ゲームクリエーター超絶濃厚ロングインタビュー集「ゲームの流儀」前半レビュー 一期一会にかけたクリエーターたち

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク

プレイヤーの誰もが「俺ってモテてるなあ」と思えるような存在。それがゲームなんじゃないかな(糸井重里)

ゲームクリエーターのインタビュー動画や記事を簡単に見ることができるようになった時代だが、もっとガッツリとしたインタビューが読みたいと思っていたころにこんなインタビュー集に出会った。

ゲームの流儀
岩谷 徹
太田出版
2012-06-21

値段は税抜きで2200円とかなりお高めの設定だが、インタビューした人物で3人ほど気になるクリエーターがいるなら買いだと言える。
あまりにも膨大で密度の濃いインタビュー集のため、今回はプレステ以前、以後の前後篇にざっくり分けてレビューしよう。

前半は主にゲームセンター全盛時代を支えたクリエーターたち。主にアクション,STG関連が多め。後半はPS以降の家庭用全盛の時代をつくったクリエーターたち。セガ、任天堂よりもPS度が濃い内容になっている。

今読むとムフフとできる内容がひしめいている

前半の目玉はパックマンの岩谷徹、ゼビウスの遠藤雅伸といったナムコアーケード黄金期を支えた二人の重要な開発秘話から始まって、FFの坂口博信、MOTHERの糸井重里とゲームファンならずとも知名度のある二人とインタビュー集としてはこれだけで通用するレジェンドたちが並ぶ。

そこからマニアックに深度が深まっていく。
メタルブラックの仙波隆綱、データイーストのクリエーター、トレジャー社長の前川正人、サルゲッチュの海道賢仁。

そして最近ではプロデューサー、ディレクターインタビューは豊富だが、デザイナーやドッター、アイデアマンのインタビューは希薄だったため、東亜プランからケイブにうつって漫画家として活躍中の井上淳哉と∀ガンダムのキャラデザも担当し、ファイナルファイト、スト2のカプコン黄金期を支えたあきまんこと安田朗の貴重なインタビューもたっぷりと収録されている。

それぞれのインタビューがいずれも2005年以前で人によっては2001年とPS2登場したてという古いインタビューだが、それだけに資料的な価値があり、「いずれ続編ができるといいですねぇ」という作品の続編が発売されていたりする。たとえば罪と罰やエスプガルーダ(エスプレイドの精神的続編)などなど。

前半で一番内容が濃く素晴らしかったのはトレジャー社長の前川正人氏のインタビュー。

コナミに嫌気がさしたわけではなく、3年で独立(独立した年齢はなんと26歳)してトレジャーを立ち上げ、いきなりセガの役員に面会を求めたとか、コナミで最初に携わったのが悪魔城シリーズでアクションやシリーズものの仕上げ方を学んだとか、マクドナルドを版権としたゲームのさまざまな制約での苦労話とか。
全てのエピソードが短く、起承転結があって面白い。
あと3Dが出始めのころにいまからみれば未発達なポリゴンに対して懐疑的で2Dを突き詰めていたが、レイディアントシルバーガンを通してアクションやシューティングは2Dのほうが確立しやすく3D演出の2Dゲームが一つの主流になるという発言は後のスト4を見ても分かる通り発言通りとなっている。
罪と罰製作時は任天堂からクオリティの高さとコアユーザー向きの姿勢を評価されもっと開発期間をのばしてほしいという全く逆の要請を受けていたとか。ただただ優しいのではなく開発してもつまらなければ世に出さない、完成しても発売時期をしっかり見定めてリリースするというコンテンツにかける熱意を評価する前川氏のインタビューを読んで、任天堂信者ならずとも「おぉさすが任天堂」と唸らされる。しかも現在でもゼノブレイドなどその姿勢を任天堂は貫いているのだから大したもの。
ちなみにインタビュータイミングが2001年ということでまだ斑鳩がリリースする前の話ということで知っている人ならニヤリとする。

ちなみに、トレジャー第一作のガンスターヒーローズはセガ復刻3Dで約800円でリリースされている。少し遊んだが、自由に遊べるように武器を選択制にできるモードがあったり、相変わらずM2の異常な3D描写への拘りが見られたりと一度遊んだ人でも充分に楽しめる内容、もちろん遊んだことのない人は一度触ってほしい。
公式サイト
(当時トレジャーに所属した背景スタッフも監修している。メガドライブファン投票でも常に上位に食い込む名作)

