いぬやしき 実写映画 感想・レビュー

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超話題になっている、というわけではありませんが、奥浩哉の原作「いぬやしき」が実写映画となりました。木梨憲武、佐藤健のダブル主演と、近年の邦画ではVFXとCGをふんだんに使用した映像美を売りにしている本作。

原作やアニメの物語もわかりやすく、ヒューマンドラマとしての質も高いので、実写映画との相性はよさそうですが結果はいかに・・・・・・・

このレビューには、ネタバレ要素を多分に含みます。ただネタバレが分かったとしても、十分に楽しめる類の作品です。

僕はアニメしか視聴していませんが、原作が10巻しかないため、比較的「そうそうここがほしかったのよね」と思っていたシーンはふんだんに入っていました。

一応アニメの適当なレビューも書いてますので、そちらも読んでいただけるとありがたい

いぬやしき 実写映画公開まであと少し、その前にアニメを一気にみたので軽い感想

ドラマパート 犬屋敷 壱郎

犬屋敷が一軒家をたてて、癌を宣告されてから機械になるまでの下りは早回しですが、順序はしっかりアニメ通りに見せています。

ただ、「奇跡の男」として病院に回るまでに、暴漢に襲われているサラリーマンを助けるとか、若者にいじめられているホームレスを守る、といった今まで自分と同じような中高年の弱者を不器用ながらに守るシーンがほしかった。誰かを守る、力がないからいままで守れなかった不甲斐ない人生から前進する、というメッセージは壮年主人公の犬屋敷だからできることだと思うんです。

事実、改造される前に、トンネルで暴漢に襲われているサラリーマンを見て見ぬふりしてしまったというシーンがありました。そういうお膳立てがあっただけに残念です。

アニメでもツッコミどころだった、会社の無断欠勤の回収もされていて、「家族を守るって言いながら誰も守れてないじゃん」という麻理のツッコミに全く言い返せていません。

獅子神にも共通することですが、超人的な力を手に入れたとしても、他者の人生を変えることってすごい難しいことです。病気を治す、暴力で解決する、お金を手に入れるという物理的な問題なら、その条件を見たいしてる人がいればできますけど。

だから原作ではいじめられている長男をどのように諭すか、解決へ導くかというところを繊細に、無難なかじ取りで見せています。実写では麻美に焦点があてられているので、僕が気に入っていた長男といじめに対してのアンサーがなかったのは少し残念ですね。

麻理との関係性が中心に描かれているわけですが、原作の麻美救出のビル火災直前に、安堂に向かって麻理が子供の時に「お父さんが老け顔だからいつか死んでしまいそうなのが怖い」と思ってずっとそばから離れなかった、という実にいとおしく、リアリティのあるエピソードがあって、犬屋敷がそれを大切にしているから、彼女の命が亡くなりそうになったときに涙をこぼしながら救おうとする姿に、胸を打ちます。

一方で、実写では最初から娘から冷たくされている描写が多くて、過去に父にべったりだったというエピソードも語られませんでした。

だから、最後に必死にボロボロになりながら娘を助ける姿っというのが、いまいち感情に響いてこないのです。

獅子神に「家族がいてよかったことでもあんのかよ?」と挑発されて、黙り込んでいましたからね。そこで、「不甲斐ない僕を一家の主として見続けてくれた!!」「58年間、縁の下で支えてくれたんだ!!」って一発言い返してほしかったな・・・・

あとアニメでみんなが号泣したクライマックスの救出シーンがカットされていたのも残念かな・・・

ドラマパート 獅子神 皓

獅子神の描写は薄くならないか、と危惧していましたが、むしろ獅子神が主役といえるほど彼に割かれた時間は多かったです。

原作では、彼が無差別殺人を犯しまくるという救いようのない悪役設定でした。一方で映画では、母を捨てた父を憎み、円満な家庭に対する憎悪を募らせて、そのまま調布の富裕層を殺害したという描写にしています。

「人でなくなったから、殺人とか人の法律に縛られない」という獅子神ですが、人間らしい憎悪という感情を持っていたから、殺害に及んだという矛盾を見せています。

「獅子神の喜怒哀楽は激しく描写するが、行動原理は説明しない」という原作のスタンスと相反するところで、ここを改悪ととるか微妙ですが、中盤以降、虐殺するシーンが増えるので、「まとめる」という解釈なら良い判断だったのではないかと。

