シン・ゴジラという仕事へ映画 いかにこの難題に立ち向かうかを丹念に描いたヒューマンドラマ

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あまりにもいまさら過ぎるシン・ゴジラ評。

僕はゴジラに関しては第一作目を見ただけにとどまっており、第一作では人類の罪によって生まれたゴジラをさらに大きな罪で滅するという暗雲立ち込めるラストだったことを否定するように兵器の証明とは異なる角度で解を見出すという建設性に心打たれた。

(被爆国だからこそ生まれた作品。海外にもゴジラのオタクはたくさんいるが、ゴジラが日本の象徴的怪獣である要因が一作目に詰め込まれている)

希望ばかりを提示するのではなく、綿密に取材された官邸描写から始まるように、「いかにしてゴジラに敗れ、そこから這い上がってゴジラを仕留めるか」という過程をこれほどまでに合理的に理屈をつけてきれいに風呂敷をたたんだというところに功績がある。ちなみにオタクはこういう合理性や辻褄があっていることをひどく称賛する傾向にあるのだ。

しかし、僕がシン・ゴジラで好きなシーンはゴジラを安全策で止めるために日夜寝る間も惜しんで研究や手配に没頭する矢口チームの日常である。

風呂に入る暇なんてないという矢口に「臭いますよ」と仲間が一言。次の日に矢口の前には新調したシャツが。
食事をのんびりととっている暇もないため、食べるのはほぼカップ麺。室内には大量のどん兵衛らしきカップ麺がゴミ袋につめこまれている。
休憩中に片桐はいりがお茶をくんでさりげなくかわす「がんばってください」→「ありがとう」

ちなみにこちらと対照的にあまりにも殺伐とした仕事現場を流し続けた映画が「クライマーズ・ハイ」である。

ごらんのとおり、シン・ゴジラは異星人との出会いやひょんなことで舞い降りる最新兵器というファンタジーを除外し、ゴジラという難題に立ち向かうために生活を犠牲にして打ち込む仕事映画になっている。一部の鑑賞者からは別の怪獣が現れてほしかったとか、もっと仰天するとんでも設定がほしかったというインパクトを求めるかもしれないが、この庵野秀明はじめスタッフが過酷なアニメ現場、映画現場がクランクインからアップするまでの苦労と挫折と仕事を終えた時の安堵の過程を追体験できるところがシン・ゴジラの隠れた魅力だと思う。

(第二次世界大戦末期の戦争映画であるが、称号欲しさに手柄だけを求めてやってくる腰抜けエリートを現場主義の男がたたき上げるという現場映画、仕事映画、全ブルーカラー必見の作品)

終わった後に歓声とか必要以上のハグはいらない。肩をなでおろしほっと安堵する姿それだけで彼らの仕事は完遂し、目的をやり遂げることができたという感動が得られる。

というよりも戦火に包まれた東京を映す以上にありえない難題に奔走し、人間関係がぎくしゃくするよりもまずはため息をつき、目の前の仕事に頭をなやませどうしようか検討を重ねる彼らの仕事としてのリアリティがこの映画の骨格を担っている。

本作の役者がそのほかのドラマ以上に鬼気迫るような演技に見える背景はCGで作られたゴジラをいかにして倒すかではなくこの難しい仕事をどのように達成するかという普遍的な生活に根差した課題を想定して演技していたからだと思う。シン・ゴジラは確かに合理性や辻褄を必要以上に突き詰めたようなオタク歓喜な映画であるが、文化祭やプロジェクトなどで何かを成し遂げたことのある人にとっては非常に身近な普遍的な現代劇でもある。

あと本作は主演の長谷川博己をはじめ、主演よりもわき役が多いベテラン俳優が軒を連ねている。たった数秒しか出ない端役にまでCMなどで見かける著名な俳優を使うなど遊び心もあるが、ゴジラ撃退にいたるまで無駄な人材は一人もいないという非常に前向きなメッセージとして受け止められる。
(ただわかりやすい主役が一人もいないということはつかみどころがないという点で大衆受けを外してしまっている感じは確かに否めないところだが)

シン・ゴジラは「ゴジラをいかに止めるか?」が主題の映画になっており、怪獣がドンパチを繰り広げる娯楽性に振り切った作品ではないが、スタッフがみずからの過酷な現場をそのままゴジラ討伐に置き換えたことでフィルム越しに伝う空気感が非常にリアリティあふれるヒューマンドラマに仕上がっていると思う。
どれだけこの作品を評価しても鑑賞するのは特撮好きや少年やおっさんがメインだと思うが……

全ての肉体労働者に幸あれ!!

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