中村淳彦氏のルポ中年童貞を読んで 前編 中年童貞が社会に及ぼす影響とは?

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中年童貞はどのような存在なのか?

本連載は中年童貞を救済する目的はない。中年童貞がどのような人物で、彼らが社会にどんな影響を及ぼしているのかを可視化するのが目的である。
 童貞とは「性交未経験の男性」のことだ。
 社会保障人口問題研究所などの調査によると、未婚男性の4人に1人が童貞とされている。20歳以上のバツナシの未婚男性はおおよそ1000万人、童貞人口は250万人に迫る勢いであり、富山県と石川県を合わせた人口より多いことになる。
そのなかの、女性とセックス経験のない中年男性が「中年童貞」である。
 同じ社会保障人口問題研究所の「出生動向基本調査」(2010年)によると、30歳~34歳で性行為経験のない未婚男性は、26.1%。4年ごとの調査で、ここ20年で上昇し続けている。

性交経験の有無や頻度や回数は、極めてパーソナルな問題であり、好き嫌いや、するかしないかは個人の自由である。秘めた行為である性経験が社会に影響を及ぼすわけがないじゃないかと思われがちだが、性交未経験の男性は婚姻率の低下や少子化はもちろん、職場のパワハラやセクハラ、労働の長時間化、離職率など、職場の根幹に関わるネガティブな問題と密接に繋がっている。
 理由はこれから検証していくが、仮に彼らが適正年齢で女性とセックスを経験していたならば、これらの問題の一定率は改善しているはずだというのが、私の立てた仮説である。
私は何人もの困難や問題を起こした張本人である中年男性に直接的、または遠まわしに「セックス経験の有無」を訊ねたが、彼らは堂々と、または言い訳をしながら「ない」と言った。
彼らが周囲の人間と軋轢を起こしたり、苦情の対象となったりするのは、「物事の考え方や行動が極端にズレている」ためである。改善を求めようにも一般常識や普通の感覚が抜け落ちているので、まともな会話にはならない。
 少し話せば言い訳や責任転嫁、自己正当化のてんこ盛りとなり、どれだけ注意や警告を繰り返しても全員がすぐに同じことを繰り返した。
1人や2人ならば単なる個人の性格と思っただろうが、数年間に及んで何人もの中年男性が同じようなトラブルを起こし、その原因はすべて「物事の考え方や行動が極端にズレている」ことで、全員が「性交未経験」だった。
 私は30歳を超えて性交未経験の中年童貞に、大きな問題が潜んでいると確信することになった。これはヤバイと。

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以前紹介したノンフィクションライター中村淳彦氏による「崩壊する介護現場」にて職場にはびこる中年童貞を社会問題として取り上げていた。完全売り手市場でコミュニケーション能力なども介護では問われず、何の目標もなくただ楽な道、責任回避だけを模索して働きながら、自分のミスは棚に上げ、自分より弱い立場の後輩などに対して辛辣にあたり、介護現場を混乱に導く。中村氏はそうした体験から「中年童貞は社会問題として警鐘を鳴らすべき存在ではないだろうか?」という疑問を持って今回の連載に取り組んだものと思われる。

そのため、本連載では中年童貞とされる層に対して「中年童貞の中にも社会活動ができる人もいるが」という予防線を張りながらも前半は責める口調である。
ちなみに今回は前半にあたる「中年童貞はどのような存在か」~「介護人材と中年童貞」までの感想だ。
また、私も異性との交遊が完全に断たれた状態ではないが、正社員として雇われているわけでもなく中年童貞予備軍ではあるので、その立場で今回の連載について言及していく。

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(2013/09/07)
中村 淳彦

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まず自身の主張に肉付けをするために中年童貞を探して直接インタビューを行う。これを聴くと「だれが喜んでハイ僕中年童貞です」とにこやかなインタビューするものなのかと思うが、秋葉原での取材はなんと20分程度で見つかったのだ。

まずは童貞率が日本一高いとされる秋葉原で調査し、二次元文化やメイドとの交流を受けて、嫌悪と拒絶「こういう生き方は信じられない」という見方を読者に伝える。

よくメディアでみられるオタクバッシングかとため息をつきそうになるが、読み進めていくと現代の貧乏でコミュニケーション不得手オタクを解説した担当者へのインタビューが伺える。

