今回は2年前にPS4で発売された、ドラゴンクエストのナンバリングタイトル最新作の11がスイッチに移植され、プラス要素が追加された
ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めてS(以下ドラクエ11S)
こちらを購入し、プレイ時間16時間、物語は序盤の山を超えたところのきりのいいところだったので、レビューしたいと思います。
ちなみに筆者のドラクエ過去遍歴は
PS2 ドラゴンクエスト5をクリア
GB テリーのワンダーランドを断念
PS ドラゴンクエスト7の序盤の石板集めで断念
PS2 ドラゴンクエスト8のレベル上げが面倒になって序盤で断念
DS ドラゴンクエスト4をクリア
となっています。結構挫折しているのが多いですね。最たる理由はレベル上げの面倒さと次のフラグがわからないというところでやめています。今なら攻略サイトでクリアできるんですけどね・・・
ちなみに、思い入れはPS2のドラクエ5が初めてで結構好きですが、ゲームの完成度とシナリオのまとまっているところでドラクエ4も素晴らしい作品でした。
(ドラゴン系の皮、フィールドの岩肌と川のグラフィックは非常に素晴らしいです)
充実したフラグの提示とマップの見やすさ
ドラクエ11Sは導入がすごく丁寧です。
ミニマップには、メインストーリーの進行を教えてくれる村人や仲間が表示されます。それ以外にもメニューをおしたり、仲間に話しかけることで、的確に何をすべきか導いてくれます。
従来のシリーズでは船を手にしたら、「いけるところにいって、フラグを回収してね」という流れも多かったです。これによりプレイヤーは、船で行ける場所を手当たり次第にいきながら、偶発的に物語が進むことで、冒険している感覚に浸れます。
一方で、船を手に入れてからも「ここへいったらいいんじゃないか?」って示唆をしっかり示してくれるんですね。そのためドラクエ11Sは小学生の読解力でしっかりクリアできるようになっています。
生みの親の堀井さんが子供でも分かるようにわかりやすく作ってくださいとよく言われていましたが、氏の想いが一番反映された作品ではないでしょうか。
(フィールドでは地名や、回復兼教会のある焚火も可視化され、次に何をすべきかが端的に示されています)
ちなみに、ダンジョン中でさえもミニマップで踏破していないところは薄暗くなっているという親切設計です。3Dプレイならシンボルエンカウントで戦闘は拒否しやすいですし、道は広めで簡素なつくりになっています。
(行き止まりには当然、宝箱や特別なアイテムというご褒美が用意されています)
マップも広大にさせすぎず、30分ぐらいまわればミニマップは踏破できるぐらいの広さにすることで、プレイヤーの「ここは何があるだろう」という興味と「動いてみよう」という行動までの流れをスムーズにさせることができます。
公平感と偶発による刺激に満ちたバトル
バトルは、スイッチの新機能であるダッシュと演出の3倍速が可能になったことにより、非常にスピーディーに展開するようになりました。
すべてのキャラクターを「ガンガンいこうぜ」に設定したら、文字通りポテチ片手に優雅にプレイできます。戦闘のストレスが減ったことで、どんどん戦闘しようという気になり、レベルもいつの間にか適正レベルになっていたりします。
ドラクエ8は、高評価の多いタイトルですが、戦闘の進行の遅さが指摘され、僕はそれが苦痛でした。
12からは、あらかじめダッシュとバトル倍速は実装してほしいですね。社会人になると、本当にゲームに時間を確保できにくくなるので・・・
ちなみに11Sのバトルの優れている点として
- 各プレイヤーのコマンド選択が素早さ順になった
- 新しく加入するメンバーは最初は助っ人として参加する
- ふしぎな鍛冶
- ゾーン
この4つを上げたいと思います。
一つ目のコマンドの素早さ順ですが、過去の9までの作品は、4人いて「めいれいさせろ」にすると、あらかじめコマンドをすべて入力して、敵味方のターンが開始、それぞれのターンが終了するとまたすべてコマンド入力になっていました。
一方で、11Sは素早さごとに各々のコマンドを入力するようになりました。
例えば全員に攻撃の指示をだして、最初の敵がザキなどを使って即死したら、一人が死んだまま残りの仲間が攻撃してしまいます。
素早さ順であれば、最初行動したキャラのあとにザキを受けて死亡、その後別のキャラのターンになって、ザオラルで復活して仕切り直しができるようになりました。
