仮面ライダーウィザード考察 遺された者が人生をどう受け入れるか?

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仮面ライダーウィザードは過去に生きるより未来に生きることの大切さやどんな絶望的な状況においても生きる希望を見失わない重要さという人生を教えてくれる仮面ライダー……しかしその原動力はどこから来るのだろうか?

ウィザードは冒頭から罪なき人々が集められて、大量に殺されるという現実を視聴者に見せつける。
これぞフィクションな描写に見えるが、働いて急に同僚が心を病んで会社にこなくなったとか、家族が急に亡くなってしまう経験は誰にでも起こりうる話。

ウィザードの主人公である晴人はそんな大量自殺や失踪する様を現場で眺めてしまった被害者であり、サバイバー。(職場内の同僚がリストラにあった後のつらい精神状態で働き続ける社員をサバイバーともいう)
それ以前に彼は事故で両親を一瞬でなくしている。彼が絶望や周りが連鎖的に自分の中の魔物に殺される(自殺のメタファーとここで仮定)ありさまを見せつけられながら生きているのは過去に同様の最もつながりの深い親をなくしたという実体験と「お前が最後の希望」という言葉をよりどころにしているからだ。

しかし、言葉だけで生きられるほど人は強くできていない。最後の希望という言葉は彼の生きる原動力であると同時に「そこまでして生を託されたのだから生きなければ」という重荷になっている。

彼の魔法使いとしての戦いの背景は「同じような苦しい思いをした人を生みたくない」という一心で、一般人がピンチの時に驚異のエンカウント率とリサーチ力で駆けつける従来の仮面ライダーとは対照的にずっとゲートにはりついて護衛するという行程を一貫して守り続けた。

しかし、守りたいという彼の強い想いは時に説教や人生の干渉によってゲートを不愉快にもさせる。終盤は晴人が戦うことで周りから承認され、自分の過去のトラウマと向き合うという晴人の自己啓発な展開が見られる。
最終局面では家族に等しいコヨミを助けるため自分が犠牲になろうとするが、結果大勢の人を死に追い込みかねない惨事を招いた。安易な自己犠牲をよしとしない描写はヒーローを描く作品としては珍しく建設的な描写だ。

本作における怪人(ファントム)の役割は魔力を持った人間(ゲート)を絶望させることでファントムを生み出し仲間を増やすこと。
これも従来の直接手を加えて他殺するとか、人の欲を利用して利益を生むという直接関与するようなパターンと一線を画す。

ゲートがファントムに堕ちてしまう過程には
・公然で大きな失敗をする
・死の恐怖で絶望する
・家族を失う
・大切な思い出の品を壊される

ゲートの中に眠る魔物が彼らをファントムにかえるのだが、そのきっかけは羞恥心であったり、恐怖心。これは自殺の過程にも共通する。

黒幕である笛木、滝川空も過去に自殺の理由に匹敵する嫉妬や家族の死を経験しているが、彼らは自分の中の魔物(自殺衝動)を他人に向けている。

自殺の匂いが立ち込める本作だが、無縁な人物が存在する。

2号ライダーのビーストこと仁藤。彼の物語は晴人、笛木、ファントム、ゲートをめぐる本編とは独立している。

彼は無理やり魔物を宿され
「働かざる者食うべからず」
「戦わなければ生き残れない」
そんな生き方を背負わされている。ヒーローとしては彼の戦う理由は晴人よりも明快なものだ。

彼の人生は住みたいところにテントをかまえ、食べたいものにマヨネーズをかける。既存の人生を自分色に染める。しかも人に迷惑はかけているが自分の半径5m程度の範囲で。

働くこと、生きることは彼にとって選択することではなく、課せられたものでその制限の中で自分の人生を楽しもうとする。

生きることそのものが重荷になりすぎたり、戦うことへの義務へ疲弊することもあるが、それが息を吸うように当たり前のことで仕方がないことだと受け入れて、人生を楽しむことへ矛先を変える。
仁藤の生き方は、喪失やサバイバーであることを受け止めたうえでの生き方。希望も絶望もみせない生き方。

殺されてファントムになったゲート(冒頭の犠牲者)

遺されて寂寥感と生きる苦痛に耐えるゲート(出発点)



遺されたことを受け入れ、同じような境遇の人と寄り添いながら葛藤する晴人と面影堂のメンバー

↓←遺された事実を受け入れることができず、他者に影響を及ぼす笛木

遺された現状を受け入れ、自分の人生のできる限りを楽しむ仁藤

厳密に仁藤はサバトの惨状を目の前で体感しているわけでもないし、ゲートの中には喪失感のないゲートもいるが、便宜上このような過程にまとめてみた。

ウィザードは「死とどう向き合うか?」というヒューマンドラマでもよく扱われるテーマではなく、「遺されたものがどう人生を受け入れるか」というより普遍的で根の深い問題に向き合おうとした作品だ。

全ての涙を宝石に変えてやるまで受け入れることができるか。それは操真晴人ではなくゲート一人一人が各々で解決するしかないのだろう。

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