「今はリアルのアイドルが好きなオタクと、アニメ好きなオタクは仲が悪い。昔のオタクは岡田斗司夫みたいな感じで、オタクコンテンツ全体を俯瞰してチェックするのが普通だった。オタクとはコレクターでありマニアだから、いろんな情報を知っていることが誇りだったわけです。だから昔のオタクは博識だったし、今でも四十代以上のオタクは高学歴でいろんな知識がある。若い世代のオタクになるとアニメしか知らない、アイドルしか知らない、という人が増えてくる。インテリジェンスが低下して、ひたすら好きなものだけに逃避するみたいなのが一般的なオタクになってしまった。
 理由はコンテンツが多すぎることです。もはやガンダム情報を網羅するだけで一人の人生だけでは足りないほどの量がある。ガンダム以外を追っ掛けてられないですよ。AKBもそう。人数があれだけいてグループがどんどん枝分かれして、ファンになったらAKB関係を追うだけで限界です。それはメーカーとかプロダクションのオタクの囲い込みで、生涯独占しようって戦略なのです。だから趣味が細分化しすぎて、今のオタクは孤立している。同性の友達もいないオタクが増えている」
 コンテンツに消費を続けるオタクは、結婚どころか多くは童貞喪失をすることもなく、終末を迎えるだろうと企業に想定されている。企業に消費活動を操られながら、死ぬまで仮想商品を購入し続けるだけの人生は、過去の日本に前例がないだけに幸せなのか、不幸なのかよくわからない
。ガンダムなど好きなものに囲まれて、好きなものを買い続けている人生は幸せかもしれないが、それがリアルな女性の代替である二次元美少女となると、簡単には想像ができないディープな哀愁を感じる。

はぁ・・・今の私にとっての仮面ライダーですね分かります。確かにオタク活動に没頭することが三大欲求の一つである性欲を紛らわせるかどうかが幸福であるかの線引きだと思われる。(紛らわすと書いている時点で紛らわせていないな)

秋葉原取材の二日目で出会った三十代前半の当事者である中年童貞。
相手はオタクシェアハウスに同じオタク趣味の複数の男性と同居し、一勤一休の日給7200円の日雇い労働で月収10万という生活環境で暮らしている。
シェアハウスに住んでいると交遊がありそうだが、それぞれがバイトに出かけたり、好きなアニメを延々と見ていてほぼ交流はない模様。日雇い労働も毎日人材流動があって厄介な人間関係がないという。
シェアハウス内の饐えた臭いと荒んだベットを観て筆者は一言「留置場より生活環境は悪い」…わざわざ自宅に招いてインタビューしている相手にそれは言い過ぎではと思わなくもないが…

高校は不登校を繰り返し結果中退で、女性との交流もほぼない。二次元キャラへの想いいれ、そして現実への女性への関心は消えているわけではないが、純真さはどうしても求めてしまう。いわゆる処女信仰が強い。

中村氏は目当てのオタク中年童貞のインタビューをゲットしたうえでこうまとめている。

他人とコミュニケーションがとれないことから始まり、社会や人間関係から孤立し続け、誰かに認知された経験すらない半生のようだった。社会から逸脱していることは自覚しているようで、徹底的に諦めて、なにも望まないことで日々を乗り切っているようにみえた。

確かに都会で孤立し、派遣で食いつないでいるというインタビュー先の生活はとても憧れる物ではない。できれば避けたいものだが、だからといって「社会から逸脱していることは自覚しているようで」という部分は、本当に相手が社会から逸脱しているんですよと主張するような記載である。
確かにこの男性は女性との交遊は全くなく、日ごろいつか童貞を捨てるべき純真な処女を求めるという一種の妄想癖を抱えているが、シェアハウスを問題なく行え、定期的に派遣の仕事が与えられているという現状は貧乏で不安定ではあるが、「逸脱」という言葉は全くの的外れだ