この素早さ順のコマンド入力は、11Sの戦闘における難易度をかなり軽減させています。特にAIが非常に賢くなっており、TPOに応じた戦い方ができるようになりました。「バッチリがんばれ」放置でも雑魚的ならかなり安心して戦えます。
次に、新規加入の仲間は助っ人として最初に参加。これは、仲間扱いではなくAIが勝手に操作して、しばらく戦闘をともにしてストーリーを進めると正式に仲間として加入してくれます。
助っ人扱いなので、ダメージを受けても無敵扱いなので、ボスが助っ人を攻撃しつづけるとそれだけで攻撃をスカったのと同じ恩恵になります。
また、新しく加入する仲間がどのような特性化をこちらで試す必要もなく知ることができます。例えば、旅芸人のシルビアは高い攻撃力を誇りながらも、混乱した仲間をしばいて混乱を目覚めさせるスキルを持っていることを気づけます。
さらにドラクエ11のキャラはそれぞれ使用できる武器が2種類以上あり、スキルで攻撃力をあげたり、特殊なとくぎ、わざを覚えることができます。
基本はゲームシステムが教えてくれて、応用はプレイヤーのさじ加減で調整できるという塩梅が素晴らしいです。
ふしぎな鍛冶は、ドラクエの武器や防具を買うには無理やり戦闘を重ねなければならないという問題点を解決しています。
特定の素材があれば、ちょっとしたミニゲームがはじまり成功すると質の良い武器や防具が作れます。鍛冶には世界各地に散らばったレシピを回収する必要がありますが、基本は民家にある赤い本をクリックして、取得するという簡単な流れです。
ふしぎな鍛冶の素晴らしい点は、特殊な素材でない限り、足りない素材をゴールドで補うことができる点です。これまでの「合成」のシステムの存在するRPGは素材をしっかり集めきらないと合成できないです。
これの難点は、難しい素材ながら頑張って手にしようとしますが、簡単な素材が足りないとなると一気にモチベーションが下がるのです。よほど生真面目でこまめな性格でない限り、元の場所に戻って素材集めは苦痛なのです。
不足分をゴールドで買えることで、素材集めのわずらわしさも軽減されますし、同様の武器は武器屋や防具屋で買うと割高になるので、お得感もあります。
また、ふしぎな鍛冶のミニゲームも頭を使うもので、結構面白いです。
最後に本作のアイデンティティであるゾーンです。
ゾーンは一定の条件によって発動し、能力が底上げされます。ゾーンは、入れ替えによって控えにすれば維持されたり、アイテムで無理やりゾーンにすることもできるみたいですが、基本は偶発的に起こるもので、こちらが意図的にコントロールしにくいものになっています。
ドラゴンクエスト8のテンションとは真逆の発想ですが、テンションはある程度知識が必要だったり、攻撃されて阻止されることも多いです。そしてドラクエ8のもっさりのアニメーションに拍車をかけるようにテンションも戦闘を遅延させる要素になります。
一方で、ドラクエ11のゾーンは偶発的に起こるもので、起こればうれしい、そしてゾーンの仲間が複数いることで発動する連携によって、戦闘における恩恵があればなおうれしいという偶発性の喜びを利用したものになっています。
特にボス戦では、ボスも使用してきますが、こちらも瀕死でゾーンが発生して逆転して勝つというドラマが発生します。適正レベルより低くても勝てる要素があることで、ドラクエ11Sの戦闘は中毒性が生まれます。
すべての戦闘は自分でコントロールして結果も自分の努力によって導かれたものがいいという意見もあるでしょう。ただ、それも重なると惰性になるため、ドラクエ11のゾーンは、救済というより刺激の側面が非常に強いです。
また、余談ですがダンジョンやフィールドでは回復できる焚火とセーブできる女神像が短い間隔で設置されています。
これによりセーブや回復におびえて、「MPつかうな」で消極的に戦う必要はなくなりました。せっかく派手なエフェクトとアニメーションとダメージのある技が用意されているのですから、それを楽しまないと損ですね。
ヌルゲーという批判もありそうですが、しばりプレイもできる作品になっていますので、ご自由に。
PS4になってもドラクエはドラクエ
そして11Sでフルボイスになってもドラクエはドラクエです。いやよりキャラクターの感情移入ができたり、状況がわかりやすくなっていたりするので、これは正解です。
そもそも海外版のドラクエ8の時点でフルボイスはされていましたし、3DS版はフルボイスでしたね。
特にベロニカ役の内田真礼は非常に素晴らしいです。それぞれのキャラは枠内のみならず、唸り声とか、喜びとか、雑談など演劇のように細かい演技も吹き込まれています。
やはり鳥山明先生のキャラクターはしゃべるとさらにキャラクターが生き生きとしますね!!
