ということで、ニルヴァーナイニシアチブもネタバレ考察記事を書きたいと思います。
今回はミステリーやトリックではなく、アドベンチャーゲームという体裁に対して、ニルヴァーナイニシアチブはどのようなアプローチを試みたのか?という点に焦点をあてて語っていく記事になります。
今回の記事は、容赦のないネタバレが多数含まれるので、未プレイの方、特にこれからプレイを考えている方は、ブラウザバック推奨です。
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タイトルにあるニルヴァーナイニシアチブの意味とは何か?
ニルヴァーナイニシアチブ。
ニルヴァーナは涅槃という意味で、イニシアチブは率先して何かするとか、主導権などで使われる。
涅槃とは、一切の煩悩(ぼんのう)から解脱(げだつ)した、不生不滅の高い境地。本編でも解脱を試みようとするキャラや、不死身の身体を手に入れるための人体実験なるものが、行われていた。
すべてが解放される、煩悩の日から「吹き消される」という意味もあります。
主導権が吹き消される、主導権から解放される
まさに本作の重要な組織NAIXが掲げる、この世はシュミレーション。そして唯一解脱に成功した、時雨の目的だったといえる。
ちなみに、このこの世はシュミレーション、ゲーム内のキャラがフレイヤー(プレイヤー)を混乱させる仕組みについての解説は、以下のNOTE、youtubeで有志の方が考察されている
AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ 攻略後雑感と考察 謎やNAIXの思想について
要約すると、AIボールを通して、時系列を把握したり、様々なルートの答えを知った状態で解読できるプレイヤーに対して、ゲームの住人である時雨が死体の配置によって、時系列を意図的に困惑させて、自分たちがゲームの中の住人でシュミレーションの世界で生きているということを証明しようというお話である。
よくいう「第4の壁」、デッドプールや古畑任三郎のように、自分たちがフィクションのキャラであることを認識して、それをみてる我々に訴えかけるという設定。
その第4の壁を時雨が超えようとする過程を我々は見ることになる。
あの龍木のエンディングはなぜ気持ちよくならないのか?
シリーズおなじみの大円団となる、トゥルーエンド、ダンスシーンのエンディングが終わってから、龍木の過去編で、時雨に対してこちらがフレイヤーであることを証明すると、異章に突入する。
この異章では、龍木がHB事件の全貌をすべて知ったうえで、先手をうって、犠牲者を最小限にして、龍木がABISで大出世を果たすというエンディングになる。
本来は、最高のグッドエンドといってもおかしくない…しかし心から喜べない違和感というものがある。その理由は2つある
1.このエンディングが本当の正史ではないだろうとプレイヤーはわかるから
2.ゲームとしての面白さに欠けるだろうと時雨に挑発されているような気分になるから
1に関しては、アイボゥが「過去を変えることはできない」と断言している通りだ。
ニルヴァーナイニシアチブは、1作目のトゥルーエンドをベースにして進行しているため、1作目の他のエンディングの可能性は、すべて否定されている。
そのため、ほぼ全員が幸せになる異章エンディングを見たとしても、それは妄想で3作目があるとしたら、反映されないだろうということは、プレイヤーは薄々気づいてしまうのだ。
時雨はプレイヤーが、フローチャートをよりどころにプレイしていることを認識しているので、あえて「異章」と命名している点が、少し憎たらしい。
次は、何もトラブルがなく、アクシデントのないアドベンチャーゲームを遊んでもあなたは面白いですか?という時雨の挑発的なメッセージ。
正史だと、時雨は自殺して、さらに亜麻芽に対して、死体の移動を命じる。プレイヤーの時系列混乱を誘導するために。
自分がゲームのキャラクターであると自覚した時雨は、死に対する恐怖も薄れ、逆にフレイヤーを暴くために、過去に戻って自分が解脱するためなら、ゲーム内の世界で死んでも問題はないと判断したのだろう。
そして、もう1つ時雨が死ぬことによって、プレイヤーはNAIXの重要な情報源を失うことにもなるし、HBの犠牲者が増えるということで混乱はするが、それはゲーム的な考察や推理の娯楽につながる。
