ドラゴンクエスト11Sをプレイし、裏ボスまでクリアして2つのエンディングを見た後の感想。ドラゴンクエスト11には二つの世界線とエンディングが用意されていますが、二つのエンディングを経たことで、このゲームが2019年に見せた革新性を垣間見ることができます。
注意
エンディングに関しての感想になるので、当然ながらネタバレ注意となっています。ドラゴンクエスト11をクリアして、エンディングを見た人と意見を共有するという記事になるので、よろしくお願いします。
ちなみに、未プレイの人は、ゲームシステムについて解説した記事も記載していますので、そちらへお願いします。
また、賛否両論巻き起こった、ドラゴンクエストユアストーリーの感想も書いています
ドラゴンクエスト11には2つのエンディングが用意されていますが、ストーリーは3つの階層に分かれています。
革新的な試み 3つの階層と2つのエンディングを見せたドラゴンクエスト11
1階層目
(追い詰められ、緊迫した展開が続く1階層目のストーリー)
主人公が勇者の子であることが判明し、それが邪神を復活させている忌み子として、デルカダールに付け狙われる。
故郷を失い、道中で出会った仲間とともに、自分が勇者として生まれた経緯や、勇者として何をすべきか、苦難を乗り越えながら、物語の黒幕に近づいていく
2階層目
(スイッチ版で追加されたサブストーリーは、どれもメインストーリーの物語の強化であったり、あえて同じ展開を繰り返すことで印象を強めています)
デルカダール王に憑依し、生命の大樹にあるロトの剣を狙っていた魔王ウルノーガ。主人公たちはウルノーガの計略にはまってしまい、生命の大樹は破壊され、勇者の力を取り込んだウルノーガは魔王軍をつくり、世界を崩壊させる。
数々の犠牲の上で、主人公は仲間たちと再会し、魔王軍を突破し、ついにウルノーガを打ち倒す。
表エピソードクリア
3階層目
ウルノーガを倒し、平和を取り戻すことに成功したが、自分たちを助けるために命を失ったベロニカを助けるため、主人公は単身で勇者の力と剣を使って、過去に戻る。
ウルノーガの野望を阻止し、世界崩壊は免れるものの、ウルノーガが復活を阻止した邪神ニズゼルファが復活してしまう。
主人公たちはニズゼルファを封印した過去の勇者たちの記憶をさかのぼりながら、力をつけ、ニズゼルファ討伐に向かう
裏エピソード
従来のRPG,アクションゲームは、「ゼルダの伝説神々のトライフォース」「FF6」のように、光と闇の世界、世界崩壊前と崩壊後という2層構造の作品は多くみられたものの、ドラゴンクエスト11はこのように3層構造になっています。
(どちらもクラシックミニスーパーファミコンでプレイできます)
1階層目だけでも普通にプレイしていたら2~30時間のボリュームがあり、主要となる都市はすべてめぐることになります。
ドラゴンクエスト11は世界を広く見せる手法が非常に卓越していました。
例えば、「ホムラの里」という和風な集落に訪れるのですが
1度目は主人公がデルカダールの追ってから必死に逃げ切ってたどり着く場所。
新しくできた温泉に入りながら、ベロニカという新しい仲間と出会い、魔物にとらわれている妹を救うというメインストーリーの重要なパートに移ります。
世界崩壊後は、里の坂道を登ったところでイベントが発生し、ヤヤクという巫女が人食い竜を征伐したのですが、人食い竜は復活しており、そのいけにえとして村の女性をささげようとします。なぜ人食い竜が復活しているのか?ヤヤクは強行にいけにえをささげようとするのか。そこには非常に悲しい過去が語られるのです。
ホムラの里は決して広くありませんが、ドラゴンクエスト11で新しく実装されたメインストーリーのナビシステム(特定の村人に話すとどこへ行くか指示してくれる)を利用して、、メインストーリー攻略に専念するプレイヤーにはあえて情報を限定して、隠して、その後のストーリーにつなげるという手法を見事に完成させています。
さらに1階層目では、いきなりデルカダールに追われ、故郷を破壊させられるので、プレイヤーは新しい村や町に着くたびに「歓迎されるのだろうか・・・」「もしかして、デルカダールの兵がひそんでいないか」とおびえながら入ることになりますし、村人たちの信頼を得るたびに彼らの悩みを真剣に聞こうとします。
2階層目に入ると、ウルノーガ打倒という目標がはっきり決まっており、一度訪れている場所へ再訪することで、最低限の前知識(ここに教会があって、ここに有力者がいる)という状態で訪れるので、新しい情報も限定されたもので、すんなりと入ります。
この導入のうまさ、すばらしさが古き良きJRPGの良さといえますね。
なぜ過去編はすぐにエンディングを迎えられ、リニアな進行ではなかったのか?