なぜ中村氏がここまで中年童貞という層に対してある種の敵意を抱いているかは次の記事「介護人材と中年童貞」で判明する。

44年間生きてきたが、自分以上に女性や性に対して純情で純粋な人間は見たことがない。それは自慢だった。楽しそうに恋愛の話をしている女性介護職員たちに、自分の純情で純粋で真っ直ぐな心をわかってもらえば、誰にも相手にされない現状をひっくり返せるのではないかと思った。
 坂口は思い切って恋愛話で盛りあがる女性たちの席に近づき、自分は童貞であり、汚らわしい性風俗には行ったことはなく、セックスは好きな人としたいという持論を語りまくった。
 女性介護職員たちは一気に静寂し、全員の表情は凍った。
介護という女性社会の中で、チームとして働くことや、年齢が上の経験豊富な高齢者がなにを求めているかなどをわかるはずがなく、ズレて間違った判断と言い訳の山となって極めて迷惑な存在となっている。加えて子供の頃から遡っても、なにかを成功させたという経験がないので、施設や利用者の利益のための前向きな話になると、まったく関わってこない。長年の負け続けた人生によって、誰かの悪口や愚痴以外に思考ができなくなっているのである。
 説明した通り、些細な成功体験すら皆無なので何事においても自信がない。仮に社会人としてやりたいことがあっても、最初から諦めることが自然なので、その時代によって採用されやすい業種を転々としながら、受け身の流される人生を送っている。
バブル以前だったら零細の工場、九〇年代は大量生産のための単純作業、〇〇年代は非正規雇用の単純作業みたいな職業か。そして現在は、慢性的な人手不足の介護事業所が彼らの受け皿となっているのだ。

かなり省略したがこの44歳男性は24時間運営の小規模デイサービスに週5で勤務しており、前職は契約社員で荷物の仕分けで、その会社が不況により人員を減らしたことで契約解除。私も仕分けの契約社員であるためとても心が痛む。

国の補助制度を用いて、ヘルパー2級を取得し、人手不足の介護市場で体力のある中年男性というためか丁寧に職場を案内されたことがきっかけで「自分は資格もあって、これだけ周りから必要とされる人間」と勘違いを起こした。
しかし、仕事でのミスを他人へ責任転嫁したり、自分は経過を記載するのにひどく時間がかかるが後輩のミスに対して「お前はそんなこともできないのか」「資格もないのによく仕事につこうとおもったな」と傲慢に振舞う。

中村氏はそういう職員を観るたびにやんわりと女性経験の有無を確かめ、「それならはやく風俗で捨てたほうがいいよ」とこれまた間接的に促すと逆ギレされる。そういう経験を踏まえて「中年童貞が社会にはびこるとヤバイ」という認識に繋がっているのだ。

中村氏は中年童貞に潜む最も深い危険は「成功体験のなさ」であることを挙げる。
「崩壊する介護」ではスポーツや勉強においてもとより範囲を広げているが、現在の連載ではさすがにやりすぎたためか「人間関係の成功体験」に留めている。

性行為そのものが女性が男性を受け入れるという体位であるため、セックスそのものが男性にとっての「第三者からの受容体験」として自信にもつながり、他者との信頼関係形成への一助になる。これはとても理解でき、童貞問題が深刻化されてから幾度も主張された定説だ。

そして適正年齢(連載では18~25歳とされているが…)に性体験を逃した場合、人間関係における受容体験を逃したことがきっかけとなって、過度の人間不信、自身の発言、容姿そのものに対する肯定のなさ、中村氏は一見セックスというのは非日常的で特別なコミュニケーションに見えるが、経験をしなければニュートラルな日常のコミュニケーションにも甚大な影響を及ぼすことを考慮している。

ちなみに44歳介護士のケースで付随する責任感のなさであるが、これは性行為そのものによるリスクを含めた話かもしれない。アルファブロガーの小飼弾は全童連会長が出した「中年童貞」という書籍に対して「女性にとってセックスがどれだけリスクのある行為であるかを理解できていない。それなら本田透のように諦めて二次元に潜り込んだほうがいい」というニュアンスの批判をされている。

病気、妊娠、そしてコミュニティへの影響。男性よりもはるかに巨額のリスクを抱えている。

ここまで解説してつまり中年童貞には大きく分けて二つのタイプが存在する。

①過剰な被害意識と責任感がありすぎて自分から動けない
②全く責任感がなさすぎて周りが離れていく

秋葉原が①、介護現場が②である。主に職場に影響を与えるのは②であるが、①も「個人が自立を目指す社会になっていかなければ多くが貧乏で孤独のまま一生を終える」という危機感を持つべきとというように中村氏は批判するだろう。(崩壊する介護現場のモラトリアム層より)

前半では中村氏が取材や実際の体験をもとに「中年童貞は危ない」という主訴を伝えるための肉付けが丁寧にされているが、後半においてある心境が芽生える。その内容は次回に任せたいと思う。

崩壊する介護現場 中村淳彦 適切な人材は流出し、不適切な人材が留まってしまう介護現場の不条理