あとSTGが好きな筆者としては井上淳哉氏のケイブ話が興味深かった。
井上氏がかかわったエスプレイド、ぐわんげ、プロギアの嵐のうちぐわんげしか家庭用移植(XBOX360のライブアーケード)されておらず、エスプレイドはゲームセンターで遊んだが弾幕初心者でも親しみやすく見やすい弾幕やパワーショットにより弾幕ながら敵に攻撃を与えている爽快感が楽しめる名作だった。
時折ケイブを知っている人ならおなじみのIKD氏の話も飛び込んだりして、また後にエスプレイドの精神的続編のエスプガルーダや井上氏が再び加わり、ライト層を呼び込む2DSTGのデススマイルズが生まれるなど今読んでも刺激的なエピソードが並んでいる。

あと安田氏が「レッドデッドリボルバー」のコアスタッフとして加わっていたが、カプコンは製作を断念しその後ロックスターが拾って、後の「レッドデッドリデンプション」につながるという趣深いエピソードもなかなか。
スト3のチュンリーのドットに約二年かかっているのだから、そりゃガチキャラにしないと報われないようなぁとかつっこみながら読むことができる。

ゲームファンとしては浅い筆者でもこれだけ楽しめるのだから、ゲーム好きな人が読んでみて、どれだけ自分が知っているエピソードがあ
るか対決姿勢で読んでみるのもいいだろう。すべてのエピソードが理解できる、話に登場するゲームを触ったことがある人は間違いなくゲームマニアだ。(データイーストや海道氏のかかわっているゲームはさっぱり分からなかった)

家庭用の大手掌握から携帯の群雄割拠への予見

携帯用アプリゲームを製作しているゼビウスの生みの親で有名な遠藤雅伸に対して

同じゲームですが、家庭用とは別物です。まず、スパンが短いってこと。要領が少ないということは、逆にいえば大きなものを作らなくていいっていうことで。あと家庭用だと、気合をいれないとゲームが始められないじゃないですか。「今日はゲームやるぞ」みたいなね。(中略)
携帯だと、行き帰りの電車の中でちょっと遊んだりっていうのができるボリューム感と手軽さですよね。人間、活動してると、必ずヒマな時間はある。その時間にゲームができることの良さっていう(笑)、携帯用アプリをやる前は、「みんな暇つぶしに遊ぶだけかなあ」と思ってたんですけど、最近だと家に帰っても家庭用のゲームを立ち上げるのが面倒くさくて、「携帯でもいいや」って寝ながら携帯ゲームっていうパターンが増えてるわけで。(p53)

メタルブラックの仙波隆綱

やっぱり行き詰まる方向に走ってるなあ、と。ゲーム業界って、体は早熟、頭が未熟な巨人でね。「ゲームは長いほうがい」なんて安易に考える、前のゲームが残っていれば、客は次のゲームに移らないのに(笑)。(p125)

トレジャー社長の前川正人

「作りたいものを作るために利益を出す」っていう当たり前のことを守れば良いんじゃないですかね。どういうわけか、ゲームを作って一儲けしたい人々が多いんですよ。それでいろんなところがゲーム業界にどんどん参入してきて、結果、飽和状態になってしまった。(p179)

ゲームのボリュームが長大になって、ヒットをすれば即シリーズ化してファンを囲う。ゲームに貢ぐお金は「どれだけ安い金額で長く遊べるか」が主流になってきた。課金でたくさんのお金を落としてもらったらユーザーはそのゲームから「これだけお金かけたんだし」と離れづらくなる心理をつく。
そんな昨今のゲームへの不満が募っていたが、やはりゲームというメディアを開拓してきた方々はスマホゲーが台頭するはるか以前、しかも仙波氏と前川氏は2001年のインタビューでそんな予見をしていることにただただ驚かされた。 

同世代の知人と話しても「PS2までは遊んだんだけどなぁ」とゲームそのものへの関心がもはやなくなっている、もしくはPCやスマホで手軽なゲームが遊べるから次世代機不要というテンションになっているとよく感じる。かくいう筆者だってWIIUやPS4でとてつもない新作やシリーズ待望の新作が出る情報よりもはるかに3DSやVITAで名作がリメイクされることにテンションがあがるようになってしまった

国内で次世代機が売れないことをよく「ゲーム業界の未来は暗い」という表現をする人はいるが、むしろ逆で過去のゲームが手軽に遊べてさらに過去のゲームも90年代からクリアややりこむのに30~40時間ほど必要な長大なボリュームだからプレイヤーは新しい作品に移行できない。

「今年のE3は不作だな」という声はむしろ逆で豊作すぎるから問題なのかも。

個性豊かなクリエーター多数の為、皆が皆違う経験談を語っているが、共通点をあえて挙げるなら
「インカムを稼げ」
「シリーズを延命させろ」
というありきたりな利益優先のトップダウンではなく、自分たちが如何に他者との競合の中でオリジナリティを出すか、一回のプレイでプレイヤーを惹きつけるかという新鮮さを一番に優先しているという点。ログインボーナスといったゲームを習慣化させるのではなく、プレイヤーとゲームの一期一会に命をかけているというな姿勢が垣間見えるというところだった。 

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。