皮肉な話だが、ゲーム内の誰かが犠牲になる、アクシデントが起こることが、ADVの面白さの本質の一つであるということを知らしめられた結果になる。
AI:ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブとメタルギアソリッド2のS3計画の関係性
別の機会で、令和の時代から観察するメタルギアソリッド2のS3計画についてじっくりまとめる予定だったが、共通点が多いので、あらためて説明する。
なぜメタルギアソリッド2を引用するというと
- 打越氏がおそらくかなりのメタルギアファンであるということ
- ニルヴァーナイニシアチブは意図的に1作目と同じような境遇の犯人、同じような猟奇的殺人を仕込んだ作品ではないかということ
などが根拠にある
S3計画をものすごく端的に表現すると「人の感情をコントロールするシステム」。特定の状況に立たせて、特定のアクシデントを意図的に起こして、人はどのような感情を抱くのか、その場合、どのように対処すれば改善するのか
最終的に、どのような心理的負荷をかけたら、狙った通りの思想に誘導できるのか?という計画。
膨大に増えすぎたデジタル情報や、個人の発信に対して、AIが将来的にそれらを選定して、自分たちが植え付けてほしい思想だけを提供するという、間接的なAIの思想コントロールになる。
ADVのどんでん返しというものも、叙述トリックやミスリードなどを含めて、用意周到におこなわれ、製作者、脚本家の思惑通りに我々が動くことで成立する。
普通のゲームや小説なら、それだけで終わるのだが、前述したように、時雨というキャラは、どんでん返しの肝であると同時に、プレイヤーがADVに何を求めるか、どのような感情を抱くかという想いを体現化したキャラといえる。
「あなたはこのようなキャラを求めているのでしょう、だから私がその役割をになってあげる」
とでも言いたそうなキャラだ。
しかし、ニルヴァーナイニシアチブの新しい点は、完全に上から俯瞰して、支配して言われているというわけではなく、時雨が第4の壁を超えようとする時雨側のストーリーや葛藤もこちらが、把握できるような形になっており、説教を受けているような不快感は少ない。
ニルヴァーナ イニシアチブ 構造と仕組みを疑うということ 3作目はどうなるのか?
ADVでプレイヤーが、ストーリー解読のよりどころとしているフローチャートをいじることによって、プレイヤーにストーリーの内面、文面のみならず、構造や仕組みまでも疑わせることに成功した、ニルヴァーナイニシアチブ。
さて、人気や要望があれば3作目にも着手する可能性があるとスタッフ側は示唆している。
もはやこの2作目の時点で、凡人である私はニルヴァーナイニシアチブはADVにおいてトップクラスの衝撃と仕掛けを用意しており、逆に新規IPを立ち上げるなどしないと厳しいのでは?と思ってしまう
そのため、3作目があるとして、伊達やみずきといった主要メンバーは引き継がれているのかどうか?は気になる。
一応2作目に残された謎や、続編にいかせそうな設定として
- ピュータがなぜ1作目で罪を犯したのかはいまだに不明
- ゲノム手術によって不老不死となった少年
- 3体目のアイボールの存在
- まだ複数名いるシンカーについて
- イリスがフレイヤーになる可能性について
すごーーくありきたりな設定になるが、伊達が過去にファルコとして、処刑した犯罪者の親族に逆恨みされるという設定もありうる。ファルコの罪は、警察の上層部によってもみ消されているから。
1作目、2作目にどんでん返しを受けて、衝撃を受けた私としては3作目はなんとしても途中で物語を解明したいというモチベーションもあるが、また同じように衝撃的な展開を期待してしまう。
AI: ソムニウム ファイル クリア後ネタバレ控えのレビュー 令和の傑作ミステリーアドベンチャー 逆転裁判、ダンガンロンパのあの面白さが現代に…
AI: ソムニウム ファイル ネタバレ全開 フローチャートのまとめ 真犯人の行動と目的についての考察
AI:ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ ネタバレを極力回避しながら、感想とレビュー 期待以上のどんでん返し、ADVならではの驚き