母親とのエピソードに関しては、おおむね忠実に再現。一方で新しい家族になる渡辺しおんとの関係について。

渡辺しおんを演じたのは、二階堂ふみでアニメをしっかり予習したとおぼしき、話し方や抑揚のつけ方は諸星すみれを勉強しながら、しゃべっているという印象を受けました。あきらかにかつらっぽすぎる髪型でしたが……

しおんとの絡みの改変は二つ

①しおんの提案で殺した人の数だけ、力をつかって助けることはしない

②しおんと祖母は特殊部隊の突撃で絶命する

②は心のよりどころを失って、日本人全員に憎悪を向ける、という獅子神の行動原理に即していていい改編だったと思います。アニメを見て、「なんでしおんと祖母を助けられたのに、また虐殺に走るんだ・・・」って思ってましたし。

一方で①がないのは痛かったかなと。獅子神なりに反省して、奪った命の数だけ、命を助ける、でも覆水盆に返らずで彼の罪だけが大きく残って、結局居場所がなくなるっていう寓意性が上手かった見せ方だけに、特殊部隊突撃前にしおんと善行するってシーンはほしかったです。丁寧に獅子神側の描写を描き続けていただけに。

アクションについては、どれだけ書いたとしても百聞は一見にしかずです。

新宿上空での空中チェイス、宇宙でのバトル、最終局面の戦闘。どれをとっても見せ場がしっかりあって、面白かったと思います。この迫力は実写ならではで、アニメのCGも相当な力量と製作日数をかけて作られていますが、いぬやしきは本当にアニメにも実写にも愛されている作品ですね~

ラストに関しては、あの原作の強引な展開をなくしているので、当然の結末ということで、消化不良は残ります。両方生きていて、犬屋敷はうだつのあがらない定年間近のサラリーマンを続けますし、獅子神はどこか消えます。

わざわざエンドロールをカットして、安堂と獅子神がコンタクトします。原作だと安堂は獅子神にぼろくそに批判しますが、実写だと涙を流しながら受け入れるんですよね。アニメにも実写にも両方同役を演じている本郷奏多は、どういう心境か気になりますね(笑)

ボロクソに「お前は人殺しだ!!人間じゃない!!」って言いきって、獅子神が消える見せ方でもよかったと思いますが、映画では母もしおんもその祖母もいなくなって、天涯孤独状態になっているので、一人でも居場所を作って受けれいる人がいることで、獅子神が犯罪者として死んだという結末に、という狙いを感じます。

もしかしたら反響次第で、両方生きているので「奥浩哉全面監修、映画のみのオリジナルエピソード!!」ってなるかも?まぁ期待薄ですけど。

総括

アニメが80点ぐらいなら、実写映画は70点ぐらいでしょうか。2時間という枠に収めると思うとドラマは回収できているポイントは多かったです。単に原作の設定を借りて、迫力ある映像だけ見せればいい、という低い志ではなかったところに称賛。

木梨憲武も不遇なおっさんキャラをいろいろ演じてきているので、犬屋敷との相性はよさげな気がしました。

警察に伊勢谷友介を起用してオリジナル展開くるか!!それともこの伊勢谷が獅子神の「俺が警察をぶったおすところ、見届けくれよ」といわれる警官の生き残りになるの?って思いましたが何もありませんでした・・・

犬屋敷のクライマックス救出シーン、獅子神としおんの善行シーンと僕がアニメで感情に刺さった場面がカットされていたのは、残念でした。

見終わった直後のレビューなので、箇条書きのわかりにくい文章になりましたが、致命的な欠点とか、「もう実写化すんなよ」って言いたくなるシーンはほぼなく、期待していたとおりには楽しめました。

VFXシーンは近年の邦画の中では、アメコミ映画に近づいたというレベルで、役者をCGの中へ違和感なく溶け込ませています。いぬやしきでは顔が分離するシーンが多いのですが、その中でもちゃんと実際の役者の表情の動きをトレースして見せています。

結構、アニメの実写映画であからさまにCG演出~ってわかる作品が多い中、海外の最先端アメコミ作品に勝るとも劣らない映像美を邦画でできたというところは胸の張れるポイントですし、これだけで見に行きたくなる動機になります。

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