父が努力してお嬢様校にいったが、お嬢様校の中では貧乏だったため、辛い過去だったと回想している。
中学一年生にであったミツコという女性が、ヒクラハウスの令嬢でスクールカーストの頂点だったが、仲良くしてくれた。
詩織はミツコと共通の趣味があり、彼女の家に住む。まるでバイオハザードのような洋館(縁起でもない)だった。
詩織はミツコのクローゼットを勝手ののぞいたが、2人の好きな漫画が全くなかった。
ミツコは祖母と2人暮らしで、夜に詩織がトイレを使おうとしたが、足の悪い祖母も階段を下りていた、先にトイレを使った詩織だが、その後事故が起こって、祖母が階段から落ちて亡くなる。
階段からトイレにかけて手すりがない。祖母とミツコのために建てられた家なのになぜ?これはもしや計画的な…
そして詩織は考える、その計画にミツコが関与しており、自分は利用されたのではないかと。
資料4 ネズミ捕りの家 感想と考察予想
おそらく筆者が、ヒクラハウスの内情を知る数少ない人物として詩織を取材したのだろう。
ヒクラハウスの杜撰といえる間取りと、豪邸の裏に隠された謎。
そもそもヒクラハウスはメインとなっている物件で杜撰な間取りにしていたのは、果たしてコストカットのためだけだったのだろうか?
この資料4で詩織が屋敷に行ったときは2000年前半と思われる。そしてその20年前にヒクラハウスにとっては因縁の幼女虐待の嫌疑がかけられている。
つまり、社長は父の会長と母に対して、疑いだったとはいえ、全く顔を上げられない状況だったことが推察される。そこでなじられたから、不遇な対応を受けたから?
しかし、それであれば父が設計した家に祖母がほいほいと住むのだろうか。
資料5 そこにあった事故物件 あらすじと要約
2022年8月 平内健司(30代の会社員長野県)
長野県の村の中古の一軒家(築26年)を購入した。
自分の買った物件が実はいわくつきマップで掲載されていた。
1938年に女性の遺体が発見されたそうだ。
平内の周辺であずま清親という当主がなくなったらしい。自〇だ。
清親は平内の住む場所が森林だったころに女性を埋めて、それが発覚されそうになって、おいつめられて死を選んだのでは?
当時の清親を口伝で聞かされた人物に接触し、清親は正妻に手を焼いており、浮気をしていたが、浮気がばれ、浮気相手を逃がして、自〇を選んだとされている。
平内の家は1階がもともと倉庫で窓がない。そして右上の部屋には謎の空間が、パイプスペースなのか?しかし不思議だ。
筆者は仕事仲間から3章の日記の話を聞かされる。仕事仲間はなぜ宇季はメスのシラサギだと直感したのか?死体はボロボロだったのに。恐怖のあまり宇季は女性の死体だったものを動物に変換して書き残したのではないか?
平内の家は、調査の結果、宇季がはいった水車小屋を増築したものはないか?という結論にたどり着く。不動産は増築の際に大規模な補強工事であれば、増築した年から築年数を言える。
しかし、誰が一体増築したのか?
資料5 そこにあった事故物件 感想と考察予想
雨穴さんらしい和風ホラーな怖さがただよう資料5。物語も3分の1を消化し、いよいよ過去の話と密接にかかわるようになった。
相変わらず、この資料5でも風呂敷、謎が広がるばかりなのだ。
資料6 再生の館 あらすじと要約
1994年8月 長野県西部
「再生の館」、カルト球団「再生のつどい」の宗教施設
生き神「御堂ひかり」(聖母様)を教祖とする
前後編で構成されていたが、後編はとある企業のクレームで御位入り。
再生の館は入団への審査が緩く、再生の館でのイベントに参加すると、なんとヒクラハウスの緋倉正彦社長がいた。
聖母を取材し驚いた。聖母はなんと左腕と右足がない…聖母は50歳だが、50歳には見えない。
修行といっても過剰に強制するものがなく、部屋に集まって寝たり、ご飯を食べるだけ。異様な光景としては信者たちと宗教服を着た人が間取りについて話している。
筆者は館の間取り図をつなぎ合わせるそれが人の形をしており、欠損している聖母様に重なった。
資料6 再生の館 感想と考察予想
間違いなくヒクラハウスが主導したものになっている。
そして高額なものというのは、間取りをみせていたところから物件ではないだろうか?
何らかの方法を用いて、物件をかわせる。そうすればその潤沢な利益は数百から数千万にのぼる可能性がある。
謎としては人は簡単に洗脳されるだろうか?
洗脳されたところでいきなり物件を購入するのだろうか?
ヒクラハウスの物件をかったら何かメリットがあるのだろうか?
あぁ、資料6,半分を過ぎているのに謎が深まるばかりだ。