本作のストーリーは、主人公は王子だったのですが、生まれつき勇者のしるしである手のあざがあることで、魔王から付け狙われ、勇者であることが魔王を呼び寄せるものとして、他国から忌み嫌われるというのが冒頭のお話です。
そういった差別、迫害、憎しみがあるからこそ、信頼できる仲間に出会えた時の喜びはひとしおで、新しい街に入るたびに「この町は自分たちを受け入れてくれるのだろうか、受け入れてくれるように頑張ろう」という気にさせてくれます。
王国間の争いなどがちょっとしたテーマになっており、FFを彷彿させたりもしますね。いままで多くの王国は魔王討伐のためにバックアップしてくれたのですから。
人の死が描かれることも多い本作。過酷な死を乗り越えて主人公は人の温かさや、強さに触れることができます。
メインストーリーでかなり補完されていますが、書物や住人の会話は物語をより深く理解させてくれるものになります。ちょっとフロム脳が残っていました(笑)
また、ドラクエらしいちょっとお色気だったり、皮肉の効いたセリフ、そして面白ろエピソードも充実しています。
(なぜこの老人が固まってしまったのでしょうか・・・)
(あえて不便なところを味とする)
(今回カジノで導入されているマジスロは現実のスロットのゲーム性をかなり踏襲した作品。いずれやりこんでみたいです)
半歩先のご褒美や興奮
優れたRPGというのは、最終的にどうなるかというラストを期待させるのではなく、次の街、次の戦闘、次の動きに期待させる半歩先のご褒美や興奮を的確に用意できるものだと僕は思います。
それを最大限に果たしたのが、ベセスダのスカイリムだとすると
ドラゴンクエストⅪもスキル習得のために戦闘を楽しんでいるし、シンボルエンカウントに触れた先に偶然はぐれメタルに遭遇するし、ストーリーもある程度先の着地点を提示しておきながらも、次の目的地がわかりやすく示しています。
まさに2010年後半のRPGの良さを、オープンワールドの特性をも引き継いでアップグレードされたJRPGといえるでしょう。
実は、ペルソナ5の方が見た目のスタイリッシュさで勘違いしそうですが、古典的なRPGでしたね・・・
(世界に生きる、世界に没入するを体現したRPG)
(実はプレイするほどに古典的なRPGの良さを踏襲した作りであることに気づく)
まだまだ、本作と付き合って眠れぬ夜を過ごせそうです。さぁスイッチの充電も満たされたことなので、プレイを再開したいと思います。
今の時代、ゲームをプレイしてもらうにあたって
「すげぇ壮大だよ60時間は遊べるよ」
「ラスボス戦が神がかってるんだよ」
より
「まず最初の村を遊んでみてよ」
「もう最初の仲間の出会いがドラマティックなんだよ」
という最後から逆算するのではなく、最初のつかみから話した方がプレイする気になるかもしれないですね