そして、1度目のエンディングを追えて、3階層目の過去にさかのぼり、本当の黒幕である邪神ニズゼルファを打倒します。
ベロニカを救うということが本来の目的になるのですが、結果的に世界崩壊を免れ、多くの街が壊滅を免れます。勇者が休眠していたインターバルもないため、ウルノーガ侵攻に際して絶命したキャラも生きていた状態となっています。
3階層目は、復活したニズゼルファを討伐するという明確な目的があるのですが、各地のイベントをクリアするかは、プレイヤーの判断にゆだねられます。
ウルノーガ討伐までは比較的リニアな進行でした。仲間がすべて集まるまでの時間も長いですし、仲間がなかなか集まらない=ゆっくり経験値稼ぎに専念できないので、メインイベント攻略に専念しがちになります。
過去に戻ると、逆に各地方のイベントの進行は完全にゆだねられるのです。
主人公の故郷であるイシの村を復興させないのも自由ですし、先ほど述べたヤヤクの問題を解決しないのも自由です。
最強武器獲得のフラグだったり、強化されるボスと戦えるというハクスラ要素の面白さはあるのですが、メインをクリアだけ専念するならどれも不要です。
しかしながら、悲しい結末を体感したからこそ、いま実力をつけた状態で解決したいというのが人情・・・・
このあたりは、「スカイリム」などと同様にストーリーの進行上で出会ったイベントや人々と交流して、いつの間にかサブイベントにのめりこんでしまうという現象に似ていますね。
(サブクエストが膨大な作品が増えたことで、サブクエストをしっかり堪能しなければゲームレビューを書けないのか?というジレンマも生まれたり)
これはすごい英断だと思います。
本来なら、ニズゼルファ討伐のため、またほかの地域の残された問題もメインストーリー扱いにすれば、クリア時間のボリュームを増やすことができます。
非常に魅力的なエピソードが多い11ですが、結果的に3階層目の各地域のイベントをサブイベント扱いにしたことで、非常に高い自由度に感じられ、各地の問題をしっかり解決したときに「自分で発見して、自分で解決できた」という快感が得られるつくりになっています。
第2階層で、時間をかけて各地域の問題をしっかりプレイヤーに植え付けているというお膳立ちができているからこそだと思います。
充実したサブイベントというのは、丁寧なメインイベントがあってこそ・・・それを思い知らされましたね。
ドラゴンクエスト11のストーリーとエンディングについて要約すると
- 3層に分かれるいずれもストーリーの演出が異なり、プレイの演出まで差別化された素晴らしいプレイ体験を提供した
- 過去編のイベント攻略をプレイヤーにゆだねることで、自分で問題を発見し、解決したという快感が得られるつくりになっている。理想的な寄り道、サブシナリオの作り方
ドラゴンクエスト11はドラゴンクエストの伝統を引き継ぎ、古き良き作品を継承したといわれていますが、ストーリーに関しては海外のオープンワールド作品を踏襲しながら、新しいJRPGの魅せ方を打ち出したと高く評価しています。
これはペルソナ5のように見た目の演出やインターフェイスで魅せるものとは、アプローチが全く異なっており、非常に味わい深いものがある演出です。
まだ未プレイの方は、ドラクエの続編としてではなく、新しいRPGのストーリーテリングを体験できることにワクワクしながら、エンディングへ進んでほしいと思います。